堕ちる犬

四ノ瀬 了

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股を開いて見せつけて。まるで的にしてくださいって感じだからな。

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霧野はもはや、川名の方を見ていたくなく、救いを求める訳でもないが久瀬の方をちらりと見た。川名よりは遥かにまともな感性の持ち主のはずだった。救ってくれとは言わないが止めてくれと思いながら。

久瀬は、霧野の熱の治まらない下半身を見下ろしていた。触れた先から皮膚に吸い付くであろうほどに汗で濡らし、鼠径部の窪みに汗と精液の残骸を溜めていた。中心で、剥き出しの真っ赤な雄が主張する。

久瀬は、ふと視線を感じて、霧野の顔を見てハッとした。彼は屈辱に眉を潜ませ、目の下を赤らめているくせに、瞳の中に縋るような感じを出して、ぎらぎらと輝かせているではないか。

「そんな目で俺を見るなよ。」

元々彼に強い視線、強い口調で何か言われると悔しいが、それが正しく聞こえ、魂を吸われるような気持ちのいい感覚があった。その瞳を見続けていると何か吸い込まれそうな感覚があった。

霧野は久瀬の声を無視し、じっとりとしたその目で、責めるように、瞬きもせず、射るように見続けていた。「お前が何とかしろ、」という非難めいた言葉を聞いた気がした。

「……お前は」

久瀬の口から漏れ出る声に荒い苛立ちの息が混ざった。ふと、川名は何を考えているのか、と彼の方を横目で見たが、彼はケインをハンカチで丁寧にぬぐっているところで特に何を気にしているようにも見えなかった。

再び霧野に視線を戻すとやはりその瞳は久瀬を捕らえたままだった。しかし、真っすぐな瞳に対して、彼の身体は乱れ、興奮した息を塞がれた口からはへはへと吐き続け、腋から首筋から玉のような汗を浮かせていた。

やつれたとはいえ、彼の豊かな肉体の張りはまだ落ちていなかった。上手に縛られ寝かせられているせいで、両腕、肩、剥き出しの脇から胸までのよく発達した筋肉が呼吸に合わせて上下して艶めかしく動いていた。

汗が一筋また首筋から浮いて溢れ、奇麗な曲線を描いた胸をつたっていった。双胸のそれぞれの中心で銀色のピアスが光り、その桃色の肉の先端を、摘ままれたようにとがらせていた。汗が蕾をくすぐったのか軽く鳴き立てていた。

「……、」

久瀬の顔が何をした訳でもないのにみるみると紅潮していった。胸から更に下へ視線を向けた。霧野のよく絞られた腹筋が、呼吸によって開き閉じする横隔膜の動きと連動して、筋束のひとつひとつを艶めかしく順番に動かしていた。皮膚はやはり濡れて、光の反射でてらてらとしていた。その腹に随分かすれているがなにか文字が書いてあり一緒に蠢いていた。

「……」

久瀬は改めて彼の全身を眺めた。絡めとられ身動きがとれない、痛めつけられた身体が赤く火照り、湿り、噴き出た汗が傷に染みるのか、時折身体の一部が引きつるように動いて、縄をキシッ…キシッ…と軋ませた。そうして吊られている方の脚から鳥肌を立て、一人またくぐもった声を上げたてた。

吊られた脚に縄が食い込むせいでもともとの身体の形が余計に強調させられて、臀から太ももにかけてのムチムチとした感じに思わず指を埋めたくなる。

「……、……」

もっと縛られ吊られた彼を鑑賞したい、その前で酒でも飲めば一興だろう。勃起したペニスも綺麗に縄で絞り上げ仕上げに縄を通して飾ってやれば大層見物だ。正月の余興の1つとしてでも、川名に箴言してみてもいいかもしれない。和調の大広間を貸切って、梁にでも吊るしておいてやればいい。吊るされた彼はきっと、嬉しそうな顔はしないだろう。羞恥に身を軋ませ、今のこの身体では、一人で勝手に感じ入る。それを皆で馬鹿にしてやればいいのだ。
いつも余興の内容には頭を悩ませるがこれは間違いない。配下の人間達のセンスの悪さには辟易だ。それまでコイツが生きているかということが問題だ。

