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第1部 メアリー・グレヴィル
第13話
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取りあえず、というか、アンはあの後、ベッドに運ばれて、(原作通り)無事に意識を取り戻した。
原作通りなら、その後、アンは、乳母のソフィアと抱き合って、あの夜の相手がチャールズだったこと、そして、今やチャールズが自分の姉メアリの結婚相手となったことから、自分とチャールズが(少なくとも)姉が死なない限り、結婚できない運命となったことを泣いて訴え、運命を嘆く筈だ。
私は、アンが失神した後、(原作通り)アンが心配だから、という口実で、披露宴の中止をチャールズ達に言い出して、チャールズ達も同意した。
そして、私はアンの傍に赴き、(原作通り)アンが意識を取り戻すのを見守ったが。
私は、その後のアンとソフィアが嘆く場面を直視する気には、とてもなれず、アンが無事に意識を取り戻した後、表面上は姉として、いきなり失神した妹を心配する態度を示し、アンはアンで、(原作通り)もう大丈夫、というのを真に受けたように振舞って、アンの下を辞去した。
私が、チャールズの下に還ると、チャールズは私を待っていた。
そして、チャールズの顔を見た瞬間。
そういえば、原作では、こんな場面は無かったな、とつい的外れなことを私は想ってしまった。
幾ら半ば予期していたとはいえ、披露宴からここまでの騒動で、私の心が現実から少し遊離していたのだろう。
「アンはどうだった」
チャールズは、私の顔を見た瞬間、私の両肩に手を置いて問いただしそうな勢いで尋ねてきた。
「無事に回復しました。心配させて、申し訳ありません」
「それは良かった」
私の答えに、チャールズはホッとしたようだ。
一目ぼれで惚れ込んだ最愛の相手が倒れたことで、気が気でなかったのだろう。
チャールズの態度は、私の心の中に不快感を催させ、少し意地悪を言わせることになった。
「何だか、妻の私が倒れたように心配されるのですね」
私の言葉に、チャールズは少しびくついた。
全く分かりやすい。
「いや、そんなことはないよ。単に君の妹で、身内同士だから心配になっただけだ」
チャールズは弁解を始めた。
「分かっていますよ」
私は微笑んだ。
そう微笑むのがコツだ。
下手に怒る等しては、私の内心、真情が読まれかねない。
微笑み顔というのは、意外と真情を分からなくさせるものなのだ。
私は自分に言い聞かせた。
私は、チャールズに惚れ込んでいる。
そして、アンにチャールズを私は渡したくない。
だから、チャールズには、アンを諦めてもらう必要がある。
勿論、アンにも。
だが、原作通りなら、アンはチャールズとの関係を少なくとも表面上は諦める筈だ。
だから、チャールズにアンを諦めさせれば、全て丸く収まる、
とこの時の私は考えていた。
(実際には、それは甘すぎる考えだったのだが)
ともかく政略結婚の妻として、チャールズに私は尽くそう。
そして、妻として認められるのだ。
私はそう考えて。
「ともかくアンのことは大丈夫です。それよりも」
私は、そっとチャールズを寝床に誘った。
「夫婦としての関係を本当に築きましょう」
「そうだね」
チャールズは、今の時点では半ば無理しているのだろう。
顔が引きつっている。
何しろ、本格的な初恋の相手が、回復したとはいえ、一時は倒れてしまったのだ。
心配して当然だ。
だが、このことは秘密にせねばならない。
何しろ、妻の妹に手を出してしまった、というのは、知らなかったでは済まないタブーなのだ。
そして、妻からこう誘われているのに断っては。
ますます私に疑惑を持たれることになる。
そう素早くチャールズは頭を回転させたのだろう。
不自然に見えないように、ベッドの傍の灯りを消し、表情が分からないようにして、私と共にベッドに入った。
私達は初夜を迎えた。
原作通りなら、その後、アンは、乳母のソフィアと抱き合って、あの夜の相手がチャールズだったこと、そして、今やチャールズが自分の姉メアリの結婚相手となったことから、自分とチャールズが(少なくとも)姉が死なない限り、結婚できない運命となったことを泣いて訴え、運命を嘆く筈だ。
私は、アンが失神した後、(原作通り)アンが心配だから、という口実で、披露宴の中止をチャールズ達に言い出して、チャールズ達も同意した。
そして、私はアンの傍に赴き、(原作通り)アンが意識を取り戻すのを見守ったが。
私は、その後のアンとソフィアが嘆く場面を直視する気には、とてもなれず、アンが無事に意識を取り戻した後、表面上は姉として、いきなり失神した妹を心配する態度を示し、アンはアンで、(原作通り)もう大丈夫、というのを真に受けたように振舞って、アンの下を辞去した。
私が、チャールズの下に還ると、チャールズは私を待っていた。
そして、チャールズの顔を見た瞬間。
そういえば、原作では、こんな場面は無かったな、とつい的外れなことを私は想ってしまった。
幾ら半ば予期していたとはいえ、披露宴からここまでの騒動で、私の心が現実から少し遊離していたのだろう。
「アンはどうだった」
チャールズは、私の顔を見た瞬間、私の両肩に手を置いて問いただしそうな勢いで尋ねてきた。
「無事に回復しました。心配させて、申し訳ありません」
「それは良かった」
私の答えに、チャールズはホッとしたようだ。
一目ぼれで惚れ込んだ最愛の相手が倒れたことで、気が気でなかったのだろう。
チャールズの態度は、私の心の中に不快感を催させ、少し意地悪を言わせることになった。
「何だか、妻の私が倒れたように心配されるのですね」
私の言葉に、チャールズは少しびくついた。
全く分かりやすい。
「いや、そんなことはないよ。単に君の妹で、身内同士だから心配になっただけだ」
チャールズは弁解を始めた。
「分かっていますよ」
私は微笑んだ。
そう微笑むのがコツだ。
下手に怒る等しては、私の内心、真情が読まれかねない。
微笑み顔というのは、意外と真情を分からなくさせるものなのだ。
私は自分に言い聞かせた。
私は、チャールズに惚れ込んでいる。
そして、アンにチャールズを私は渡したくない。
だから、チャールズには、アンを諦めてもらう必要がある。
勿論、アンにも。
だが、原作通りなら、アンはチャールズとの関係を少なくとも表面上は諦める筈だ。
だから、チャールズにアンを諦めさせれば、全て丸く収まる、
とこの時の私は考えていた。
(実際には、それは甘すぎる考えだったのだが)
ともかく政略結婚の妻として、チャールズに私は尽くそう。
そして、妻として認められるのだ。
私はそう考えて。
「ともかくアンのことは大丈夫です。それよりも」
私は、そっとチャールズを寝床に誘った。
「夫婦としての関係を本当に築きましょう」
「そうだね」
チャールズは、今の時点では半ば無理しているのだろう。
顔が引きつっている。
何しろ、本格的な初恋の相手が、回復したとはいえ、一時は倒れてしまったのだ。
心配して当然だ。
だが、このことは秘密にせねばならない。
何しろ、妻の妹に手を出してしまった、というのは、知らなかったでは済まないタブーなのだ。
そして、妻からこう誘われているのに断っては。
ますます私に疑惑を持たれることになる。
そう素早くチャールズは頭を回転させたのだろう。
不自然に見えないように、ベッドの傍の灯りを消し、表情が分からないようにして、私と共にベッドに入った。
私達は初夜を迎えた。
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