83 / 84
5.そして『英雄』になる編
5-9.これからも二人で① (※)
しおりを挟む
「ねえ、アレクはこれからどうしたいの?」
俺たちは、祝賀会が終わると、王宮に宿泊を進める国王の好意を、丁重に断った。
あんなところで寝れる気がしない。
俺は、初めてセフィリオの移動魔術というものを体感した。
どうやら眠っている間に、経験したことがあるらしいが覚えていないので体感したのははじめてだ。
普通は、自分以外の他者と共に転移することは出来ないとレイチェルさんは言っていたが。どうやらセフィリオがたまに俺の動きを封じるのに使う、魔力で直接他者に干渉する、という技術自体が、他の魔術師には出来ないらしい。
それを応用すれば、共に転移できる、と平然と言うセフィリオに唖然としていた。
転移自体は、乗り物に乗ったような、ふわっとした感じも、酔った感じも全くなく、レイチェルさんが以前表現していたように、ぱっと屋敷へと到着した。
本当にぱっとだ。移動魔術すごい。
感動する俺に、「言うほど大したことじゃあないよ」というセフィリオはそれでも少し自慢げで、特別に可愛かった。
早々に、正装を脱ぐと、屋根裏部屋へと引っ込んだ。体には、セフィリオが浄化魔術をかけてくれて、固められていた髪もすっきりだ。
二人でベッドに座りなりながら、セフィリオが俺に尋ねてきた。
これから、俺がどうしたいか。とりあえず、セフィリオを思いっきり余すとこなく、堪能したい。
けど、これからって、そうじゃないよな。いや、分かってるけどな。それは今じゃないと駄目なのだろうか。
はっきり言って、俺は一刻も早くセフィリオを確かめたい。
そう考えていると、セフィリオが言う。
「僕は、アレクのこと、もっと色々知りたい。
二人で、これからどうしていくのか、想像したい。
想像しながら、アレクに抱かれたい」
そんなこと、言われてしまうと。
俺はセフィリオを抱き寄せ、髪をすくい、キスをする。
くすぐったそうに、セフィリオが笑って、吐息がかかり俺もくすぐったくて、笑ってしまう。
ああ、今日も星空が綺麗だ。
藍色の夜空には、無数の金の粒がちらちらと瞬いて、降り注ぐように部屋を包んでいる。しんとした空気が部屋に漂い、俺とセフィリオの呼吸も、鼓動さえも聞こえてきそうだ。
一息吐いて、俺は考えていたことを、セフィリオに話す。
「俺は……とりあえず【スタンピード】が終息して、色々と落ち着いたら。
一度故郷に帰ってみようかと思ってる。
そして、国中を回ってこれまで、見過ごしてきた景色や、食べ物や、そこに住んでる人と、交流してみたい。
出来れば、セフィリオと一緒に」
俺は、実は故郷を離れてから、一度もあの地を踏んでいない。
区切りが着いたら、セフィリオと一緒なら、行ける気がしている。
これまで、俺は多くの場所を巡ってきて、それなりに過ごしていたが、北の大地に行ったときに思ったのだ。
一人で見た景色も、場所も、俺は簡単に忘れてしまう。
でも、そこにセフィリオがいれば、きっと忘れないと、あの景色を見つめて佇む彼を見て思った。
「うん。僕も、一緒に行きたい」
そう、セフィリオは静かに答えてくれる。
「俺は、セフィリオの研究は手伝えないけどな」
「ふふ。僕のこと、こんなにお世話してくれていて、僕をこんなに自由にさせて、まだそんなこと言うの?」
「あのくらい大したこと無い」
「甘やかし過ぎだよ」
「本当は、もっと世話したい。甘やかしたい」
「それじゃあ僕、自分では一歩も動かなくて良くなってしまうよ。それなのに、何でも出来てしまう」
そう、面白そうに目を細めて笑った。
「セフィリオ一人、抱えるくらいは丈夫なつもりだ」
俺もそう答えて、微笑んだ。
「アレクが、変わらずそこにいてくれるから、僕は安心して間違わずに自由でいることが出来るんだよ」
「俺は、セフィリオが受け入れてくれるから、ここに在ることができる」
その顔をまじまじと見つめていたセフィリオが、そっと俺の目元に手を添える。
