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《第21章》 ― 誰よりも大事だから…誰よりも愛しているから…誰よりも欲しいから…だから抱けなかった ―

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 くぅっ、と亮は呻いた。
しらずしらずのうちに熱の篭った吐息が零れてしまう。自分を全て飲み込もうと厭らしくうねる桂の肉壁の刺激に、亮はぎりぎりまで追い詰められそうになっていく。

 自分を誘う桂の痴態に亮の理性は弾け飛んでいた。それまでの「久しぶりだから…」という桂を気遣う気持ちも消え去って、しゃにむに桂の身体を押し開いていく。

 太股を乱暴に掴んで大きく割り広げると、熱く怒張した楔を蕩けてヒク付いている蕾へ突き刺していた。

「…んっ…ぁぁ…っ…」

 亮の塊を感じて桂が歓びの嬌声を上げて仰け反る。亮の胸の下で桂の身体が撓って、より深く亮を飲み込もうとするかのように貪欲に腰が揺れる。 

 せわしない呼吸のせいで、桂の胸の粒が厭らしく揺れるのを見て、危うく亮はイきそうになってしまう。ぐっと息を詰めて射精感をやり過ごすと、亮は優しく桂の乳首を擦ってやる。

「桂…大丈夫か…?」

 桂の眼に涙が滲んでいるのが辛い…。優しくその涙を人差し指で掬い取って口に含む。

 肌をあわせて、一つに融けあっているのに…それなのに…まだ、お前は何が辛いんだろう…?

 桂の心の計り知れない深い闇を感じて亮は切ないまま、腰を緩やかに使う。 

 ん…と桂は亮の問いかけに桂が甘えるように返事をすると、強請るかのようにすらりと伸びた足を亮の腰に巻きつける。
そして、身体を必死に起こして亮に抱きつくと、欲望に濡れた瞳で亮を見つめながら亮の胸板に唇を這わせていく。

 桂の濡れた熱い舌先が自分の胸で蠢くのを感じて、亮は桂をシーツに乱暴に押し付けるときつく腰の動きを早めていった。

「…山本ぉ…やっ…まも…とっ…」

 昂ぶる亮の楔に桂が淫らな嬌声を上げる。それに答えるように亮は桂の腰をきつく掴むとぐっぐっと自分の腰に深く押し付けた。 

 熱く蕩けた桂の襞が絡みついて自分のペニスを呑み込んでいきそうな錯覚を覚える。頭の中が真っ白に弾け飛んでしまいそうな麻薬のような恍惚とした快感が体中を荒れ狂うように走り抜けていって、たまらず亮は抜挿するスピードを上げた。

 自分の腹を濡らすヌルヌルした感触に亮はフッと視線を落とす。見ると、それまで手放していた桂のペニスから白濁の精が溢れている。亮は腰の動きを続けたまま、誘われるようにそれに指を絡ませて、強く扱き上げた。

「はぁっ…やぁ…っ…んっ…」

 後ろからの快感だけでなく、直接ペニスに与えられる刺激に桂の唇から激しい喘ぎが零れた。
桂が貪欲に快感を受け入れようと背を撓らせる…自分の与える愛撫に甘い喘ぎを上げる…それら全てが亮を激しく煽って、…そして不思議な感覚に陥らせていった。

…なんで…こんなに愛しいんだろう…

 今までに感じた事がないような快感が身体を支配していく。それなのに…胸の中は快感とは全然違う温かいものが満ちていく…。

 この温かさが…桂を愛しいと思う気持ちなのは、分かりきっていて…。

 この愛しさが自分の全てを…身体も思考も感情も…何もかもを支配していく…。 

…桂…。愛している…

 今告げる事を許していない、その言葉が溢れそうになる気持ちと一緒に何度も口を突いて出そうになる。

「…山本…っ…もっと…」

 桂が熱っぽい瞳で亮を欲する。亮の腰の動きに身体を淫らに痙攣させながら、上体を僅かに起こして亮に向かって手を伸べる。桂は必死に亮の頬に指先を触れさせると、柔らかく愛撫するように撫でていた。

 亮をまっすぐに見つめて、一心に彼の頬を撫でる桂。
その瞳は自分への欲望も愛も溢れさせているようで、その想いをありったけ、自分を撫でる指に込めているような気がして、亮は自分の頬に触れる桂の手を取ると思わずキスを落としていた。