今まで彼を責め立てること、辱めることに夢中で、一個の素体として、まじまじと彼の身体を見てはいなかった。確かに良い身体だとは思っていたが、ここまでとは。川名が素体として気に入るのもわかる。いや責め立てられたことで、余計に良くなったのか?馬を調教するのによく似ている。

「……………」

久瀬は、口内に溜まった唾液を飲み込みながら、霧野の視線を断ち切るように紙袋の中を漁り始めた。鼓動の速さがおかしい。男として、無理やり何か別のことをしてでも、今の気持ちを完全抹消しなければいけない。

川名がケインを手の中で遊ばせてから、ベルトと腰元の隙間に挟みこむようにして刺しいれ久瀬の方を見た。

久瀬は紙袋の中から輪ゴムの束を取り出したかと思うと何歩か後ずさって川名とノアの横に立った。彼の妻が出かける久瀬に小箱と輪ゴムを寄越し、良いところに行くのだったら何か良い食べ物を持って帰ってくるようにと迫るのだった。恥ずかしいから嫌だと毎度言っては毎度折れているため、組員たちの中では日常風景の1つとなっている。

今でこそ何も言われないが、はじめ、川名からは「お前……そんなに給料が足りないのか……?」と呆れられ、美里と霧野は無言の揶揄うような視線を隠しもせずに久瀬に向けた。久瀬は紙袋を傍らに置き、再び霧野の方を、頭ではなく、恥部を見据えた。

霧野の下半身は大っぴらにあけられたドアの向こうで緩やかに勃起し、穢れた後孔を日光の下に晒し熟れて腫れぼったくなった雄の肉をてらてらと輝かせ、尻の下を濡らしていた。中で、押し込まれた携帯電話が覗き明滅を続ける。その醜態を見ていれば先ほどの人を圧倒させ、従わせる瞳のことなど頭の中から振り払うことができた。

「そんなに股を開いて見せつけて。まるで的にしてくださいって感じだからなぁ……」

久瀬は輪ゴムを片手で弄び、ピストルの形を作ってゴムをぎりぎりと限界まで引き伸ばしていった。霧野は何をされるのか察したらしく、身をよじったが意味もなく一直線に飛んだゴムが内腿を弾き真っ赤な痕を残した。

「う゛く……っ」
直ぐさま第二射が発射され、ゴムが勢いよく霧野の割れ目の当たりを弾いた。ちょうど携帯の角にあたり中が軽く擦られた。
「ん゛んんんっ」
痛みと快楽に軽く悶絶しながら彼の背中がまたシートから軽く浮いた。拳でなく、まるで子供の遊びのように輪ゴムで的にされて遊ばれることは、別の強い恥の痛みを精神に伴って霧野を悶絶させたようだった。すっかり敏感になった身体には柔い刺激も逆によく効いた。絶妙なもどかしさに身体が反応するのだ。

「あは、いいとこ当たったな。次はご自慢の小道具に当ててやるよっ、」

久瀬はかつて、誰に飲まされたのか酷く酔った霧野に絡まれて、経験人数を遠回しに蔑まれた記憶をひしひしと思い出していた。妻以外の女に興味がわかないというのにそれをコイツは……コイツには人の心が分からない、だから今回だって、

久瀬は再び霧野と視線を交えた。責めるような視線の上に、強烈な怒りと批難が混じり始めていた。それを見ているとさっきまでの妙な気持ちが少しずつ搔き消えて、加虐心に塗り込められていった。背後から竜胆と一緒になって犯してやった時の奴の醜態を思い出せば、さらに加虐の炎が燃え果てた。

「責めるなら俺じゃなくて自分を責めろよ霧野っ、」

3射目は霧野の亀頭の当たりをかすり、4射目は竿の中心、5射目は蟻の門渡りを直撃した。

「くぅぅ…っ」
「ははは、お前のその今後一生誰に突っ込む予定もないしょうもない壊れた馬鹿ペニスはな、こうやって使われるのがお似合いなんだよっ、もっと鳴けよ。できるだけ惨めにな。」

さらに、6射7射と打ち込まれ、細かな赤い蚯蚓腫れがまたぐらに増え、痛痒さと羞恥、惨めさに脚を閉じようと藻掻くが閉じられない。すると一物がさらにみるみるそりたち始めた。

