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頭使ってせいぜい準備してみろ。お前が考え付きそうなことは片っ端から全部壊してやるから。
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不意に目が覚めるが、今が何日の何時なのか自信が無い。毛布から這い出る意味もないので薄目を開いたまま、ただ呼吸していた。湿った呼吸が顔に張り付く。
身体が何もしていなくても汗ばんで気持ちが悪かった。鼻の感覚がずいぶん鈍っていたが、それでもまだ様々な体液の臭いがわかる。また彼に洗い流されるまでこの臭いの中に浸っていないといけない。
ここ数日、時間感覚が狂っていて本当は数時間なのかもしれないが、美里から最低限の身の回りの世話と軽い痛ぶりを受けていた。人として彼と会話した記憶が無い。こちらから話しかけることを禁止されており、彼からも人としてこちらを扱おうという様子が見えないかった。
陰嚢を挟み込んで留められたハンブラーも外されないず、立つことが出来ないので、結果としていつまでも床を這い蹲ることしかできなくなる。床を這いまわさせられ、踏まれ、最低限の食事を上から下から摂取される。
せめて尋問のひとつやふたつでもしてもらった方が良かった。川名や二条が現れないことは、嬉しいことのはずなのに不安が積もることでもあった。あきられ、このまま誰からも忘れ去られ、ただ生かされてここに留め置かれることを考えると、もっと絶望的な気分になる。
ペニスに貫かれたピアスからはたまに出血したが、強烈な痛みや腫れは治まりつつあった。
身体を楽な姿勢に整えようと動くと、自然と喉からくぐもった声が出た。
身体の中に楔が喰い込むのだった。後孔の中に金属のフックが挿れられていた。突端に直径4cm程度の球がついていて、体を動かすと金属の棒と球が中を擦る。臀から割れ目に沿ってU字のフックの縦線が伸びて、突端のリングに通された紐がそのまま首輪に付いたリングに括られていた。
姿勢を伸ばそうとすると常に軽く引っ張られて、痛みを伴った。肉がぐぷぐぷと嫌な音を立て、捲りあげるように体内を犯す。
「んぁ……っ」
ただでさえ屈辱的な姿がより惨めな姿にされていた。誰も見ていないのにつねに羞恥心にこたえた。羞恥心に伴って中を擦られると、頭の中に何も考えられない空間のようなものが生まれ、快楽に満たされた心がすさみ、何も考える気が無くなる。
慎重に体を動かして楽な姿勢を探して蹲り、体を無為に動かさないようにする。
漠然と思考をめぐらせた。その間も全身がほんのりと熱く脈打って、呼吸する度に全身の神経が、性感帯を中心にして目覚め始め、性的な欲求が湧き上がる。すぐに頭が働かなくなる。彼が化膿止めとして塗ってくる薬のせいだけと思いたいが、それだけではないのだろう。感度を高められた身体が、屈辱とむなしさによって一層感じてしまう。頭が馬鹿になって、自分が自分で無くなる前にもう一度眠るか、ギリギリまで何か思考をしていたい。
一体誰が、今自分がこんな目に遭っていると想像してくれるだろうか。恥でしかない。最早死んだことになっているのだから死ねばいいのでは?死にたい。と死ぬ理由を探してみるが、死ねない。こんなことをされたまま死んでいいわけない、彼らのせいで死ぬなんて許されない。矛盾した思考。
矛盾した思考、警官なのかヤクザなのか、サディストなのかマゾヒストなのか、死にたいのか死にたくないのか。
蛍光灯の瞬く音がした。毛布の下にいても光が感じられて、急な光に目の奥がしばしばする。聞いたことのある携帯の着信音が鳴り響いていた。毛布の取り払われた向かうに川名が無表情に立っていて、手には霧野の携帯が握られていた。
川名は黙って霧野の目の前にしゃがんだ。靴の先が顎の下に差し込まれて挙げられた頭に開かれた携帯が黙って押し付けられる。
『ようやく出たな。気まぐれに電話に出たりでなかったりするのをやめろ。メールでも何でも。』
