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Ⅱ.体に優しいお野菜編
8.僕、我慢ができない竜です!③
しおりを挟むヴァルがどんなに美味しそうでも……あの味を知らないときは、まさか食べられるなんて思ってないから、ただぺろぺろするだけだったけど。
もう、僕はその美味しさを知っちゃったわけで。
その美味しさを知った上で、目の前にあるのに、腹ぺこの状態で我慢するなんて……。
僕には、できない。
絶対ガツガツ食べちゃう。ていうか、実際食べてる。貪ってる。
今朝もたっぷりごちそうさまでした!
で、僕、毎回ものすごく気持ちよくしてもらって、お腹いっぱいにしてもらってる。
ヴァルからこうして僕が竜気をもらって何回かしたあと、「お前がイイ方が、断然効率がいい」なんて、真面目くさった顔でヴァルが言いだして。
ごちそうさまの直後にだよ?ありえなくない?ちょっと一服タイムにだよ?
ヴァル、元気だなって思ったよね。僕なんて毎回とろとろのへろへろなのに。
ヴァルの弁には、確かに僕も思い当たることがあって。
僕が気持ち良くなると、美味しいのがもっとたくさん流れ込んでくる。
じわじわが、どくどくになって、ぶわぶわ~からの、ぎゅんぎゅんどばぁ~てなる。
つまり、僕が、ぐちゃぐちゃのとろとろになって、きゅうきゅうと欲しがってるとこに、ヴァルからもらうと、さらにぎゅんぎゅんどばぁ~てなるのだ。
で、ヴァルもすっきり?さっぱり?するらしい。
僕が気持ち良くなると、ヴァルもきゅうきゅうと吸われるような感覚がするみたいで、すごく気持ちいいらしい。
それは、良かった。ホントに良かった。
気持ち悪いとか言われたら、僕、死活問題だった。心身ともに。
でも、だから、僕がイきそうになると、すぐにバレる。
バレて、ヴァルがイきそうになるまで、『待て』される。
で、我慢して、我慢して、我慢するときはすごく苦しいけど、最後には甘くて美味しいごちそうがいただける。
もう、あり得ないくらい、ものすごく美味しい。すごいの。ホントにすごいの。
でもこれってまるで、僕、ヴァルに調教?管理?されてるみたいだよね?
僕、いつの間にかすごくエッチな竜になっちゃってない?
でも、ご褒美がありえないくらい超絶に魅惑的なんだよねぇ。
「はぁ……とりあえず、朝飯食うか」
「うん!いただきます!」
今日の朝食は、昨夜のシチューをリメイクした、パングラタンみたいだ。
ふんわりとチーズの香ばしい香りが漂ってくる。
僕を叱りながらも手際よく完成させた朝食のお皿を受け取って、小さな丸いテーブルに並べた。
表面にいい感じの焦げ目がついていて、ちょっと固めの表面にさっくりとスプーンを入れる。
ゴロゴロと大きめ野菜は、昨日と同じ。ニンジンと、ジャガイモ、ブロッコリーで、あとは形も無くなった玉ねぎさんが、いい甘味を出している。
そのミルキーなシチューをお馴染みのかちこちパンにかけて、さらにその上からたっぷりチーズをかけてある。
香ばしく焼き目のついたチーズのビジュアルと香りに、僕は思わず涎を啜った。
くうっ……もう!何これ!
ヴァルって天才でしょ。最高の朝ご飯だよ。贅沢過ぎる!
ヴァルって、朝から結構ガッツリ系だよね。僕もこういうの嫌いじゃないよ。
むしろ、大好きだよ!
……………まぁ、そういう僕は、朝からヴァルの黒い竜気も、ガッツリいただいたわけですが。
「僕、これでも……一生懸命、我慢してるんだけどなぁ……」
ヴァルが美味しそうな匂いをさせているとき、ほぼ例外なくヴァルは疲れてる。
辛そうっていうか、きつそうっていうか。だから、僕もヴァルに負担かけたくなくて……余計に我慢しちゃう。
けれど結局は、我慢できない!ってなって。つまり、さらに迷惑かけちゃってるってこと。
僕、過信してた。
僕、全然我慢できない竜です!
でも、でもね。ヴァルの美味しい匂いが、最近さらにいい匂いになったから。だから、余計我慢できないんだよ。
これがまたさぁ……もう、ヤバいのなんのって。
どうしよう。ヴァルがどんどん美味しくなってる!
なんで、こんなに良い匂いになったんだろう。ヴァルは、あの甘ったるい匂いがする煙草をぱったりと吸わなくなったんだけど。だからかな?
なんていうか、より純度の高いヴァルの美味しそうないい匂いが、いつもぷんぷんしてくるっていうか。
「はぁ……だから、そうじゃねぇ。何も、ヤらねぇとは言ってねぇだろう。
切羽詰まって朦朧とした状態になる前に、ちゃんと言えって言ってんだよ」
「う、あ…………はい」
うーん。わかってる。良くない。良くないよね。
お互い抗えない何かに飲み込まれるように、なし崩し的に流されているみたいで。良くないよね。
僕もわかってる。わかってるんだけどさ。わかっていてもね。ちゃんと言えって言われてもね。
それができたら、こうなって無いわけだよ。
だって……なんて言うのさ。「お腹がすいたから、しよ?」とか?あ、「して?」かな?
いや、もう。どっちでもいいけど。
そんなの、どっちみち絶対に、無理だから。恥ずかし過ぎて、僕には言えない。
で、言った後、どうなるの?改まって、お互いコトに及ぶのって………。
うううーーーんっっ!いたたまれない!!
夜這いするのとどっちが恥ずかしいのか、て話だけど、ああいう時は僕は朦朧としてるから、恥ずかしさもあまりなくて。
……………うん。
今朝いっぱい、もらったから。これで、3日くらいはきっと大丈夫なはず。たぶん。
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