「こんなことされてまだ勃起してやがる……堕ちたな……澤野……」
久瀬は俯きがちに小さくそう呟いて再びゴムを弾いた。
「ふん、そんなにいいならもっと遊んでやる。」

川名、久瀬の配下2人を混じえた4人で金銭を賭けた射的ゲームが始まった。即席の得点表が作られ、霧野にも見せつけられた。
「こういうルールでやるから。さっきのお前の反応的にこれが最適解だ。異論はあるか?」
霧野は喉の奥で強く唸り立てたが久瀬は一笑したうえ「なるほど、異論はないってことだな。」と言った。

尻:1点
内腿:2点
足裏:3点
竿、金玉、肛門:4点
亀頭、蟻の門渡り:5点
肛門中(携帯、ペン直撃):6点
ピアス:7点
ペンを産ませる:ボーナス20点
携帯を産ませる:ボーナス50点

川名が得点表と輪ゴムの束を見下ろしながら言った。

「その量じゃ1人25回分もある。1回1回交代するのは億劫だ。一度に複数本使っていいことにしよう。打撃も増すし、その分点数を掛けたらいい。例えばいっきに10本使って亀頭を撃ち抜いたら50点だ。的にも効くだろうしな。あと、ボーナス点摂った奴はこうしようか。」

川名が表にこう書き加えた。携帯を産ませる:ボーナス50点+挿入する権利(使っても使わなくても可)

的の役目を課せられた霧野が度々、抗議でもするように悶絶したが誰一人として何も言わず、余計に嘲笑の目線に晒されるだけで、勝手にゲームが始まっていった。仕上がっていた霧野の身体はみるみる熱を持って反応し、また中を締め付けていた。やめろと騒ぎたいようだが、塞がれた口からは逆に小さな高い声が漏れ出るだけだった。

彼は塞がれた口の中に溜まった唾液を飲み込み、改めて口をしっかりと噛みしめ、目を閉じ、声を上げるのをこらえていた。100本分使用されれば終わるのだ。終わりがわかってるならそれまで耐えるだけ、単純なことだ。所詮。そのように思って、身体をぐったりとシートにもたれさせ、彼らを愉しませないように声をこらえていた。

何周かの後、川名が15本程度まとめてねじり、一本のゴムにして、ぎりぎりと大きく引き伸ばし始める。自然とぐったりしていた霧野の身体が動いた。

「おい、的が動くなよ。俺を負けさせたいのか?いいかメス犬、お前は俺の犬になったんだろ?だったらこんなくだらん遊びだろうが、少しは主人に貢献してみせろよ。いいな。自分の役を最後までやれ。」

川名の有無を言わさぬ口調に先程の調教を身体の底から思い出したのか、動きが弱くなる。バチッという音と共に輪ゴムの束が飛んで、霧野のピアスのちょうど貫いた辺りに直撃した。彼は言葉にならない高い悲鳴をあげながら、身体を震わせ、中の異物を出さないように必死にこらえ、縄をきしませた。周囲から嘲笑が上がる中、久瀬が周囲より一瞬遅れて厭らしく微笑み、川名だけが冷めた視線で霧野を見下ろし続けた。



「今からですか。」
そうだ今からだ、と電話の向こうから川名の普段と変わらぬだるそうな低い声が聞こえてきた。
『嫌か、それとも何か用事があるのかな。』
「……いや」
霧野は髪に指を通しながら、鏡を見始めた。夜勤明けでシャワーを浴び、もう寝ようとしていたところだった。
『じゃあ早く来い。』
一方的に電話が切られ、ため息をついた。気に入られるのはいいことだが、少しはこちらの都合を考えて欲しいものだ。身体を拭き終え、下着を履き、ハンガーにかけたばかりの衣服に腕を通した。
着替え終わり、霧野は鏡に写った自分の全身をまじまじと見つめて苦笑した。最近隣人が目を合わせてくれないのもわかる。すっかりサマになってしまったのだから。何がこちらの都合、だ。せっかく川名の家に行けるチャンスなのに、これじゃまるで本当に……。

川名の邸宅は、和調の大きな一軒家で周囲を高い塀で囲われていた。植木が塀の上にまで生い茂り葉のこすれる音を鳴らす。手入れはされているが影が多く、周囲の邸宅と比べてどことなく暗い雰囲気を漂わせていた。閉ざされた巨大な黒い門の前に先客がいた。