呑気な上司の声が聞こえてくる。電波が悪いのか声に少し雑音が混ざっていた。異常に腹が立った。
「……すみません」
『なんだ?何を怒ってる。Nの事だが…』
木崎の死んだことをまだ知らないからこんな声を出せるのだろうか。しかし話をここで広げられても困る。直接的に助けを求めるなどもってのほかだが、緊急を伝えるための手段があった。『朝の8時』というのだ。これを話す言葉の中に入れた場合、緊急事態、何か問題が起きたの意味になる。今までも数度程度しか使ったことがない。それゆえ前回電話に出させられたときは、緊張もあり言葉が出なかった。今はまだ余裕がある。
「すみませんけど、今他と一緒なんです。朝の8時にかけ直すでどうですか。……うあ゛っ!!」
川名の人差し指と中指が首輪から臀の中に収まるフックに繋がる紐を引っ掛けて上にあげていた。必然的に中のフックが動いて突いてはいけない場所を突き上げる。体を動かせば余計に中を刺激した。
「おぁ……ッ、ぐぅぅ……っ、」
頭を伏せて首を振りながら電話口から頭を遠ざけた。無理やり電話を顔に押し付けられる。
『どうした?』
「ふぁっ……なんでも、っ、なんでもありませ、ん゛……っ!」
『………わかった。いいだろう、待ってる。』
少し離れた場所から上司の声が聞こえ、そのまま電話が切れた。
恐る恐る目で川名の方を見た。彼はうっすら笑っていた。嫌な笑い方。自分が何か間違いを侵したことを直感して全身に寒気が走った。
「´朝の8時´はエマージェンシーコールじゃなかった?」
動揺を隠すために眉をしかめて彼をじっと見ていたが、発汗が激しくなり、何も身につけていない身体の表面に浮いた汗が隠せない。知っているはずがないのだ、何故?
「なにを、いってる?」
「誤魔化すなよ。俺の前で堂々と助けを求めた上、話を広げようともしないし、いい度胸だな、霧野。そんなことではいつまでたっても俺の下に戻ってこれない、一生性奴隷が妥当だ。少しくらい努力をしろ。」
川名は片手で携帯を折りたたみ、ポケットに滑り込ませ、人差し指と中指をさらに折り曲げたようだった。痺れるような感覚と痛みが体の内側から沸き上がり、歯を食いしばって耐えた。身体が震えた。
「まだ懲りてないんだから、お前は。」
グイグイと指が緩められたり、引き上げられたりが繰り返され息が上がっていく。勝手に開いた口から、息を漏らすと軽く舌が出て、堪えきれない声が出た。
「や゛めっ…‥ぁああっ、」
「わざわざ人、気力、体力を使って純粋な暴力を施さなくても、これだけでお前を責め、苛ませることができるようになったんだから、簡単なものだ。そうだ、後から二条に頼んでこのまま吊っておいてやろう。吊られればその辛さに多少は頭が冷えるだろ。お前の開発された身体にはきっとちょうど良い拷問になるはずだ。そのまままた、皆に犯させてやろうか?悦んで集まってくるぞ。皆お前が大好きだからな。」
「ふざけんな……俺は、……」
「俺は、なんだ?言ってみろ。」
「お前らの、玩具じゃない、」
川名の指がピンと張っていた紐から離れていき、彼が立ち上がった。彼の足元で身体が脱力していく。上で彼が笑っていた。
「何言ってんだ霧野。面白いこと言うなよ。いいか、お前は最初から俺の玩具なんだよ。この組織全て俺の玩具なんだから。美里だって二条だってそうだ。俺に目を掛けられるというのはそういう意味だ。」
「……」
「お前は久々に俺に打撃を与えた、最悪な人間だ。故に遊びがいも無限にある。お前の一生を好き勝手に支配する権利が俺にはある。俺に直接的な被害を与えたのだから、当然だな。それくらいの覚悟でここに来たんじゃないのか。」
常に死と隣り合わせ、拷問死される覚悟で職務を全うしてきた。今のこれはなんだ。ずっと思っていたことだった。川名に言われて少しだけ理解する。好き勝手に人生を支配される覚悟が無かったのだ。失敗して尚長く「生かされる」パターンを考えてこなかった。それも屈辱的な方法で。
