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3.魔素計設置編

3-6.合意であることが最も重要① ※

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「ビガール商会は、このあたりの裏家業の者たちと繋がっていてね。
 ホーンラビットの繁殖期になると、魔獣をけしかけて窃盗を行うことで、近隣の街は困っていたんだよ」

 首筋の傷を治療していると、俺が全く初めて聞く話をする。

「一度、お近づきになって、ちょっと釘を刺そうと思ってたら、あちらからご招待があったものだから」

 事も無げにいうセフィリオは、全く平然としている。

 ああ、こういう所が。

「お前のことだから、コカトリスの情報もあって、ああいう言い方をすれば、討伐依頼を振られるの分かってたんだろ。
 それを俺が受けることも」

 俺の怒りは全然静まりそうもない。

「いや、むしろ僕が誘われるために、アレクには討伐に行ってもらったんだ。
 コカトリスもいなくなって、一石二鳥でしょ」

 むしろ話せば話すだけ、燃料が投下されていくようだ。

 何を言ってるんだこいつは。

「その状況で誘われて、明らかにセフィリオをどうにかしようと分かってるのに、何でのこのこ着いていくんだよ」

 ベッドに腰を下ろしているセフィリオに、ミルクと蜂蜜たっぷりのシュミナの花のお茶を渡すと、ちびちびと舐めるようにすすった。

「先触れを冒険者ギルドに送っていたから、僕のことを調べていたみたいで。
 出自にまで何か情報を得ているのか探りたかったし」

 俺もシュミナのお茶を飲むが、鎮静作用があるお茶のはずだが、全く静まらない。

「僕ほど扱いに困る人間もそういないと思うけれど、一般的にはただのぽっと出の若い学者な伯爵だからね。
 研究に興味があるのか、アレクとの関係や、エドとの関りで何かあるのかとも考えたんだけど」

 お茶に再び口をつけ、「なんだか一番しようもない理由だったね」とそんなことをぬけぬけと言う。

「いや、だからどういう意味でもセフィが目的、て時点でやめとけよ」

 すかさずいう俺に、

「うん。気を付けるよ」

 あっさりと答える。


「それ意味ないやつだろ!
 言外にまたやるよ、ってやつだろ!
 大体あのおっさん、ねっとりとして圧し掛かりやがって、鳥肌立つわ!
 危機感とか!危機感とか!危機感とか!
 色々そういうのを持ってくれ!!」

「うん、危機感が足りないって言いたいのは分かった」

 そういって、お茶をごくり、と飲み下している。

 いや、全然分かってないだろ。



 いや、分かってるよ。
 セフィリオがそんなに危ない状況にはなることは、あまりないだろうことは。

 今回も、一般的には腕や手が縛られて、魔術が封じられていたけど、セフィリオの魔術を封じた状況ではなかったのだろうし。
 研究者なんてやってるインドア派だけど、Aランクの冒険者だし。

 実際に、今回も彼としては、特に大きな問題なく、目的を達成している。

 ぐるぐると考えながら、それでも、そういうことではないのだということが、どうしても伝えられず、歯がゆい。

 俺は大きなため息を吐き出した。自身の感情を、どうにかやり込める。

「ギルドで状況を察した時の俺の気持ちわかるか?」

 静かに言う。できるだけ、気持をこめて。
 セフィリオが、視線をあげて俺を見る。

「心配なくても心配する」

 その夜空のような瞳を見つめて、続ける。
 瞳がきらきらと輝いている。

「セフィが自分を粗末にしてるのがムカつく」

 俺の言葉を静かに聞いている。

「他の奴がセフィに触るのも、傷をつけるのも許せない」

 これは、明らかな独占欲だが。
 俺の言葉を聞くたびに、セフィリオの瞳がより煌めいて、口が堪えられないように弧をえがく。

「…その怒られながらニヤニヤ嬉しそうなのがっ!」

「ああ、ごめんなさい。我慢できなくて」

 そういって、嬉しそうに緩んだ顔を撫でる。

 俺は耐えきれずに叫んだ。

「ああもう!可愛いな!!」

 怒っているはずなのに、どうにも抗えない。
 どうにも平行線だ。惚れた弱味というのか。

「はあ。もう。なぁ、セフィリオ」

 この問答が無意味に思えて、けれど、やはりとても重要なことで。
 でもそれよりも、自分の中にじりじりと燻る熱が今にも燃え上がりそうで。

 俺はお茶を置くと、セフィリオに近づいた。

「セフィを確かめさせてくれ」

 きっと俺の声は欲に濡れている。


 ここにいるのだと確かめさせて欲しい。


 そのまま抱き込むように、セフィリオをベッドへと縫い付けた。





「…ん、…ふう……あ、あ」

 セフィリオの声が響いて、目の前の裸体が、赤く色づく。

 触れるだけの口づけも、深く貪るような口づけも。髪をすく指からも、頬を、首筋を、鎖骨を撫でる手からも、腰を抱くその腕からも、彼の甘い熱が伝わってきて、俺を堪らなく愛しくさせる。

 いつもは、あっという間に追い詰めて、セフィリオはすぐに恍惚とした瞳になってしまうのだけど、今日は俺のことをはっきりと見つめて欲しくて、決定的な快感にまでは至らないように、じわりじわりとその華奢な身体に熱を溜めていくように、愛撫する。

 昨日自分でつけた歯形を舐めてなぞり、痛々しいのに、それに心が満たされる。


「…も…へん、へんだよ…んん…や、…アレク…」

「ん?気持ちよくない?」

「…ちいい…きもちいい、…けど、あ、あ…」

 俺は、もうとっくに赤く尖っている胸の突起の周りをくるりとなぞる様に撫でる。

 刺激に体が跳ねて、セフィリオの腰が浮く。


「あっ…ああ、…それ、きもちいい」

 突起をくにくにと捻るように抓まむと、その先を爪で擦る。

 反対側を口に含み、ころころと飴玉を転がすように刺激し、かりっと甘く歯を立てた。

 俺の服にセフィリオの中心がこすれて、その刺激を求めるように腰が揺れている。


 俺は、ひたすらに快感に溺れて、それでも俺を見つめる彼が見たくて、触れ合いが始まって、随分と時間がたつけれど、一度も中心にも後ろの蕾にも触れないままだ。

 それでも、何度も快感の波が、セフィリオを襲っているのが分かるが、弾ける手前でゆるりとかわすようになだめて、その熱をどんどん蓄積していく。

 熱が解放されなくて、とても辛そうに涙を流すセフィリオが、可愛いくて仕方がない。

「…アレク…アレク…あ、なんか…」


 胸の突起を舐めて弾くと、その度にぴくり、と身体が震えた。

 俺は、服を脱いでしまうと、また昨日のような衝動が暴れるのではと恐ろしくて、肢体を紅潮させ悶えるセフィリオを、じっと観察して、熱を逃がす。
 それでも、俺は腹に溜まった熱いものを誤魔化すことができず、張りつめて、苦しい。

 そうしていると、セフィリオが喘ぐように息を吐きながら、震える唇を噛み締めていることに気づく。

 さ迷うように、俺に手を伸ばし、縋るようにしがみついてくると、

「……くに…て」

 声が震えて聞き取れない。


「なんだ?」

「もっと……ちかくに、きて。アレク…」

そういうと、彼の瞳からはぽろぽろと涙が溢れて、


「遠くにいるみたい」

「もっと近くにきて」

「いっしょにいて」

 と繰り返した。


 俺が体をおこし、セフィリオを見つめると、

「…ひとり、みたい……いや。いやっ」

 と、決壊したように涙が次から次へと頬を伝い、こぼれ落ちる。

 セフィリオは体を掻き抱くように自身の腕をつかむ。


 ああ、俺は相変わらず、自分勝手でひどい奴だ。


 俺は、セフィリオの体を抱き起し、膝の上に引き上げて強く腕の中に閉じ込めた。
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