「僕、アレクの瞳が大好きなんだ。
何だか懐かしくて、澄んでいて、力強くて…北の大地に行ったときに、あの森で…この翠と同じ色だと、そう思った」
俺の瞳を覗きこむセフィリオの、その瞳には、やはり煌めく星がきらきらと浮かび、深い夜空が優しく俺を包んでくれるようだった。
俺にやんわりと触れるセフィリオの手をとると、その手のひらに口づけを落とす。
「俺は…ずっと、お前の瞳に囚われてるよ。あの日から…ずっとだ。
お前に魅了されて、俺はここまでやってきた。
これからも、ずっと…一緒にいてくれるんだろ?」
俺は、セフィリオの頬に触れて。藍色の星空の中に映る、自分を確認するように見つめながら言った。
「アレクの、そういうところ、本当にずるい。そんな眼で言われたら…。
僕…アレクのこと、ずっと縛り付けてしまいたくなる」
「そんなの、ずっと縛り付けてもらって構わない。それが、俺の願いなのに」
あのかつては激しく心を乱された、首筋の白印に触れて。今はもう、そんなことはどうでもいいほどに、セフィリオは自分のものなのだと確信している自分に驚きながら、それでもそこに印をつけなくては気が済まなかった。
「んっ…あ、…アレク。今日は、たくさん…して。僕にたくさん触って……一番近くに、いて」
「セフィ…お前が、どこへ行っても、どうなっても、そのままでお前が愛おしくて仕方ないよ。
俺は、ずっとお前のものだよ」
そう、俺がいうとセフィリオは甘く艶やかに微笑んで、俺に深く口づけた。
俺たちは、祝賀会が終わると、王宮に宿泊を進める国王の好意を、丁重に断った。
あんなところで寝れる気がしない。
俺は、初めてセフィリオの移動魔術というものを体感した。
どうやら眠っている間に、経験したことがあるらしいが覚えていないので体感したのははじめてだ。
普通は、自分以外の他者と共に転移することは出来ないとレイチェルさんは言っていたが。どうやらセフィリオがたまに俺の動きを封じるのに使う、魔力で直接他者に干渉する、という技術自体が、他の魔術師には出来ないらしい。
それを応用すれば、共に転移できる、と平然と言うセフィリオに唖然としていた。
転移自体は、乗り物に乗ったような、ふわっとした感じも、酔った感じも全くなく、レイチェルさんが以前表現していたように、ぱっと屋敷へと到着した。
本当にぱっとだ。移動魔術すごい。
感動する俺に、「言うほど大したことじゃあないよ」というセフィリオはそれでも少し自慢げで、特別に可愛かった。
早々に、正装を脱ぐと、屋根裏部屋へと引っ込んだ。体には、セフィリオが浄化魔術をかけてくれて、固められていた髪もすっきりだ。
二人でベッドに座りなりながら、セフィリオが俺に尋ねてきた。
これから、俺がどうしたいか。とりあえず、セフィリオを思いっきり余すとこなく、堪能したい。
けど、これからって、そうじゃないよな。いや、分かってるけどな。それは今じゃないと駄目なのだろうか。
はっきり言って、俺は一刻も早くセフィリオを確かめたい。
そう考えていると、セフィリオが言う。
「僕は、アレクのこと、もっと色々知りたい。
二人で、これからどうしていくのか、想像したい。
想像しながら、アレクに抱かれたい」
そんなこと、言われてしまうと。
俺はセフィリオを抱き寄せ、髪をすくい、キスをする。
くすぐったそうに、セフィリオが笑って、吐息がかかり俺もくすぐったくて、笑ってしまう。
ああ、今日も星空が綺麗だ。
藍色の夜空には、無数の金の粒がちらちらと瞬いて、降り注ぐように部屋を包んでいる。しんとした空気が部屋に漂い、俺とセフィリオの呼吸も、鼓動さえも聞こえてきそうだ。
一息吐いて、俺は考えていたことを、セフィリオに話す。
「俺は……とりあえず【スタンピード】が終息して、色々と落ち着いたら。
一度故郷に帰ってみようかと思ってる。
そして、国中を回ってこれまで、見過ごしてきた景色や、食べ物や、そこに住んでる人と、交流してみたい。