「死の覚悟だけ抱いてきたのか?それなら最高だな。今の罰がお前には一番妥当だという証明になった。そろそろ死にたいか?前にも言ったが、いつでも頼んでくれていいからな。皆お前を殺したがっているし。どうだ?今すぐにでも死にたいか?」
「……。いや、」
川名は鼻で馬鹿にしたように笑って「だろうな。」と言った。
「お前は、名誉の死よりも惨めな生を自ら選択してるんだ。」
「名誉……?お前らに殺されることなんて、名誉でも何でもない、」
「……お前何もわかってないな。まあいい。好きに吠えてろ。」
彼は煙草に火をつけて再び携帯の画面を見始めた。時々携帯越しに目が合う。
彼がこちらにかざした画面には霧野が川名にメールで送った精緻化された得点表が写っていた。
「お前の送ってきた皆の採点表にはなかなか楽しませてもらった。約束通り、少ししたらまた出してやろう。お前の性格がよくでた最高のプロファイリングだな。よく恥ずかしげもなくこんなの書けたな、淫売の天才が。お前を娼夫にさせてもきっといいところまで行くだろう。」
表は射精回数以外に、一物の長さ、太さ、射精までかかったおよその時間、臭いの強さでソートできるようにしてあった。個人的な感想や感情をゆさぶることを書きたくなかったのだ、例えば、誰が良くて誰がよくないだとか。事実だけの羅列ならいくらでもかけた。それでも、書いている最中、嫌でもあの時のことを思いだし、身体がむらむらとしたのも事実であった。
「お前の様な変態ホモ警官は男の一物のプロファイリングの方法も一通り学習済なのかな?結構なことだ。同じ部署の男の一物は一通り調査、咥え済か?」
「つまらない冗談、そんなわけないだろ……」
「実はな、今週はかつてのお前が散々しゃぶりあったであろう仕事仲間が来るんだよ。ご褒美にお前もいつもの通り出席させてやる。もしかしたら、奴らの勘が良くってお前を助けてくれるかもしれないな。」
「……」
警官と組織の連絡役所謂「ハク」として定期的に警察から人が派遣されて来ていた。敵をだますならまずは味方から。ハクの中でも霧野の存在を知っている者は限られていた。しかし、今緊急事態の連絡を送ったばかり。何かしらの注意を払ってくれる可能性は大いにある。不思議なのは川名がそれをわかってまで霧野を普段通りそばに立たせようとすることだった。川名の様な変態はスリルを求めてそれくらいしそうではあるが……。
「期待して、頭使ってせいぜい準備してみろ。お前が考え付きそうなことは片っ端から全部壊してやるから。逆に、もし俺を満足させるような素晴らしい態度がとれたなら、これからの処遇について少し考えてやってもいい。どちらにせよ、奴らが来るまではもう少し日がある、その間中も、お前の過ちを罰し、この組織の犬となったことを自覚させるため、今のように責め続けてやろう。奴らが来る前に壊れるなよ。もっと希望を持て。」
身体が何もしていなくても汗ばんで気持ちが悪かった。鼻の感覚がずいぶん鈍っていたが、それでもまだ様々な体液の臭いがわかる。また彼に洗い流されるまでこの臭いの中に浸っていないといけない。
ここ数日、時間感覚が狂っていて本当は数時間なのかもしれないが、美里から最低限の身の回りの世話と軽い痛ぶりを受けていた。人として彼と会話した記憶が無い。こちらから話しかけることを禁止されており、彼からも人としてこちらを扱おうという様子が見えないかった。
陰嚢を挟み込んで留められたハンブラーも外されないず、立つことが出来ないので、結果としていつまでも床を這い蹲ることしかできなくなる。床を這いまわさせられ、踏まれ、最低限の食事を上から下から摂取される。
せめて尋問のひとつやふたつでもしてもらった方が良かった。川名や二条が現れないことは、嬉しいことのはずなのに不安が積もることでもあった。あきられ、このまま誰からも忘れ去られ、ただ生かされてここに留め置かれることを考えると、もっと絶望的な気分になる。
ペニスに貫かれたピアスからはたまに出血したが、強烈な痛みや腫れは治まりつつあった。
身体を楽な姿勢に整えようと動くと、自然と喉からくぐもった声が出た。
