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3.魔素計設置編

3-2.セフィリオの探求心② ※

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「明日には着くな」

 俺は、風呂上がりで濡れたままのセフィリオの髪をふきながら言う。

 乾いた銀髪をゆるくまとめて左側で結う。


 温めたミルクを手渡して、俺はお茶を飲む。


 俺自身は、こだわりも無かったため、これまでは安宿に泊まっていたが、セフィリオの身分や身の上を考慮すると、そういう訳にもいかず、シュバルツ夫妻の家令殿がそれなりの宿を手配してくれている。小さなキッチンまでついていて、なんて便利なんだと感動する。


「移動魔術が使えたらいいんだけど、あれは少なくとも行ったことがないと難しいから」

 セフィリオは魔術で移動出来るらしい。

 レイチェルさんに聞けば、使える人が数人の超上級魔術らしく、レイチェルさんは王都内とよく知った数ヶ所程度ならば移動出来るらしい。


 正直、魔術に詳しくない俺には、すごい、ということしか分からない。

 あまり凄さが理解出来ないことを申し訳なく思うのだが、魔術の感覚は魔術師にしか分からないもので、「アレクはそのままがいいから」とセフィリオ自身から言われてしまうと、いいのか、とも思ったりする。



「アレク、お願いがあるんだけど」

 ミルクを飲み終わったセフィリオが、俺に近づいてくる。 

「何だ?」

 俺の手をとると、ベッドに引き上げ、枕を背に俺を押し倒した。


 訳がわからず、成されるがままにされていると、

 「今日は僕もアレクに触れたい」

 そういって、身を寄せてきて唇が重なった。

 ふわりと湯気が香って、さらりとした銀髪が俺の頬を擽る。

 いつもより熱い舌が唇を舐めて、それを迎え入れると、俺のと擦れあって快感が高まる。
 セフィリオが俺の首筋にふれ、柔らかな感触で肩から腕を擦り――


「おい」

 俺は抗議の声をあげた。


 両腕が後ろ手に全く動かせない。
 魔術で拘束されているらしい。


「大丈夫だよ。気持ちいいことしかしないから」

「いや、だからって。これは」


 流石に拘束されるとは思わず、俺は思いの外、焦る。
 思い起こせば、俺はこれまで動きを封じられたことなどないのだ。

 初体験、と言えばどこか甘酸っぱい感じが漂うが、これまでにない体験に不安が掻き立てられる。


「アレクはいつも僕の手を押さえつけてる」

「それは」

「アレクに触れたい」

「でも」

「僕もアレクを気持ちよくしたい」

「だからって」

「一緒に気持ちよくなりたい」

「……」

「ダメなの?」


 ぐいぐいくるな。

 いつかを彷彿とさせる展開に、迫ったり、迫られたり……自分の良いようにしてきたような、そんな罪悪感が刺激されなくもない。


 いや、しかし、

「これだと俺が触れられない」

「僕が満足したらはずすから」


 そういって、俺の頬に触れ滑るように耳介をさする。

 ピアスを確かめるように撫でながら、「ああ、もう赤く無いね」と、愛しそうに囁かれて。

 熱っぽく見つめられたら。



 俺は何かを諦めた。







「ねえ、どこが気持ちいい?」

 服をあっという間に脱がされて、容赦なく、身体のあちこちを撫でていく。

 腕は拘束されたままなのだが袖は抜くことが出来て、どういう仕組みか考えるが、首筋を這う舌のぞくり、とした刺激に、それは一瞬でかき消される。


 どこがなんて、どこもかしこも気持ちいい。


 ただ、なぜだが常に、崖のふちに立っているような危機感が俺を襲う。


 セフィリオの手は少しひんやりとしていて、指が軽い感触で胸や腹をなぞっていくと、ぞわぞわとした感覚が腹の奥に溜まるようで、自分の衝動が制御できない不安に駆られる。

 鎖骨の下に口づけられ、そこにちくり、と痛みが走る。

 見ると、実に満足そうに目元を染めながら、ついた赤い印をみて、微笑むセフィリオがいて。


 視覚からの刺激が攻撃的だ。

 セフィリオは気付いていないだろうが、こういった行為の最中の彼は、潤んだ瞳や甘く湿った吐息、そのしなやかな動きがとてつもなく妖艶に映る。


 いつもなら、ここで押し倒すところなのだが、

「まだ、ダメだよ」

 と、胸元を手で制されると、なにかの術にかかったように起き上がることが出来ない。


「アレクの威圧と同じような術だよ。魔力で直接相手に干渉する」


 そういいながら、「そんなことより集中して」と俺の中心に触れてくる。

 擦る様に細い指が触れると、ぴくりと反応して、セフィリオはじっと俺の様子を伺いながら、撫でたり、引っ掻いたり、押さえたりと、まるで探る様に刺激する。

 自分のこぼした露をまとったセフィリオの指が、先端をぐりっと抑えると、俺の身体が跳ねた。

 それを実に愉し気に見つめる彼の、蒸気した頬に触れたいのだけど、腕は全く動かすことが出来ず、もどかしさが募る。

 両手で包むように握りこまれ、ぬるぬると上下に扱かれると、思わす声が漏れそうになり、それを噛みしめて耐える。

 いつの間にか目をつぶってしまった意識の中で、温かいものに包まれて、弱い所をぬるり、と刺激された衝撃に――


 目を開くと、セフィリオが身をかがめ、俺のものを咥えているのが見えて。


「…っ…ちょっ…っ!」

 一気に頭に血が上り、快感が押し寄せる。
 熱が膨れ上がり、耐え難い欲望に胸を締め付けられて、余裕などなく、

「…っ、おいっ…腕、はずせっ…」

 口調が荒くなる。

 が、セフィリオはちらり、とこちらに視線を向けただけで、より深く飲み込んでいく。先端が、口内に突き当たり圧迫されると、突き動かしたい衝動に襲われ、それをぐっとこらえる。

 口内に包まれたままで、舌だけがぬるぬると這い、下から上へと擦り、弱い所を強めに弾かれる。鈴口からまた零れたものを舌がすくい取っていく。


 何が楽しいのか、水音を響かせながら、咥えられたまま弄られる。

 その音が耳から脳を溶かすようで。

 長いこと、そうやって蓄積した欲望が、今にも解き放たられたいと疼くのを必死に耐えていると、ふと、解放される。


 妙な安堵を感じたのも束の間、唇が食むように移動し、鈴口を舌でちろちろと刺激されて。
 これまでと違う感覚に、腰が重くなり、しびれた様に眼前が霞む。


「…もっ…いい、から…はなせっ」

 ぐっと快感が高まって波のように押し寄せてくる。達きそうなのを耐えながら、なんとか呻くが、こちらの声が聞こえていない訳はないのに、セフィリオは全く反応しない。

 その両手は根元を握りこんで強めに扱き、柔らかな唇で先端が覆われて、そこを強く吸われた。


 その快感に熱が溢れて、俺は堪らずそのまま弾けた。



 ああ、もう。どう言ったらいいのか。

 荒くなる息が、整わない。


 一気に押し寄せる脱力感に、それでもセフィリオの方をみると。

 ごく、とその喉がなり、濡れた唇をぺろりと舐めた。

 俺を見つめる視線は、甘美な欲をはらんでゆらゆらと光り、満足そうに艶やかな笑みをたたえていて。


 その表情が、あまりにも扇情的で。


 俺は自分の何かが壊れた気がした。
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