「あ、澤野さん、おはようございます。俺も今来たとこなんだ。」

間宮がにこにこと笑いながら、自転車に鍵をかけて立ちあがった。彼はぴったりとした黒いトレーニングウェアをきており、屈んだ拍子に、筋肉質で適度な脂肪をつけたむちむちとした太ももと尻に目がいった。彼は鍵を掛けながら言う。

「あ、何その顔。澤野さんも夜勤明けそのまんま来たの?俺もさっきまで仕事してたけど、そのついでですよ。お金貰えるし、それに、」

聞いてもいないのに間宮が延々と一方的に話しかけてきた。うるさいので無視してインターホンを押した。少しして間宮は細い指で自転車の鍵を弄びながら黙った。

少しの間があって門が自動で音を立てながら開いた。門から玄関までは30メートルほどあり、広い庭だった。玄関まで石畳の道が作られておりその周りは、芝、芝の周囲はうねるような植木と植物で埋められていた。2人中に足を踏み入れると、背後で門が閉まる音がして、大きなカラスアゲハが一頭、霧野と間宮の間を横切った。そういえば、こんな季節というのに、音がしない。異様な静けさだ。蝉の声ひとつ無いではないか。

「ねぇねぇ、澤野さん、見てよアソコ、超絶にデカいダチュラが咲いてる、奇麗じゃない?」

霧野は面倒と思いながら間宮の指さす方に軽く目を向けた。ダチュラ、チョウセンアサガオ、強い幻覚作用をもたらす毒性のある夏の花だ。大ぶりでシェードランプのような形をしているのが特徴だ。強い毒性がある癖にその形から天使のラッパという別名がある。通常よりさらに大ぶりな黄色のダチュラの花が20房近くしな垂れるように咲き誇り、風にゆらゆらとゆれていた。確かに圧倒される風景だが、ただそれだけで特に感想が無かった。

「興味がない。」
「へぇ、そう。奇麗だと思うんだけどな……」

石畳を半分ほど行ったところで、玄関先に川名が出てきた。

彼は、普段と違うゆったりとしたモノトーンのサテン生地の衣服を身にまとわせて、首からはだけた胸元にかけて細い金のチェーンのようなものが光っていた。髪もセットされておらず、少しうねりのある濡れた黒髪が目にかかって、奥に沼のような眼光があった。しかし、そのスタイルも洗練されよく似合っていると言えた。
普段からヤクザというよりもエリート商社の敏腕営業のような雰囲気を漂わせているが、今日もやはりヤクザというよりうらびれたデザイナーかもっと洒落た風にいえば、昔の王族のような雰囲気を漂わせていた。

以前から感じてはいたが、川名は同系列組織の他の組の頭と比べても少し浮いていた。何がと聞かれても、霧野は川名しかよく知らないから言葉ではうまく言い表すことができなかった。

唯一の比較対象としては、ちょうど神崎と彼と同年代で、川名の方が少し上になるはずだ。彼も川名のことを知っているようなことを言ったが、警察で持っているデータ以上のことは知らないと言い張って口を濁した。神崎も随分あの組織の中で浮いた存在だったが、川名の方がさらに、言い表せぬ、人を惹きつける浮いた存在感というものがあった。最初に会った時も写真と随分印象が違うと思った。それほどに彼の身に纏う気が強いのだ。もし彼がこちら側の人間だったら霧野より神崎より遥かに器用に、或いは狡猾にやり、順当に上に行くのではないかと思われた。ある意味見習いたいところだが、努力して到達できる領域ではないだろう。

「おはようございます。」

霧野が頭を下げ、斜め後ろで少し遅れて間宮も同じようにしていた。川名が足の甲でバンドを留めるタイプの黒いサンダルを履いているのが目に付いた。Diorのロゴが端に光った。Dior、ヤクザがDiorなど履くのか。

普段人目に晒していない真っ白な足の甲に視線が縫い留められた。薄い皮膚の下に太く青い血管が幾筋も浮き出て、右足の指先だけがモゾモゾと、猫科動物や猛禽類が獲物に爪を突き立て弄ぶように動いていた。彼の足の指は珍しいことに親指より人差し指の方が長く、余計に人ならざる、獣めいた形に見えた。