身体の中に楔が喰い込むのだった。後孔の中に金属のフックが挿れられていた。突端に直径4cm程度の球がついていて、体を動かすと金属の棒と球が中を擦る。臀から割れ目に沿ってU字のフックの縦線が伸びて、突端のリングに通された紐がそのまま首輪に付いたリングに括られていた。
姿勢を伸ばそうとすると常に軽く引っ張られて、痛みを伴った。肉がぐぷぐぷと嫌な音を立て、捲りあげるように体内を犯す。
「んぁ……っ」
ただでさえ屈辱的な姿がより惨めな姿にされていた。誰も見ていないのにつねに羞恥心にこたえた。羞恥心に伴って中を擦られると、頭の中に何も考えられない空間のようなものが生まれ、快楽に満たされた心がすさみ、何も考える気が無くなる。
慎重に体を動かして楽な姿勢を探して蹲り、体を無為に動かさないようにする。
漠然と思考をめぐらせた。その間も全身がほんのりと熱く脈打って、呼吸する度に全身の神経が、性感帯を中心にして目覚め始め、性的な欲求が湧き上がる。すぐに頭が働かなくなる。彼が化膿止めとして塗ってくる薬のせいだけと思いたいが、それだけではないのだろう。感度を高められた身体が、屈辱とむなしさによって一層感じてしまう。頭が馬鹿になって、自分が自分で無くなる前にもう一度眠るか、ギリギリまで何か思考をしていたい。
一体誰が、今自分がこんな目に遭っていると想像してくれるだろうか。恥でしかない。最早死んだことになっているのだから死ねばいいのでは?死にたい。と死ぬ理由を探してみるが、死ねない。こんなことをされたまま死んでいいわけない、彼らのせいで死ぬなんて許されない。矛盾した思考。
矛盾した思考、警官なのかヤクザなのか、サディストなのかマゾヒストなのか、死にたいのか死にたくないのか。
蛍光灯の瞬く音がした。毛布の下にいても光が感じられて、急な光に目の奥がしばしばする。聞いたことのある携帯の着信音が鳴り響いていた。毛布の取り払われた向かうに川名が無表情に立っていて、手には霧野の携帯が握られていた。
川名は黙って霧野の目の前にしゃがんだ。靴の先が顎の下に差し込まれて挙げられた頭に開かれた携帯が黙って押し付けられる。
『ようやく出たな。気まぐれに電話に出たりでなかったりするのをやめろ。メールでも何でも。』
呑気な上司の声が聞こえてくる。電波が悪いのか声に少し雑音が混ざっていた。異常に腹が立った。
「……すみません」
『なんだ?何を怒ってる。Nの事だが…』
木崎の死んだことをまだ知らないからこんな声を出せるのだろうか。しかし話をここで広げられても困る。直接的に助けを求めるなどもってのほかだが、緊急を伝えるための手段があった。『朝の8時』というのだ。これを話す言葉の中に入れた場合、緊急事態、何か問題が起きたの意味になる。今までも数度程度しか使ったことがない。それゆえ前回電話に出させられたときは、緊張もあり言葉が出なかった。今はまだ余裕がある。
「すみませんけど、今他と一緒なんです。朝の8時にかけ直すでどうですか。……うあ゛っ!!」
川名の人差し指と中指が首輪から臀の中に収まるフックに繋がる紐を引っ掛けて上にあげていた。必然的に中のフックが動いて突いてはいけない場所を突き上げる。体を動かせば余計に中を刺激した。
「おぁ……ッ、ぐぅぅ……っ、」
頭を伏せて首を振りながら電話口から頭を遠ざけた。無理やり電話を顔に押し付けられる。
『どうした?』
「ふぁっ……なんでも、っ、なんでもありませ、ん゛……っ!」
『………わかった。いいだろう、待ってる。』
少し離れた場所から上司の声が聞こえ、そのまま電話が切れた。
恐る恐る目で川名の方を見た。彼はうっすら笑っていた。嫌な笑い方。自分が何か間違いを侵したことを直感して全身に寒気が走った。
「´朝の8時´はエマージェンシーコールじゃなかった?」
動揺を隠すために眉をしかめて彼をじっと見ていたが、発汗が激しくなり、何も身につけていない身体の表面に浮いた汗が隠せない。知っているはずがないのだ、何故?
