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第2部 アリス・ボークラール
第31話
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あの当時、キャサリン妃殿下や兄が、そんなことを想っていること等、私は思いも寄らなかった、と言いたいところだが、この頃の私は、薄々、キャサリン妃殿下や兄の思惑に気付いていた。
だから、あのような行動を私が取っていたのも事実だった。
それに。
エドワード大公世子殿下と、一つ屋根の下で2月近く住み、更にこれまでエドワード殿下に仕えていた人達と語り合えたことから、エドワード殿下の想いを把握できたのも、私の思惑を後押しすることになった。
エドワード殿下は、本当に妻子が揃った温かい家庭を望まれているのだ。
そして、それは私も同様だった。
エドワード殿下にしてみれば、産まれてすぐに産みの母親から引き離され、それから1年も経たない内に、実の両親は焼死されてしまわれたのだ。
その一方で、エドワード殿下は、チャールズ大公とメアリー大公妃殿下という養親に温かく育てられ、マーガレット皇后陛下やキャロライン皇貴妃殿下、アーサーといった姉弟と仲良く育った。
勿論、完全に両親が揃っていたわけではないが、そういった親兄弟と家族仲良く育ったので、自分もそういった温かい家庭を築きたい、と想うのが人情というものだろう。
だから、血が完全につながらずとも、温かい家庭を望まれている。
だが。
キャサリン妃殿下は、その点で完全に失格だった。
10年以上前のことを、未だに持ち出して、エドワード殿下を、親の仇の係累と憎まれているのだ。
そもそも論からいえば、キャサリン妃殿下の方が、加害者の娘と言っても過言では無いのに。
これでは、エドワード殿下が幾ら仲良くしようと努めても、どうにもならないだろう。
その一方で私は。
前世で両親や兄弟に囲まれて育ったせいもあり、更に、この世界に来てから、現状を把握した時点で両親を失っていて、孤児院生活を送らざるを得なかったせいもあり、ということから。
私は、温かい家庭を追い求めていた。
そして、同病相憐れむではないが、こういったお互いの心情は、何となく響き合うものだ。
だから、エドワード殿下と私は、いつか引かれ合うようになった。
そして。
そういったことから、エドワード殿下は、半ば最後の機会として、来春までキャサリン妃殿下の心が溶けないか、試みた上で、溶けなければ、私を自邸に引き取ろうと考えておられるのだろう。
もっとも、まずキャサリン妃殿下の心は溶けない、とエドワード殿下やその周囲(キャロライン皇貴妃殿下ら)は考えておられるので、来春の3月一杯で、私はエドワード殿下の邸宅に赴く覚悟を固めるように言われたのだ。
そんなふうに私が考えている内に、日々は過ぎ去っていった。
1月の除目で、私は男爵に叙せられ、宮中女官にも任命された。
これで、私は、フローレンス・マイトラント嬢と同格になった、と想ったが。
フローレンス・マイトラント嬢は、子爵に陞爵され、相変わらず私は見下されることになった。
(もっとも、これはマイトラント伯爵家を宥めるためもあったらしい。
確かに、マイトラント伯爵家にしてみれば、私が男爵になるというのは、癇に障る事態だろう)
そして、3月程、宮中女官の職務を務め上げた後、私は宮中を退くことになった。
言うまでもなく、エドワード殿下の私邸で侍女として働くためだ。
とはいえ、先日とは異なり、爵位を持つ身で、今度は侍女として働くことになる。
エドワード殿下の私邸で、爵位を自身が持つ侍女は、片手で収まる数だ。
つまり、裏返せば自分は、エドワード殿下の私邸の侍女の序列で言えば、文句なしの上級侍女になる。
更に言えば、私はまだ16歳の若さなのだ。
大公家は、私に十二分な箔を付けてくれたといえる。
私は胸を張って赴くことになった。
だから、あのような行動を私が取っていたのも事実だった。
それに。
エドワード大公世子殿下と、一つ屋根の下で2月近く住み、更にこれまでエドワード殿下に仕えていた人達と語り合えたことから、エドワード殿下の想いを把握できたのも、私の思惑を後押しすることになった。
エドワード殿下は、本当に妻子が揃った温かい家庭を望まれているのだ。
そして、それは私も同様だった。
エドワード殿下にしてみれば、産まれてすぐに産みの母親から引き離され、それから1年も経たない内に、実の両親は焼死されてしまわれたのだ。
その一方で、エドワード殿下は、チャールズ大公とメアリー大公妃殿下という養親に温かく育てられ、マーガレット皇后陛下やキャロライン皇貴妃殿下、アーサーといった姉弟と仲良く育った。
勿論、完全に両親が揃っていたわけではないが、そういった親兄弟と家族仲良く育ったので、自分もそういった温かい家庭を築きたい、と想うのが人情というものだろう。
だから、血が完全につながらずとも、温かい家庭を望まれている。
だが。
キャサリン妃殿下は、その点で完全に失格だった。
10年以上前のことを、未だに持ち出して、エドワード殿下を、親の仇の係累と憎まれているのだ。
そもそも論からいえば、キャサリン妃殿下の方が、加害者の娘と言っても過言では無いのに。
これでは、エドワード殿下が幾ら仲良くしようと努めても、どうにもならないだろう。
その一方で私は。
前世で両親や兄弟に囲まれて育ったせいもあり、更に、この世界に来てから、現状を把握した時点で両親を失っていて、孤児院生活を送らざるを得なかったせいもあり、ということから。
私は、温かい家庭を追い求めていた。
そして、同病相憐れむではないが、こういったお互いの心情は、何となく響き合うものだ。
だから、エドワード殿下と私は、いつか引かれ合うようになった。
そして。
そういったことから、エドワード殿下は、半ば最後の機会として、来春までキャサリン妃殿下の心が溶けないか、試みた上で、溶けなければ、私を自邸に引き取ろうと考えておられるのだろう。
もっとも、まずキャサリン妃殿下の心は溶けない、とエドワード殿下やその周囲(キャロライン皇貴妃殿下ら)は考えておられるので、来春の3月一杯で、私はエドワード殿下の邸宅に赴く覚悟を固めるように言われたのだ。
そんなふうに私が考えている内に、日々は過ぎ去っていった。
1月の除目で、私は男爵に叙せられ、宮中女官にも任命された。
これで、私は、フローレンス・マイトラント嬢と同格になった、と想ったが。
フローレンス・マイトラント嬢は、子爵に陞爵され、相変わらず私は見下されることになった。
(もっとも、これはマイトラント伯爵家を宥めるためもあったらしい。
確かに、マイトラント伯爵家にしてみれば、私が男爵になるというのは、癇に障る事態だろう)
そして、3月程、宮中女官の職務を務め上げた後、私は宮中を退くことになった。
言うまでもなく、エドワード殿下の私邸で侍女として働くためだ。
とはいえ、先日とは異なり、爵位を持つ身で、今度は侍女として働くことになる。
エドワード殿下の私邸で、爵位を自身が持つ侍女は、片手で収まる数だ。
つまり、裏返せば自分は、エドワード殿下の私邸の侍女の序列で言えば、文句なしの上級侍女になる。
更に言えば、私はまだ16歳の若さなのだ。
大公家は、私に十二分な箔を付けてくれたといえる。
私は胸を張って赴くことになった。
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