いつまでも足を見ていても不審がられるため頭を上げた。川名は自分が呼び出したにも関わらず髪をかきあげながら不愉快そうな顔をした。
「急に呼び出して悪かったな。」
ほんとだよ……という言葉を噛み殺して愛層笑いをしてると横で間宮があからさまに手で口をおさえて、欠伸などをし始めた。霧野は自身の背筋に軽い寒気が走るのを感じた。
「……」
川名が間宮の方をじっと見ている雰囲気があったが、フォローせずに黙っていた。勝手に落ちろ。川名は少しして視線を二人の後ろの方に向けた。

「頼み事というのはアレだ。」

川名は二人が入ってきた門の方を指さした。入ってくるときには気が付かなかったが、そこに大型犬が二頭は入るような大きな鉄製の檻が置かれていた。軽く引きずった跡が地面についている。随分と重みがあるようだ。

「アレを裏庭に運んでほしいんだ。今から他にあと3人ほど来るはずだから、5人で運んでくれ。」
「はい、わかりました。……あれは」
「ああ、ノアのためだよ。」

川名はそっけなくそう言って霧野を見据え、冗談めかすように微笑んだ。職場でなく家にいるせいなのか、服装のせいなのか、普段より若干だが表情が柔らかく、どこか子供っぽく見えた。

「なんだ?入りたいのか。」
「まさか。」
川名は「あ、そう」と軽く笑いながら言って間宮を見た。
「お前は。」
「……」

間宮は即答せず何か考えるような素振りをしてから「別に、入れと言われたら入りますが。」と無表情に静かに言った。

「ふーん……。残りの三人が来たようだ。俺は裏庭の方に出ているから頑張って運んで来いよ。」

残りの三人は若く力に自信のありそうな三人であった。五人でギリギリなんとか檻を持ち上げることができ、家の東側を通り、北に面するの裏庭に回った。

川名が縁側に出て、足をぶらぶらと揺らしながら五人を待っていた。日差しが強く、彼は丸い金縁のサングラスをかけていた。レンズは薄く紫がかった色をしていた。

「来たな。そこだよ、そこ。」

重い檻だった。五人でひいひい言いながら、なんとか川名の指さす場所に檻を着地させた。川名の座る縁側からよく見える位置だ。芝生も十分にありノアを遊ばせるには良いだろう。霧野は檻に手をついて休み、間宮は芝生の上にしゃがみ込んで頭を伏せていた。汗が滴って芝に落ちていった。

川名が立ち上がり、近づいてくる気配があった。彼は檻の前に立ち、見降ろすように檻を見た。
「間宮、中に入ってみろ。サイズ感を確かめたい。」
間宮が頭を上げた。顔の半分が腕に覆われてその目元しか見えないが、じっとりとした視線で川名を見ていた。
「……いいですよ」
腕の中からくぐもった声を出した。

いいですよじゃなくて、わかりましたじゃないかと霧野は思ったがやはり黙って様子を見ていることにした。檻から手を離し、二三歩後ずさった。間宮はしゃがんでいた場所、芝の上でためらうこともせず四つん這いになり這って檻の扉に自ら手をかけ暗い檻の中に入っていった。

分厚い天井板のせいで中は濃い日影になっている。彼は中で四つん這いのまま、のそのそと方向転換し扉まで閉めて見せ、中から見上げるように川名の方を見ていた。檻の高さからして四つん這いが妥当、座ったとしても頭をギリギリあげられるかどうか。

「どうですか?参考になります?」

間宮は淡々とした調子で恥じる様子も無く事務的に川名に問いかけた。

「悪くないな、中を歩き回ってみろ。それで感想を教えてくれ。」

間宮は返事の代わりに再び頭を下げて中を這いまわり始めた。熱いのか汗をかき、はあはあと息をたぎらせて手足を動かしている。

彼の筋肉質な太ももが、のしのしと動き、角度によってはウェアの下の窪みや膨らみがわからないでもない。霧野は思わず顔を覆って目を背け、何を考えているのか、と、川名の方を見た。川名は特に表情も変えずじっと間宮の様子を見て、それからしゃがみ込んだ。

「感想は。」
間宮が動きを止めて、川名の方を向いた。
「まあ、それなりに歩き回れるから、犬一頭ならいいんじゃないんですか。ノアなんか俺より全然細いですし。」
「快適か?」
「ええ。快適ですね。」 

