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第2部 アリス・ボークラール
第28話
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こういった思わぬやり取りがあった後、私はエドワードご夫妻の下へのお祝いの品が届くのが、一段落したこともあり、宮中に戻ることになった。
私としては、10日もあれば宮中に戻れ、秋の園遊会の手伝いもできると考えていたのだが、大公家と帝室双方に関わる慶事だけに、地方に下っている州長官や地方の荘園主等からもお祝いの品が届く有様で、エドワードご夫妻の邸宅に2月近くも住み込むことになってしまったのだ。
宮中に私が戻ると。
私に対する周囲の目が微妙に変わっていた。
何故なのか、思わず私が考えていると、キャロライン皇貴妃殿下から、小部屋に来るように指示があった。
「アリス、あなたを1月の除目で男爵に叙爵し、宮中女官に任じることが内定しました」
「えっ」
私は、キャロライン皇貴妃殿下の言葉に驚いた。
本当に宮中女官に私が成れるなんて、嬉しかったが、その一方で、キャロライン皇貴妃殿下が微妙に複雑な表情を浮かべているのが気になった。
実際。
「それから、アリス、3月一杯で辞表を提出する覚悟をなさい」
「ええっ」
次のキャロライン皇貴妃殿下の言葉に、私は腰を抜かした。
何で任命されて、3月で辞表を出さないといけないのだ。
それなら、そもそも任命する必要は無いのでは?
「失礼とは思いますが、何故にそんな話に」
私は、キャロライン皇貴妃殿下に、流石に疑問をぶつけざるを得なかった。
「そうですね、順を追って話しましょう」
キャロライン皇貴妃殿下は、かいつまんだ説明を始めた。
そもそもの発端は、エドワードご夫妻の不仲だった。
子どもが産まれれば、それを機にある程度は、仲が修復されると周囲は思っていたのだ。
そして、アイラ様が産まれ、贈り物が殺到し、その整理のために人が必要になった。
「私の養母が言ったのです。この際、アリスを派遣して、エドワードの家庭を見てもらいましょう。ついでに、妙な動きが無いかを探りましょうと」
キャロライン皇貴妃殿下の言葉に、私は内心で想った。
メアリ大公妃殿下が、動かれていたのか。
きっと、私のことを想ってに違いない。
「ところが、思わぬ余波が生じました。あなたの派遣を聞いたマイトラント伯爵が、へそを曲げたのです。むしろ、フローレンス・マイトラントが、というべきかもしれませんが」
私は私的な侍女に過ぎないから、別に宮中からエドワードご夫妻の家庭に派遣されても、特に問題にはならない。
だが、フローレンス嬢は宮中女官だから、そんなことはできないのだ。
だから、仕方ないのだが、フローレンス嬢としては、この件は癇に障ってしまった、という訳だ。
「別にアリスを派遣することは無いのでは、と当初は、マイトラント伯爵は周囲にこぼすだけだったのですが。その内に、エドワードとアリスが召人関係を、事実上結んだという噂が流れだして、火に油が注がれました」
ええっ、それは嘘です、事実無根です。
私は、喚き散らしたくなった。
確かに、エドワード殿下と私が、詩歌のやり取りをする等、恋人同士っぽいことをしたのは事実ですが。
「実際、エドワードも妙な噂が流れないように、わざわざ基本的にアイラを伴って、あなたの下を訪ねる等の配慮をしたというのに。全く子連れで召人関係を結ぶ男がいるものですか」
キャロライン皇貴妃殿下は、完全に頭を抱えられているような様子だった。
「更にキャサリン妃も、それを理由というか、口実にして、ますます頑なな態度を、エドワードに執るようになりました。全く、そもそもアイラを抱こうともせず、追い払うような態度を執っていながら、出産直後に浮気をするとは赦せない、も何もあったものではないでしょうに」
キャロライン皇貴妃殿下の愚痴に、私は同意した。
私としては、10日もあれば宮中に戻れ、秋の園遊会の手伝いもできると考えていたのだが、大公家と帝室双方に関わる慶事だけに、地方に下っている州長官や地方の荘園主等からもお祝いの品が届く有様で、エドワードご夫妻の邸宅に2月近くも住み込むことになってしまったのだ。
宮中に私が戻ると。
私に対する周囲の目が微妙に変わっていた。
何故なのか、思わず私が考えていると、キャロライン皇貴妃殿下から、小部屋に来るように指示があった。
「アリス、あなたを1月の除目で男爵に叙爵し、宮中女官に任じることが内定しました」
「えっ」
私は、キャロライン皇貴妃殿下の言葉に驚いた。
本当に宮中女官に私が成れるなんて、嬉しかったが、その一方で、キャロライン皇貴妃殿下が微妙に複雑な表情を浮かべているのが気になった。
実際。
「それから、アリス、3月一杯で辞表を提出する覚悟をなさい」
「ええっ」
次のキャロライン皇貴妃殿下の言葉に、私は腰を抜かした。
何で任命されて、3月で辞表を出さないといけないのだ。
それなら、そもそも任命する必要は無いのでは?
「失礼とは思いますが、何故にそんな話に」
私は、キャロライン皇貴妃殿下に、流石に疑問をぶつけざるを得なかった。
「そうですね、順を追って話しましょう」
キャロライン皇貴妃殿下は、かいつまんだ説明を始めた。
そもそもの発端は、エドワードご夫妻の不仲だった。
子どもが産まれれば、それを機にある程度は、仲が修復されると周囲は思っていたのだ。
そして、アイラ様が産まれ、贈り物が殺到し、その整理のために人が必要になった。
「私の養母が言ったのです。この際、アリスを派遣して、エドワードの家庭を見てもらいましょう。ついでに、妙な動きが無いかを探りましょうと」
キャロライン皇貴妃殿下の言葉に、私は内心で想った。
メアリ大公妃殿下が、動かれていたのか。
きっと、私のことを想ってに違いない。
「ところが、思わぬ余波が生じました。あなたの派遣を聞いたマイトラント伯爵が、へそを曲げたのです。むしろ、フローレンス・マイトラントが、というべきかもしれませんが」
私は私的な侍女に過ぎないから、別に宮中からエドワードご夫妻の家庭に派遣されても、特に問題にはならない。
だが、フローレンス嬢は宮中女官だから、そんなことはできないのだ。
だから、仕方ないのだが、フローレンス嬢としては、この件は癇に障ってしまった、という訳だ。
「別にアリスを派遣することは無いのでは、と当初は、マイトラント伯爵は周囲にこぼすだけだったのですが。その内に、エドワードとアリスが召人関係を、事実上結んだという噂が流れだして、火に油が注がれました」
ええっ、それは嘘です、事実無根です。
私は、喚き散らしたくなった。
確かに、エドワード殿下と私が、詩歌のやり取りをする等、恋人同士っぽいことをしたのは事実ですが。
「実際、エドワードも妙な噂が流れないように、わざわざ基本的にアイラを伴って、あなたの下を訪ねる等の配慮をしたというのに。全く子連れで召人関係を結ぶ男がいるものですか」
キャロライン皇貴妃殿下は、完全に頭を抱えられているような様子だった。
「更にキャサリン妃も、それを理由というか、口実にして、ますます頑なな態度を、エドワードに執るようになりました。全く、そもそもアイラを抱こうともせず、追い払うような態度を執っていながら、出産直後に浮気をするとは赦せない、も何もあったものではないでしょうに」
キャロライン皇貴妃殿下の愚痴に、私は同意した。
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