「なにを、いってる?」
「誤魔化すなよ。俺の前で堂々と助けを求めた上、話を広げようともしないし、いい度胸だな、霧野。そんなことではいつまでたっても俺の下に戻ってこれない、一生性奴隷が妥当だ。少しくらい努力をしろ。」
川名は片手で携帯を折りたたみ、ポケットに滑り込ませ、人差し指と中指をさらに折り曲げたようだった。痺れるような感覚と痛みが体の内側から沸き上がり、歯を食いしばって耐えた。身体が震えた。
「まだ懲りてないんだから、お前は。」
グイグイと指が緩められたり、引き上げられたりが繰り返され息が上がっていく。勝手に開いた口から、息を漏らすと軽く舌が出て、堪えきれない声が出た。
「や゛めっ…‥ぁああっ、」
「わざわざ人、気力、体力を使って純粋な暴力を施さなくても、これだけでお前を責め、苛ませることができるようになったんだから、簡単なものだ。そうだ、後から二条に頼んでこのまま吊っておいてやろう。吊られればその辛さに多少は頭が冷えるだろ。お前の開発された身体にはきっとちょうど良い拷問になるはずだ。そのまままた、皆に犯させてやろうか?悦んで集まってくるぞ。皆お前が大好きだからな。」
「ふざけんな……俺は、……」
「俺は、なんだ?言ってみろ。」
「お前らの、玩具じゃない、」
川名の指がピンと張っていた紐から離れていき、彼が立ち上がった。彼の足元で身体が脱力していく。上で彼が笑っていた。
「何言ってんだ霧野。面白いこと言うなよ。いいか、お前は最初から俺の玩具なんだよ。この組織全て俺の玩具なんだから。美里だって二条だってそうだ。俺に目を掛けられるというのはそういう意味だ。」
「……」
「お前は久々に俺に打撃を与えた、最悪な人間だ。故に遊びがいも無限にある。お前の一生を好き勝手に支配する権利が俺にはある。俺に直接的な被害を与えたのだから、当然だな。それくらいの覚悟でここに来たんじゃないのか。」
常に死と隣り合わせ、拷問死される覚悟で職務を全うしてきた。今のこれはなんだ。ずっと思っていたことだった。川名に言われて少しだけ理解する。好き勝手に人生を支配される覚悟が無かったのだ。失敗して尚長く「生かされる」パターンを考えてこなかった。それも屈辱的な方法で。
「死の覚悟だけ抱いてきたのか?それなら最高だな。今の罰がお前には一番妥当だという証明になった。そろそろ死にたいか?前にも言ったが、いつでも頼んでくれていいからな。皆お前を殺したがっているし。どうだ?今すぐにでも死にたいか?」
「……。いや、」
川名は鼻で馬鹿にしたように笑って「だろうな。」と言った。
「お前は、名誉の死よりも惨めな生を自ら選択してるんだ。」
「名誉……?お前らに殺されることなんて、名誉でも何でもない、」
「……お前何もわかってないな。まあいい。好きに吠えてろ。」
彼は煙草に火をつけて再び携帯の画面を見始めた。時々携帯越しに目が合う。
彼がこちらにかざした画面には霧野が川名にメールで送った精緻化された得点表が写っていた。
「お前の送ってきた皆の採点表にはなかなか楽しませてもらった。約束通り、少ししたらまた出してやろう。お前の性格がよくでた最高のプロファイリングだな。よく恥ずかしげもなくこんなの書けたな、淫売の天才が。お前を娼夫にさせてもきっといいところまで行くだろう。」
表は射精回数以外に、一物の長さ、太さ、射精までかかったおよその時間、臭いの強さでソートできるようにしてあった。個人的な感想や感情をゆさぶることを書きたくなかったのだ、例えば、誰が良くて誰がよくないだとか。事実だけの羅列ならいくらでもかけた。それでも、書いている最中、嫌でもあの時のことを思いだし、身体がむらむらとしたのも事実であった。
「お前の様な変態ホモ警官は男の一物のプロファイリングの方法も一通り学習済なのかな?結構なことだ。同じ部署の男の一物は一通り調査、咥え済か?」
「つまらない冗談、そんなわけないだろ……」
「実はな、今週はかつてのお前が散々しゃぶりあったであろう仕事仲間が来るんだよ。ご褒美にお前もいつもの通り出席させてやる。もしかしたら、奴らの勘が良くってお前を助けてくれるかもしれないな。」
「……」
警官と組織の連絡役所謂「ハク」として定期的に警察から人が派遣されて来ていた。敵をだますならまずは味方から。ハクの中でも霧野の存在を知っている者は限られていた。しかし、今緊急事態の連絡を送ったばかり。何かしらの注意を払ってくれる可能性は大いにある。不思議なのは川名がそれをわかってまで霧野を普段通りそばに立たせようとすることだった。川名の様な変態はスリルを求めてそれくらいしそうではあるが……。
「期待して、頭使ってせいぜい準備してみろ。お前が考え付きそうなことは片っ端から全部壊してやるから。逆に、もし俺を満足させるような素晴らしい態度がとれたなら、これからの処遇について少し考えてやってもいい。どちらにせよ、奴らが来るまではもう少し日がある、その間中も、お前の過ちを罰し、この組織の犬となったことを自覚させるため、今のように責め続けてやろう。奴らが来る前に壊れるなよ。もっと希望を持て。」
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