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《第1章》 ―お遊び…それは分かってる…でも俺は「ごっこ」をしたかったのか?―

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 恋人の言葉に亮は眉をひそめながら言った。

「随分突然なんだな?」

 健志は亮を宥めるような艶っぽい笑みを浮かべると、ああと頷いた。

 週末のデート。
今日は健志の希望で都心のシティホテルに部屋を取っていた。亮のそつのない準備で、部屋は東京湾の夜景が見晴らせるオーシャン・ビュー。二人のお気に入りの場所だった。

「仕方がないんだ。予定していた奴が病気で入院してね。代わりに俺が行くことになった」

 まぁ後は俺しかあの仕事できないからね…。自信タップリに付け加える健志を亮は憮然として見つめていた。

「いいけどさ。じゃ、10ヶ月の間…俺どうすんだよ?俺…独りは無理だぜ。絶対側に誰かいないと…」

 口を尖らせて拗ねたように言う亮を、健志は優しい瞳で見つめると答える。

「亮は寂しがりやだからね。確かに…独りは無理だね…。でも、俺は相手ができないからなぁ…」

 言って情事の後の火照った体を亮の胸に押し付ける。亮の胸板をやんわりとなぞりながら、思いついたように言った。

「じゃぁさ、亮…。俺がいない間、誰かと遊んだら?」

 健志の言葉に亮が不機嫌そうに顔を顰めた。乱暴にベッドから起き上がると煙草に火をつける。

「俺さ…お前と違ってフリーセックスは無理だ…。一晩だけの付き合いってのは嫌いなんだ」

 亮の言葉に健志は苦笑いを浮かべると、知っているよ。と答えた。 

 亮は変なところで甘えたがりやだった。不特定多数とのお遊びよりも、たった一人との関係を好む。パッと見はキザなプレイボーイその物なのに、その変な一途さが健志にとっては心配の種だったのだが…。

「それじゃ、俺がいない間だけ、誰かと恋愛ごっこしろよ。それだったら良いだろ?誰か一人に決めてさ」
「どう言う事だ…?」

 健志の言葉に亮は煙草を吸いながら聞き返す。
健志の言っている事が分からない。

 亮の困惑したような顔に手を伸ばして優しく撫でると健志が続けた。 
「だからさ、俺は仕事が大事だから絶対ニューヨークに行くだろ。その間、お前は一人ぼっち。誰か俺の代わりの奴を見つけて10ヶ月だけ遊べよ。まぁ恋人ごっこっていったところかな」

「恋人ごっこねぇ…」

「そう。お前だったら相手は選り取りみどりだろ。俺…許すからさ、亮のお遊び。お互いに10ヶ月は好きに遊ぼうぜ」

 意外に良いアイディアかもしれない…。

 亮は健志の提案に乗り気になっていた。

 なんと言っても健志のお許しがあるのだから…。他の奴と付き合うのも楽しいかもしれないな…。

「グッド・アイディアじゃん。なんか面白そう」

 亮の乗り気な様子に健志が、だろ?とニッコリ笑う。亮の手から吸いかけの煙草を取り上げると、健志はゆっくりと唇を寄せていく。

 唇を触れさせながら
「でも…遊びだからね。絶対、身代わりの奴に本気になったりするなよ。恋人は俺だけだからね…」

 やんわりと釘を刺す恋人に亮は、当たり前だ、と魅力タップリに微笑むとキスを落としていた。
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