川名が檻の中ではなく霧野の方を上目遣いで見た。無邪気な瞳だった。

「二頭入っても問題ないか確認したいな。」
「……」 

霧野は川名から視線を逸らし、残りの三人の方を見たが全員そっと目を逸らした。

「お前に言ってるんだ、澤野。中に入ってみろ。俺の言うことが聞けないのか。」
「……、」

霧野は躊躇っていたが、川名の熱い視線に負けて「わかりました」と檻の傍に近寄った。そして扉の目の前で、しゃがんだ。先に中に入っていた間宮が黙ってもそもそと動きだし、檻の隅の方に移動していって入口の方に尻を向けるではないか。 

「……」
「どうした、早く入ってみせてくれよ。」

扉を開き、ゆっくり中の床版に手を伸ばして身体を押し込むようにして中に入った。這うような姿勢にはなりたくなく、頭を伏せて体育座りで座り込んだ。せっかく一昨日クリーニングから返ってきたばかりのスーツを土と犬小屋で穢されるのが嫌で嫌で仕方がなかった。

既に恥ずかしさと屈辱感に身体が熱っぽい。中は風通しが良いとは言えず少し熱い。頭を伏せたまま目だけをを檻の外に向けると三人の脚としゃがみこんだ川名の視線があった。嫌な気分になって目を伏せた。何もしてないのにとくんとくんと心拍数が上がっていく。

横でずるずると身体をひきずるような音が聞こえ、間宮が恥ずかしげもなく、こちらに尻を向けて伏せるようにして檻の床に寝そべりはじめた。

「なんだ?そんなところに縮こまって。」

川名がそう言って乱暴に檻の扉を閉め、扉と鉄格子を束ねるように手で握り上げた。霧野が反射的に扉に手をかけると同時に外から残酷に錠が下ろされる音がした。

間宮が面倒くさそうに外を見るのに対して、霧野がそのまま扉の鉄格子を掴み、川名を睨むと彼は面白そうに声を上げて笑って身を乗り出した。

「お前は本当にからかいがいがあって面白いな。」
「いい加減にしてくださいよ、」

川名はもう一度笑って立ち上がり、他の三人に帰っていいぞと声を掛けた。彼らは霧野に同情的な目を向けて申し訳なさそうにそそくさとその場を去っていった。川名が立ち上がったせいで顔が見えない。

サンダルの上で、また川名の右の足先が楽しそうに繰り返し指を上げたり下げたりしていた。

「ま、デカめの雄を二頭いれても大丈夫なことは分かった。」

川名が霧野のいる側の檻の格子をサンダル先で何度か軽く蹴って扉をガタガタと揺らす。青い血管が脈打って真っ白い表面が薄らと濡れ、指に力が入って丸く折り込まれていた。

「澤野、もっと中を這いまわって確認しないか。そうしないとわからんだろう。犬が快適かどうか。」
「……」
「やれよ。」

とてもついていけない、と思ったが、今に始まったことではなかった。仕方なく姿勢を崩して檻の底に膝をつき、四つん這いの姿勢になった。前進しようにも間宮が身を小さくして寝たまま動じずにじっとしているので、動ける範囲がほとんどない。

彼と檻の隙間、時に彼に覆いかぶさるようにして行ったり来たりを繰り返すと、まるでツイスターゲームでもプレイしているかのような気分になってくる。間宮の肉体から時々漂う生理のような臭いも不快だ。

いつの間にか川名が縁側の方に移動して座り頬杖をついて二人の様子を見ていた。
「どうだ澤野、居心地は。」
相変わらず遠くからでもよく通る声だった。霧野は間宮に覆いかぶさったまま不快の眼差しを川名に向けた。動いたせいで余計に蒸し暑く汗が額から顔をつたって垂れ、間宮の身体を濡らした。

「悪くないんじゃないですか、犬だったらね!」
「ふーん」
川名が煙草に火をつけると奥から女が一人出てきて、彼の側に灰皿を置いた。
「またあんな遊びなさって……」
「遊び?仕事をさせてやってるんだよ。中のサイズを測らせてるんだ。おい澤野、中の奥行と幅、高さは何センチだ?早くこたえろよ。」

知らねぇよっ!!!と叫びたいのをこらえた。下を向けば何もせず無気力に寝そべったままであった男が気だるげに霧野の方を見上げた。

彼の皮膚が汗に濡れ、流し目が妙な色っぽさを含んでいた。さっきまでは無かった怪しい濡れた瞳。彼の存在のせいで互いの身体が余計に蒸れて気分が悪い。彼は薄っすら口を開けて吐息混じりに囁いた。

「澤野さん……、おそらく、およそ150×200と見たよ。高さは100だな。」
「……」

霧野もおおよそ間宮の意見に同意したが、間宮の言ったことをそのまま口に出して言うことが気に障るのだ。
「回答が遅い。もうしばらくそこにいて、中を細かく調べるんだな。」
川名はそう言って家の奥にひっこんでしまい、間宮が「あーあ、早く言わないからぁ……」とため息をついていた。

しばらくの時間が経つ。太陽が上に上がるほど中の温度もサウナのように上昇し、ふたりしてはあはあと息を荒げていた。霧野はいつの間にかジャケットを脱ぎシャツをほとんどはだけていた。間宮に至っては上半身を裸になって背中を檻の背面にもたれさせ、膝を抱えて座り込んでぼーっとしていた。

間宮は暇つぶしのつもりか霧野に一方的に話しかけてきたが、霧野が徹底して無視を続けるので根負けした。電源を切られたか、死んだようになって動かなくなり、余計に気味の悪さが増していた。

こうして見ると彼の身体を覆う異常な数の黒い刻印が目についた。普段露出部分からも見えていたが、ここまで彫られつくされた刺青は初めて見る。霧野の視線を感じたのか間宮の視線がゆっくりと霧野の方を向き、再び口元に妖艶な笑みをたたえた。彼は霧野の方に手を突き、身体を寄せた。

「気になる??もっと近くで見たら?」

彼が這い寄るように近づいてくる。間宮の右腕が霧野の方に伸ばされたので、とっさに身の危険を感じ、右手で彼の右手首をとると、ほとんど同じタイミングで間宮の左手が霧野の左手首を掴み、自身の方に引き寄せようとする。

「なんだ!俺に触るんじゃない!」
「別に。嫌ならそっちが先に離せばいいんじゃないですか~。」

間宮の指にまで彫られた歪な文様が力の具合で目の前で伸び縮みを繰り返し、霧野は何か人ではない異形の者に自分が引き込まれているような錯覚に陥った。

間宮はニヤニヤと笑いながら、腕以外の部位を使おうとせず、腕相撲を愉しむかのように腕を押し、引きを繰り返した。まるで動物とじゃれてるようだ。こちらもムキにならなければいいとわかっているのに、負けたくないと力をこめてしまう。

力が拮抗して、行きつ戻りつを繰り返す。檻の中の温度がみるみる上昇し、お互いの呼吸が混ざるような熱気であふれた。間宮が途中ワザと手の力を抜き、まるで、霧野に殴られるのを誘っているような動きをする。フェイントでもかけているつもりなのだろうか。

「いい加減にしろっ」

握っていた方の手を外して彼の顔面を引っ掻くようにして叩いた。彼の目の下が軽く切れて出血した。彼は俯いて目元をおさえ、ようやく手を離したのだった。指の隙間から目がこちらを見ていた。やはり同じ人間と思えない、爬虫類のような目だった。それなのに口元に笑みが張り付いたままなので余計に気味が悪い。

「なんだよさっきから……、気持ちが悪い……。」
「わかったのか、檻の広さは。」

いつからいたのか、川名が檻のすぐそばに立っていた。霧野の代わりに間宮が「150/200/100」と即答した。

「素晴らしい。正解だ。先にお前を出す。澤野お前も少ししたら出してやる。待っていろ。」

霧野は何か言う気力もなく、間宮が服を着なおして川名に連れられて出ていくのじっと見ていた。彼らは縁側から家の中に入っていた。

しばらくして、川名は前言通り霧野を檻から出し、間宮と同じように縁側から家の中に入るように言った。衣服を整え、川名に連れられて回廊を歩き続ける。和室から井草の穏やかな香りが漂っていた。

彼が集めたらしい美術品がところどころに飾られていた。絵画、彫刻、壺、時に溢れんばかりの熟れた生け花。そういえば事務所の彼の部屋の絵も定期的に架け替えられ、華も入れ替わりよくよく手入れされている。美術品への投資は黒い資産を隠すためにもちょうどいいのだろう。

回廊の外は西面の庭であり、木漏れ日が刺し込み、美しい木々や花と、それらが立てる小さな音、小鳥の声が響いていた。静かだった。そういえば間宮はどこへ行ったのだろうか。先に帰らされたのか。

短い間とはいえ、狭いところに閉じ込められ太陽の光に焙られたせいで、頭がぼーっとして、イライラよりも疲労感が勝っていた。

閉じ込められただけというのに、様々な感情が身体を駆け巡った。しかし、怒ろうが悲しもうが屈辱に震えようが、どうにもならない現実を体現した檻という拘束に、何故か全てから解放されたようなうっとりした感じが訪れかけ、それを掻き消すのに必死だった。いつの間にか回廊からまた別の縁側に出ていた。

「アレを見ろ。」

川名にぶつかりそうになりながら足を止め、川名の指さす方を見た。霧野は喉の奥をきゅっと絞められたような感覚を覚えたが、すぐに心を殺した。

生きた若い男が全裸で縛られ、外の木に吊るされていた。口に猿ぐつわを噛まされて震えている。ソレは緊縛術を用いて吊られており、両腕を上にあげて縛られ、股を開かされていた。急に血の匂いが鼻につき始めた。

さらに異様なのが彼の皮膚にナイフで切ったような大きな切り傷が無数に走り、鮮血を垂らしていた。腕、腿、足、それから木に、ダーツの矢が付きたって、木の下に外したのであろうダーツの矢がかなりの数落ちていた。おそらく20はある。

「お前もやってみろ。」
いつの間にか手にダーツの矢を握らされていた。
「ダーツは得意かな?」
「いえ、恥ずかしながら実はほとんどやったことがありません。カジノに置いてはいますが自分は専ら見る専門です。」
霧野は機械的にスラスラと川名に返答し、手の中で矢を弄んだ。
「……。そうか、じゃあ下手なりに打ってみろ。」
「はい。」
「もし良いところに当てたら良い物をやるよ。まあ気楽にな。」

男の前に立ち、じっと彼を見据えた。彼は懇願するように霧野を見て、唸りながらギシギシと身体を軽く揺らした。

川名の熱い視線を感じた。手を抜けば、失敗すれば、勝手に川名の中の順位が下がるだろうことは容易に想像できたが、身動きが取れない見ず知らずの男を打ちぬくのは気が引けた。集中する。

「悪く思うなよ……」

手を振り上げ、真っすぐに矢が飛んで狙ったところに突きたった。男が悲鳴を上げた。

「ふーん、なかなかいいじゃないか。」

川名が嬉々として言い、両手の指をくみながら、霧野の方に近寄った。霧野の放った矢は男の開かされた股のすぐ下の樹の幹に真っすぐ突きたって揺れていた。

「ほとんどやったことない?本当かな?……まあいいや。お前はもう帰っていいぞ。」

川名が再び先導するように歩き出すので彼に付き従った。家の中をもっとよく見て調べたかったが、吊られた男を見ていたくなかった。廻廊の途中にまた、戸棚の上に生け花が飾られ、溢れていた。

川名が通り過ぎざまに指で挟むようにして中から淡い紫色をした華を一輪引き抜いた。彼の手の中で華が揺れ、暗い廊下に水を滴らせた。

玄関から外に出ると光が異様に目を突いた。どっと疲れていた。

「じゃあ、ゆっくり休めよ。」

はい、と振り向くと同時に胸ポケットに何か差し込まれ、川名の腕がだらんと下に垂れた。その手の中に華が無くなっており、代わりに霧野の胸元に紫色のトルコキキョウが一輪咲いていた。
「参加賞。」
ハッとして顔を上げた。閉まりかけの玄関扉の向こう側で、紫がかった彼の瞳の奥に微笑みの後が残っていた。目の前でピシャッと扉がしまった。

「………。」 

胸元を1度撫で、手に持ち変えようか考えたが、そのまま門の方に向かって歩き始めた。まだ誰かが自分の姿を見ているような気がした。遠くで黒い門が音を立てて開いていく。

霧野が門の外に1歩出たと同時に背後で門が閉まり始めた。身体ごと振り返り、頭を下げた。

門の閉まる直前視線を軽くあげると、ノアが彼の家の中にいるのが見え、え?と思う間に門が閉まった。家のなかで飼えるなら何故わざわざ外に檻を設置するのだろうか。
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