 桂の顔が亮のキスに薔薇色に染まる。そんな様に、亮はたまらず桂の指先全てに口付けると、一本一本口に含んでいった。熱い指先に舌を絡めながら唇で吸い上げていく。

 桂の快楽を煽るようにわざと音を立てて指をしゃぶり、自分のペニスを強く桂に打ち込んでいく。その度に甘く潤んで膨らんだ襞が亮を淫猥に締め上げていた。

「…ぁぁ…んっ…」

 桂が限界を訴えて、甲高い嬌声を上げた。同時に自分も桂の甘苦しい締め付けに果てそうになる。それをどうにかやり過ごして、亮は桂の指を口から解放すると、その指に今度は自分の指を絡め合わせた。
繋がりを確認するかのようにギュッと握り締める。

「…桂…」

 快楽で恍惚とした表情の桂の頬を、空いている手で優しく撫でながら桂を呼ぶ。桂は亮の腰の動きに喘ぎを漏らすばかり。

「…桂…」

 汗で濡れた前髪を柔らかく掻き揚げてやりながら、もう一度桂の名前を呼んだ。

 卑怯…なのはわかっている…。
でも亮はどうしても聞きたかった…。

…ずっと、桂が隠してきた…自分への気持ち…。

…今…桂の気持ちを知れば…それは自分を強くしてくれるような気がして…。

…全ての不安も…恐れも…怯えも…消えてなくなる気がして…。

…お前の言葉が…きっと俺を…幸せにしてくれる…。

そんな気がして…。

「桂…俺の事、好きだろ…?俺に惚れているだろ…?」
「…ぇ…?」

 亮の言葉に、それまで快感を追っていた桂の表情が驚いたように強張った。欲情を顕にした瞳を翳らせて、桂が一瞬、躊躇うように視線を揺らす。

 寝室を覆っていた濃密な空気が一瞬で霧散すると、冷え冷えとした深い沈黙が二人の間を包む。

「ぁ…俺……」

 揺れる気持ちそのままに、桂の唇から僅かに言葉が零れて、そして閉じられる。

…どうして、こんなに頑固なんだ…。今更ながら亮は口を貝のように閉ざして、何も言おうとしない桂に舌打ちをした。
 瞳を眇めて桂を見つめると、両足を深く抱え上げて、さらにきつく腰を押し込んだ。

「…ひっ!」

 亮の乱暴な挿入に桂の喉から空気が漏れるような悲鳴が上がった。構わず亮はがくがくと乱暴に桂の身体を揺さぶる。
…卑怯なのはわかっている…身体に言うことを聞かせようなんて…。

 ずるい自分のやり方を頭の片隅で嘲笑いながら、亮は乱暴に楔を抜差しした。

「…くっ…ぁぁぁ…んっ…やっ…」

 桂が恍惚とした表情で嬌声を上げる。快感に逃げ込もうとする桂を、亮は許したりはしなかった。熱い吐息をひっきりなしに零す桂の唇を乱暴に擦ると、そのままきつく顎を掴んで自分の方へ向ける。

「答えろよ!」

 語調がきつくなるのも構わず亮は桂に答えを強請った。
今…桂の言葉を聞かないと…全てを失うような気すらしていたのかもしれない…。

 真剣な亮の言葉に呑まれたかのように桂がひたと亮を見つめた。次の瞬間、頬をそれまでの快感で上気した色とはまったく別の紅い色に染め上げると視線を亮から逸らそうとする。

 亮は逃がさまいとして、桂の顎を強く掴んだまま視線を自分の方へ戻させる。

「…答えろよ…桂…。聞かせて…。桂はいつも俺を見ていただろ…」

 桂の迷いはわかっていた。桂の身体にも心にも染み付いてしまった、恋人ごっこの契約と健志の存在。
それでも亮は今、桂に言って欲しかった。

 自分への気持ちを…。

 お前はいつだって俺を見つめていた…。

 まだ、付き合い始める前…J’sで俺に気づかれないように密やかに俺に視線を送っていたお前…。

 デートする度、わざと距離を置きながら、それなのに必死で縋るように俺を見つめていたお前…。

 俺の胸の下で淫らに身体をくねらせながら、欲望を顕にした瞳で俺を見つめていたお前…。

 …いつだって…お前は俺を見つめて…俺を欲しがって…俺に惚れていたはず…。

 表情の変わった桂を見つめながら亮は息を詰めて、その瞬間を待った。

 自分の望む言葉が桂の唇から紡ぎ出されるのを…。
 
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