出来れば、セフィリオと一緒に」
俺は、実は故郷を離れてから、一度もあの地を踏んでいない。
区切りが着いたら、セフィリオと一緒なら、行ける気がしている。
これまで、俺は多くの場所を巡ってきて、それなりに過ごしていたが、北の大地に行ったときに思ったのだ。
一人で見た景色も、場所も、俺は簡単に忘れてしまう。
でも、そこにセフィリオがいれば、きっと忘れないと、あの景色を見つめて佇む彼を見て思った。
「うん。僕も、一緒に行きたい」
そう、セフィリオは静かに答えてくれる。
「俺は、セフィリオの研究は手伝えないけどな」
「ふふ。僕のこと、こんなにお世話してくれていて、僕をこんなに自由にさせて、まだそんなこと言うの?」
「あのくらい大したこと無い」
「甘やかし過ぎだよ」
「本当は、もっと世話したい。甘やかしたい」
「それじゃあ僕、自分では一歩も動かなくて良くなってしまうよ。それなのに、何でも出来てしまう」
そう、面白そうに目を細めて笑った。
「セフィリオ一人、抱えるくらいは丈夫なつもりだ」
俺もそう答えて、微笑んだ。
「アレクが、変わらずそこにいてくれるから、僕は安心して間違わずに自由でいることが出来るんだよ」
「俺は、セフィリオが受け入れてくれるから、ここに在ることができる」
その顔をまじまじと見つめていたセフィリオが、そっと俺の目元に手を添える。
「僕、アレクの瞳が大好きなんだ。
何だか懐かしくて、澄んでいて、力強くて…北の大地に行ったときに、あの森で…この翠と同じ色だと、そう思った」
俺の瞳を覗きこむセフィリオの、その瞳には、やはり煌めく星がきらきらと浮かび、深い夜空が優しく俺を包んでくれるようだった。
俺にやんわりと触れるセフィリオの手をとると、その手のひらに口づけを落とす。
「俺は…ずっと、お前の瞳に囚われてるよ。あの日から…ずっとだ。
お前に魅了されて、俺はここまでやってきた。
これからも、ずっと…一緒にいてくれるんだろ?」
俺は、セフィリオの頬に触れて。藍色の星空の中に映る、自分を確認するように見つめながら言った。
「アレクの、そういうところ、本当にずるい。そんな眼で言われたら…。
僕…アレクのこと、ずっと縛り付けてしまいたくなる」
「そんなの、ずっと縛り付けてもらって構わない。それが、俺の願いなのに」
あのかつては激しく心を乱された、首筋の白印に触れて。今はもう、そんなことはどうでもいいほどに、セフィリオは自分のものなのだと確信している自分に驚きながら、それでもそこに印をつけなくては気が済まなかった。
「んっ…あ、…アレク。今日は、たくさん…して。僕にたくさん触って……一番近くに、いて」
「セフィ…お前が、どこへ行っても、どうなっても、そのままでお前が愛おしくて仕方ないよ。
俺は、ずっとお前のものだよ」
そう、俺がいうとセフィリオは甘く艶やかに微笑んで、俺に深く口づけた。
1
お気に入りに追加
409
あなたにおすすめの小説
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
異世界転移したら豊穣の神でした ~イケメン王子たちが僕の夫の座を奪い合っています~
奈織
BL
勉強も運動もまるでダメなポンコツの僕が階段で足を滑らせると、そこは異世界でした。
どうやら僕は数十年に一度降臨する豊穣の神様らしくて、僕が幸せだと恵みの雨が降るらしい。
しかも豊穣神は男でも妊娠できて、生まれた子が次代の王になるってマジですか…?
才色兼備な3人の王子様が僕の夫候補らしい。
あの手この手でアプローチされても、ポンコツの僕が誰かを選ぶなんて出来ないです…。
そんな呑気で天然な豊穣神(受け)と、色々な事情を抱えながら豊穣神の夫になりたい3人の王子様(攻め)の物語。
ハーレムものです。
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる