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9 相方という存在
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突然、私の目の前でルディアスの胸に飛び込んだリノという女性キャラ。
彼女は目に涙を浮かべ、恍惚とした表情で彼を見上げている。それを見て、私は胸がチクリと痛んだ。
なんで……? なんでそんなに親しそうなの……?
「ルディ……私、ずっと会いたかった……」
「……何故、ここにいる?」
嬉しそうなリノに対して、ルディアスは強張った表情でそう言った。
その様子から、何となく会いたくない相手なんだろうなぁということは想像できた。
「ルディアス……これは一体、どういうことなんですか? 説明してほしいんですけど?」
私は咳払いを一つして、彼を睨みながらそう言った。
一体、誰なんだろう? とりあえずこのリノって人は、雰囲気から察するにリアル女性っぽいけど……三次元に興味がないルディアスに限って、嫁(ユリア)を裏切ってまで浮気するなんてありえないだろうし……。
「……元嫁だ」
「元嫁!?」
ああ、なるほど……何度かゲーム内で結婚してるのは知っていたけど、ネカマばかりだと思ってた。
でも、こんなに熱い眼差しでルディアスを見つめているくらいだから、たぶん中身は女性だよね……。
「あのー……詳しく聞かせてもらえませんか?」
とりあえず、広場の隅に移動する私たち。
私が不機嫌な態度を全面に出して説明を求めると、ルディアスはようやく口を割った。
どうやらリノという人は『星彩の騎士団』の元ギルドメンバーで、一年程前にゲーム内で結婚していた相手らしい。
でもある時、急にゲームの引退を宣言して、ギルドも自分から脱退していったのだとか。
そして、私とシオンの他にルディアスの本性を知る人物でもある……という話だった。
そんな彼女が突然ゲームに復帰したのだから、驚くのも無理はない。
「大体の事情はわかりましたけど……」
自分で言ってて思った……なんか今、私すごい嫁ヅラしてるよね。
いや、実際に嫁だからいいんだろうけど、彼が好きなのはアバターの方だし私が出張るのは何か違う気もする……。
「『なんで引退宣言なんかしたの?』って聞きたそうな顔してるわね」
突然、リノが私に向かってそう言った。
「……ルディに振られたのよ。私が勝手に本気になって、告白したら玉砕したってわけ。それで、自棄になって……ギルドを抜けて引退宣言したの」
「え……」
……先に実行してた人がいた。そして、見事玉砕かぁ……まあ、そうなりますよね。
でも、この人は彼が二次コンだってことは知らなそう。
「宣言しちゃった手前、もう二度と来ないつもりだったんだけど……またルディに会いたくなって、来ちゃったの。そしたら、会えた……運命だと思った。でも……」
そう言いながら、リノは私の方をちらりと見る。
「既に、新しいお嫁さんがいたみたいね」
「あ……えっと。なんか、すみません」
「謝ることないわよ。これで、やっと私も吹っ切ることができたから」
リノはそう言うと、寂しそうに笑った。
吹っ切るって……残念ながら、私もアバターしか見てもらえてませんよ。
……それにしても、冷静に考えると変な光景だ。
一見、修羅場なのに当のルディアスはどちらにも(中身には)興味ないという……。
彼が見てるのは私たちのアバターだけ。ああ、何だろう……この妙な敗北感。
しかもルディアスは、なんか退屈そうに腕を組みながら壁に背を預けて、空を仰いでるし。
まあ、どうせ今日放送する深夜アニメのことでも考えてるんだろうけど。
あるいは、今度発売するアトレイアのフィギュアのことについてかも知れない。
うん、あの顔は絶対そうだ……間違いない。安定のブレなさだ。
……って、最近は彼が考えていそうなことまでわかるようになってしまった。
まあ、そんなことはどうでもいいんだよ。
とにかく、貴方のことで二人とも悩んでるんですよって言いたい。
「話は終わったか?」
リノとの話が一区切りついた頃を見計らって、離れていたルディアスが戻ってきた。
こ、こいつ……! 本来なら自分も最後まで参加するべき話でしょうが!
大体の説明だけして、私たち二人が話し始めたら少し遠くに離れて行きやがりましたよ。
「ええ、終わったわよ」
「それで、どうするんだ? 復帰するのか?」
「考え中よ。ねえ、もし暇なら……久しぶりに一緒にダンジョンに行かない? あ、もちろんユリアさんも一緒に」
そう提案して、にっこりと微笑むリノ。
「別に、構わないが……ユリアは?」
「私、どっちかっていうとまだ初心者なので、足引っ張ることになりますけど……」
「大丈夫よ。しっかり援護するから」
「は、はい……」
リノに誘われて、成り行きでダンジョンに行くことになってしまった。
というか、元嫁と現嫁を引き連れてダンジョンに行くとか、普通に気まずすぎるでしょ……。
全く気にしないところが、流石ルディアスだよね……。
リノのジョブはアーククレリック。引退宣言して来なくなる前は、ヒーラーとして活躍していたらしい。
ルディアスについていけるくらいだから、結構キャラ育ててたのかな。
なんか色々と不安だけど、もう返事しちゃったから行くしかないかぁ……。
彼女は目に涙を浮かべ、恍惚とした表情で彼を見上げている。それを見て、私は胸がチクリと痛んだ。
なんで……? なんでそんなに親しそうなの……?
「ルディ……私、ずっと会いたかった……」
「……何故、ここにいる?」
嬉しそうなリノに対して、ルディアスは強張った表情でそう言った。
その様子から、何となく会いたくない相手なんだろうなぁということは想像できた。
「ルディアス……これは一体、どういうことなんですか? 説明してほしいんですけど?」
私は咳払いを一つして、彼を睨みながらそう言った。
一体、誰なんだろう? とりあえずこのリノって人は、雰囲気から察するにリアル女性っぽいけど……三次元に興味がないルディアスに限って、嫁(ユリア)を裏切ってまで浮気するなんてありえないだろうし……。
「……元嫁だ」
「元嫁!?」
ああ、なるほど……何度かゲーム内で結婚してるのは知っていたけど、ネカマばかりだと思ってた。
でも、こんなに熱い眼差しでルディアスを見つめているくらいだから、たぶん中身は女性だよね……。
「あのー……詳しく聞かせてもらえませんか?」
とりあえず、広場の隅に移動する私たち。
私が不機嫌な態度を全面に出して説明を求めると、ルディアスはようやく口を割った。
どうやらリノという人は『星彩の騎士団』の元ギルドメンバーで、一年程前にゲーム内で結婚していた相手らしい。
でもある時、急にