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欲望
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夕方のニュースで、同性婚や性的少数者のトピックが取り上げられた時、俺はさりげなく席を外すか、さりげなくチャンネルを回す。すべて、破壊したくなる。彼ら固有の悩み、悩み故に取り組み、マスメディアにもとりあげられ、代表者として発言する。二人並んでインタビューを受けている映像など、特に破壊してやりたくなる。レインボーパレードの映像が流れると、胸の奥がムカつき、吐気がする。婚約者が「こういうものに理解があったほうが」というような態度をとるのも、原因の一つだった。俺が女装でもして私の気持ちがおわかりになるの?などと言ったら彼女は涙を流して、喜ぶんじゃないだろうか。世の中の奴らって好きだろ、そういうのがさ。
だから、パフォーマーの連中も嫌いだ。生き残る術としてのパフォーム、わかるよ。でもイライラするのさ。
国会や政治の世界で、倫理感、正義感の欠片もない、性的少数者に向けてのヘイトが報道されると、よく笑えて安心するので、俺はチャンネルを変えない。たまに新聞や政治雑誌もわざわざヘイトを見つけて、読む。雑誌を取り返さず、隅々まで彼らの様子を観察する。あなた達は、俺によく似ているから。ドキドキしますよ。
国会議員に立候補してセクシャルマイノリティに対するヘイトをまき散らし、それによって票を獲得する俺。理想の俺なのかもしれなかった。
ところで、蜂谷には、俺の他にゲイの友人どころか、友人がほとんどいないようだった。一人の時は何をしているか聞けば、筋トレか散歩かペットの世話だという。ペットの世話に意外性を感じたが、飼育している生物を聞いて納得した。哺乳類では無く、植物や昆虫の類で、寿命も短いものばかりだ。
「面倒じゃないか、世話。」
「それ、善太郎さんが私に言うんですね。ちょっとおもしろいな。……まあ、いいです。私は人間というものに飽き飽きしてるんです。人間以外の生き物は、余程正常だ。欲望に忠実で、そのために全身を使って喘いで、はしゃいで、死んでいく。美しいものです。哺乳類は少し人間に近くなりすぎるし何より寿命が長すぎる。私なんていつ死ぬかわからないのだから。」
「ああ、そう。人間は面倒だけど、そういうのはいいわけね。じゃあ、人、セフレの一人や二人位作ったら。」
ラブホテルの深いソファに腰掛けながら、ベッドの上で死んだようになっている蜂谷に言った。
「善太郎さんが、作ってほしいなら、作りますけどね……」
彼は突っ伏したままにしていた顔を、ゆっくりと俺の方に向けた。紅潮していた皮膚は大分落ち着き、身体のぬめりも渇きつつあったが、目の奥にまだ縋りつくようなねとねとしたものが見え隠れしていた。
「でも僕、苦手なんです。基本人付き合いが。善太郎さんなら、わかるでしょう。私のこの感じ。作ったような笑顔も。何度か会ううちにわかる。それで、善太郎さんは、よく私に対してイラついて、正直に、罵倒、殴ってくれるのですからね。素敵だ。たまらん。そう、いつも無意識に僕は人を怒らせてしまう。それが平気な人ならいいんです。だから、貴方は良い人だ。私は、後から解釈して己の鈍さ、悪さを呪います、死にたくさえなります。だから最初から期待しない、つるまない、それが一番傷つかなくていい。もう全部疲れたし、私は嫌でも老いていきます。もう必死になるのも、嫌なんだよ。」
「そう言う意味ならセフレは、」
「まあ最後まで聴いてください。いたこともあります。でも、駄目なんです。今はとてもそんな気にも、一から双方的に人間と、何かする気力もないんです。いちいちメッセージを送り、会って、それでなんだっていうんです。俺の何がわかるってんだよ。くそ……善太郎さんがこの世から消えたら、また考えます。」
蜂谷は大きな身体を起き上がらせ、上半身を起こし、膝を立てた。昔の絵画、ミケランジェロの描いた男のような姿勢に、身体が見合っている。
「この世から消えたらって、ははは、重いぞ。」
蜂谷は口元に笑みを浮かべながら、俺を流し見て、どこか哀し気に目を伏せた。
それは動物園の檻の中の動物の視線を思わせた。
「人との縁が切れるって、そういうことですよ。善太郎さん。……、……仮初の死だ。私だけが永遠そちらを覚えていても彼方ではこちらのことなど、ひとかけらも覚えていないんですからね。だから、死んだって考えないと、気が狂いそうになりませんか。ダムナティオ・メモリアエ。記憶抹消刑を、ご存じですか。善太郎さんならご存じでしょうね。その人物がその時代、その空間に存在した記録をすべて、消し去る古代の刑罰のことです。現代において、この刑罰は個人間でいとも簡単に執行され、私には、耐えられない。私はそうなんだ、弱いんだよ。善太郎さん。ああ、でも善太郎さんにだったら、そうされても、嬉しいかもしれません。」
蜂谷は今度は笑みを浮かべ立ち上がり、蛇のようにベッドから降りると、俺の目の前に跪き、開いた脚と脚の間にその首を垂れ、一枚腰に巻いたバスタオル越しに、さっきまで彼の中に入っていた一物に愛おしそうに、頬ずりした。俺からは彼の黒くうねりのある髪が見え、そこに手を置くか迷きかけて、やめた。
「ねぇ。善太郎さん、俺、殺されたって、嬉しいかもしれません。いや、嬉しい。今この瞬間に上からギロチンでもって私の頭を切り離してくれてたっていい。あは、それって最高だ。だって、善太郎さん、今、私のことをよく見えているでしょう。よく見える形で殺してください。」
「何が愉しくてお前なんかのために、殺人犯にならなきゃいけない。懲役だぞ、くそくらえだね。蜂谷、俺が人殺しをしない理由がわかるか。」
「わからないですし、善太郎さんが人殺しかどうかの話はしたことがありません。してくれるのですか。」
「別に、人は殺したっていいんだ。ただ、通常刑罰が見合わない、デメリットがでかいから躊躇うだけだぜ。」
「であれば、絶対善太郎さんが捕まらない状態なら、私を殺したって良いって理屈だ。」
俺は答えるかわりに、バスタオルを剥ぎとって蜂谷の頭を背後から思い切り掴み上げ、その生意気な口の中に陰茎を根元ねじ込んだ。蜂谷は一瞬目を見開いたが、すぐにとろんとして、さっきの会話などしけたもので、ようやくうれしそうな、生き生きとした、まさに「生物」としての暗く輝いた黒い瞳を讃えて、彼は肉棒を吸い立て、そのまま、豊満な腰を誘うように、揺らしはじめた。
「さっき散々やったじゃないかよ、蜂谷。」
彼の喉の奥までぶちこみながら、俺は自分にもまだ十分に元気があることを自覚した。メリメリと蜂谷の喉性器が俺の形に拡張され、双方濡れ始めた。蜂谷のどこか煽情的、挑発的でありながら彼の表情に、だんだん余裕と言うものがなくなるが、その瞳はいつまでも喜悦していた。彼が、陰茎をくわえたたまま咳き込みかけるので、腕を揺らし、奥を特に一撃大きく突いてから、引き抜くようにして彼の髪を引っ張って、肉棒を抜かせた。彼は苦し気にせき込んで首を垂れるのを上から足で踏む。ゲホゲホいうたびに、身体の揺れが足の裏から伝わって、余計に体重をかけると気分がスッとし、彼の耳が真っ赤になるのが見えた。
足をどけ、また頭を掴みあげて顔を見下ろした。目の前でギロチン刑で、落とされた首でももっているようだった。そういう、死と性の、生の間の曖昧な瞼の伏せ方をして、唇の隙間からわずかにこぼれ出る呼吸が、彼を生きている者と認識させる。涎に塗れた口。これが血だったら。股間がまた、疼く。
「おい、オナホ。トランクケースの中に、いくらかディルドをいれてあるから、お前の好きなのを咥えて戻ってこいよ。寂しいんだろ、疼くのだろ、腰の奥が!」
足先で、臍の下の辺りを強くこずいた。ああ、と吐息が漏れ、下を向いていた瞳が俺を見た。
「この淫マン野郎が。どのくらいでかいの持ってきてくれるか見ものだな。この、ガバマン。俺がヤってきた中でもお前が一番に最悪だよ。」
頭を掴んでいるのと反対の手で頬を叩き、手を離した。蜂谷は地面に転げるようになって、身体を引きずるように這ってアタッシュケースの方へ向かって行く。彼の通り道に、てんてん、と、液体が堕ちていた。蜂谷の這いずる様子を見ていると、また頭の奥が熱く熱く、肉棒が復活してくる。
蜂谷は、中程度、とはいえ、直径5㎝長さ15cmほどもある玉の連なったような凹凸のあるクリアパープルのディルドを咥えてもってきていた。すでにぬるぬると濡れていた。彼は咥えたまま、次の指示を待つように、俺の前に座り続ける。五分くらいそうしていると、勝手に興奮して、肉棒を反り上げ始めた。そこを踏んでやると、咥えていたディルドを落としたので、拾い上げ、投げた。ホテルの壁にぶつかって、ゴム製のディルドはマヌケな音を立てて床の上を跳ねまわった。
「勝手に落としたな。もう一回り大きいのでしろ。もう挿れたくてたまんねぇらしいから、咥えて持ってきたら即挿れて好き勝手動いていいぞ。だが、勝手に動きを止めてみろ。俺はもう帰るからな。」
蜂谷は、一回り大きいディルドをくわえもってくると、苦し気に、俺の目の前で上下運動をしながら、再び、俺の一物と戯れ始め、口に含み、自らの立派な雄もしごき始めた。
「今のお前は、とんでもなく最悪な姿をしているが、何を考えてる?」
前髪をもって顔をあげさせると、ぶるん、とペニスが彼の口性器から飛び出し、蜂谷は名残惜しそうにペニスを目で追いながら、俺を見上げた。更に髪を掴み上げ今度は首を絞めた。
「あ゛……っ」
「誰が腰を止めて好いと言ったんだ。」
蜂谷は口から肉棒が飛び出たと同時に、身体のいやらしい顫動まで止めていた。彼はまた必死に動き出す。俺が彼の動脈を軽く抑えると、彼の上下運動と、きゅぶきゅぶとかれの淫マンを押し広げ、中を広げたり閉じたりする、ディルドが、音を立てる。苦し気な上の呼吸と間抜けでいやらしい下半身の音が響き渡る。
あ、ああ゛、と半分以下しかできない呼吸の中で、蜂谷は苦しそうに、しかし嬉しそうに顔を歪め、縋る目つきをまた、し始めた。指を少しだけ緩めもう一度「何を考えている?」と蜂谷の耳元に囁くように聞きながら、テレビをつけた。蜂谷は喘ぐように、言葉を紡ごうとする。そのたび、首をきゅ、と絞めた。鵜飼が、鵜を池に放ち、魚を取って持ってくれば、首をきゅとしめて、その大事な餌を取り出すように。
テレビには、日中行われたらしいレインボーパレードの様子が映っていた。人の歓声、前向きな言葉、笑顔、笑顔、笑顔。踊り、色の迸り、女装、男装、露出の多い服、したり顔の一般人、華やかな音楽、情報、絵面。俺はそれを無表情に眺めて、また、オナホの様子をながめ、指を緩めた。
「なにも、かんがえて、ません」
ぜぇぜぇ、うっとりした様子で、蜂谷はそう言って舌を出した。そこに指を入れてやると、赤子のようにちゅうと吸って、腰をいきおいよく、どすんどすんと、下の部屋にまで、響くのではないかという様子で動かしはじめた。
「にゃにも、にゃにも、」もごもごいう蜂谷の口の上側をこすってやると、「くぅ」と高い声を出した。その赤い洞窟の奥に、またペニスを入れた。蜂谷の顔が一気に紅潮した。俺の身体も扱った。蜂谷の均整の取れた眉は、苦しみに崩れることによって、その美しさを増すのだ。濡れた長い睫毛が上を向き、また俺の方を一身に見始めた。
「なあ、何も考えてないじゃなくて……、何も、考えたくないんだろう、」
「ん‥…ん…‥」
蜂谷はYESともNOともつかぬ、同じ調子で吸い続け、腰をただ動かし続ける。
「俺も、俺も同じ気持ちだ。だから、」
花火の音がした。テレビの向こう側からだ。
きらびやかな花火、それを見ながら俺は、蜂谷の求める聖液を彼の喉奥深くに流し込んだ。
だから、パフォーマーの連中も嫌いだ。生き残る術としてのパフォーム、わかるよ。でもイライラするのさ。
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国会議員に立候補してセクシャルマイノリティに対するヘイトをまき散らし、それによって票を獲得する俺。理想の俺なのかもしれなかった。
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「面倒じゃないか、世話。」
「それ、善太郎さんが私に言うんですね。ちょっとおもしろいな。……まあ、いいです。私は人間というものに飽き飽きしてるんです。人間以外の生き物は、余程正常だ。欲望に忠実で、そのために全身を使って喘いで、はしゃいで、死んでいく。美しいものです。哺乳類は少し人間に近くなりすぎるし何より寿命が長すぎる。私なんていつ死ぬかわからないのだから。」
「ああ、そう。人間は面倒だけど、そういうのはいいわけね。じゃあ、人、セフレの一人や二人位作ったら。」
ラブホテルの深いソファに腰掛けながら、ベッドの上で死んだようになっている蜂谷に言った。
「善太郎さんが、作ってほしいなら、作りますけどね……」
彼は突っ伏したままにしていた顔を、ゆっくりと俺の方に向けた。紅潮していた皮膚は大分落ち着き、身体のぬめりも渇きつつあったが、目の奥にまだ縋りつくようなねとねとしたものが見え隠れしていた。
「でも僕、苦手なんです。基本人付き合いが。善太郎さんなら、わかるでしょう。私のこの感じ。作ったような笑顔も。何度か会ううちにわかる。それで、善太郎さんは、よく私に対してイラついて、正直に、罵倒、殴ってくれるのですからね。素敵だ。たまらん。そう、いつも無意識に僕は人を怒らせてしまう。それが平気な人ならいいんです。だから、貴方は良い人だ。私は、後から解釈して己の鈍さ、悪さを呪います、死にたくさえなります。だから最初から期待しない、つるまない、それが一番傷つかなくていい。もう全部疲れたし、私は嫌でも老いていきます。もう必死になるのも、嫌なんだよ。」
「そう言う意味ならセフレは、」
「まあ最後まで聴いてください。いたこともあります。でも、駄目なんです。今はとてもそんな気にも、一から双方的に人間と、何かする気力もないんです。いちいちメッセージを送り、会って、それでなんだっていうんです。俺の何がわかるってんだよ。くそ……善太郎さんがこの世から消えたら、また考えます。」
蜂谷は大きな身体を起き上がらせ、上半身を起こし、膝を立てた。昔の絵画、ミケランジェロの描いた男のような姿勢に、身体が見合っている。
「この世から消えたらって、ははは、重いぞ。」
蜂谷は口元に笑みを浮かべながら、俺を流し見て、どこか哀し気に目を伏せた。
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「何が愉しくてお前なんかのために、殺人犯にならなきゃいけない。懲役だぞ、くそくらえだね。蜂谷、俺が人殺しをしない理由がわかるか。」
「わからないですし、善太郎さんが人殺しかどうかの話はしたことがありません。してくれるのですか。」
「別に、人は殺したっていいんだ。ただ、通常刑罰が見合わない、デメリットがでかいから躊躇うだけだぜ。」
「であれば、絶対善太郎さんが捕まらない状態なら、私を殺したって良いって理屈だ。」
俺は答えるかわりに、バスタオルを剥ぎとって蜂谷の頭を背後から思い切り掴み上げ、その生意気な口の中に陰茎を根元ねじ込んだ。蜂谷は一瞬目を見開いたが、すぐにとろんとして、さっきの会話などしけたもので、ようやくうれしそうな、生き生きとした、まさに「生物」としての暗く輝いた黒い瞳を讃えて、彼は肉棒を吸い立て、そのまま、豊満な腰を誘うように、揺らしはじめた。
「さっき散々やったじゃないかよ、蜂谷。」
彼の喉の奥までぶちこみながら、俺は自分にもまだ十分に元気があることを自覚した。メリメリと蜂谷の喉性器が俺の形に拡張され、双方濡れ始めた。蜂谷のどこか煽情的、挑発的でありながら彼の表情に、だんだん余裕と言うものがなくなるが、その瞳はいつまでも喜悦していた。彼が、陰茎をくわえたたまま咳き込みかけるので、腕を揺らし、奥を特に一撃大きく突いてから、引き抜くようにして彼の髪を引っ張って、肉棒を抜かせた。彼は苦し気にせき込んで首を垂れるのを上から足で踏む。ゲホゲホいうたびに、身体の揺れが足の裏から伝わって、余計に体重をかけると気分がスッとし、彼の耳が真っ赤になるのが見えた。
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「おい、オナホ。トランクケースの中に、いくらかディルドをいれてあるから、お前の好きなのを咥えて戻ってこいよ。寂しいんだろ、疼くのだろ、腰の奥が!」
足先で、臍の下の辺りを強くこずいた。ああ、と吐息が漏れ、下を向いていた瞳が俺を見た。
「この淫マン野郎が。どのくらいでかいの持ってきてくれるか見ものだな。この、ガバマン。俺がヤってきた中でもお前が一番に最悪だよ。」
頭を掴んでいるのと反対の手で頬を叩き、手を離した。蜂谷は地面に転げるようになって、身体を引きずるように這ってアタッシュケースの方へ向かって行く。彼の通り道に、てんてん、と、液体が堕ちていた。蜂谷の這いずる様子を見ていると、また頭の奥が熱く熱く、肉棒が復活してくる。
蜂谷は、中程度、とはいえ、直径5㎝長さ15cmほどもある玉の連なったような凹凸のあるクリアパープルのディルドを咥えてもってきていた。すでにぬるぬると濡れていた。彼は咥えたまま、次の指示を待つように、俺の前に座り続ける。五分くらいそうしていると、勝手に興奮して、肉棒を反り上げ始めた。そこを踏んでやると、咥えていたディルドを落としたので、拾い上げ、投げた。ホテルの壁にぶつかって、ゴム製のディルドはマヌケな音を立てて床の上を跳ねまわった。
「勝手に落としたな。もう一回り大きいのでしろ。もう挿れたくてたまんねぇらしいから、咥えて持ってきたら即挿れて好き勝手動いていいぞ。だが、勝手に動きを止めてみろ。俺はもう帰るからな。」
蜂谷は、一回り大きいディルドをくわえもってくると、苦し気に、俺の目の前で上下運動をしながら、再び、俺の一物と戯れ始め、口に含み、自らの立派な雄もしごき始めた。
「今のお前は、とんでもなく最悪な姿をしているが、何を考えてる?」
前髪をもって顔をあげさせると、ぶるん、とペニスが彼の口性器から飛び出し、蜂谷は名残惜しそうにペニスを目で追いながら、俺を見上げた。更に髪を掴み上げ今度は首を絞めた。
「あ゛……っ」
「誰が腰を止めて好いと言ったんだ。」
蜂谷は口から肉棒が飛び出たと同時に、身体のいやらしい顫動まで止めていた。彼はまた必死に動き出す。俺が彼の動脈を軽く抑えると、彼の上下運動と、きゅぶきゅぶとかれの淫マンを押し広げ、中を広げたり閉じたりする、ディルドが、音を立てる。苦し気な上の呼吸と間抜けでいやらしい下半身の音が響き渡る。
あ、ああ゛、と半分以下しかできない呼吸の中で、蜂谷は苦しそうに、しかし嬉しそうに顔を歪め、縋る目つきをまた、し始めた。指を少しだけ緩めもう一度「何を考えている?」と蜂谷の耳元に囁くように聞きながら、テレビをつけた。蜂谷は喘ぐように、言葉を紡ごうとする。そのたび、首をきゅ、と絞めた。鵜飼が、鵜を池に放ち、魚を取って持ってくれば、首をきゅとしめて、その大事な餌を取り出すように。
テレビには、日中行われたらしいレインボーパレードの様子が映っていた。人の歓声、前向きな言葉、笑顔、笑顔、笑顔。踊り、色の迸り、女装、男装、露出の多い服、したり顔の一般人、華やかな音楽、情報、絵面。俺はそれを無表情に眺めて、また、オナホの様子をながめ、指を緩めた。
「なにも、かんがえて、ません」
ぜぇぜぇ、うっとりした様子で、蜂谷はそう言って舌を出した。そこに指を入れてやると、赤子のようにちゅうと吸って、腰をいきおいよく、どすんどすんと、下の部屋にまで、響くのではないかという様子で動かしはじめた。
「にゃにも、にゃにも、」もごもごいう蜂谷の口の上側をこすってやると、「くぅ」と高い声を出した。その赤い洞窟の奥に、またペニスを入れた。蜂谷の顔が一気に紅潮した。俺の身体も扱った。蜂谷の均整の取れた眉は、苦しみに崩れることによって、その美しさを増すのだ。濡れた長い睫毛が上を向き、また俺の方を一身に見始めた。
「なあ、何も考えてないじゃなくて……、何も、考えたくないんだろう、」
「ん‥…ん…‥」
蜂谷はYESともNOともつかぬ、同じ調子で吸い続け、腰をただ動かし続ける。
「俺も、俺も同じ気持ちだ。だから、」
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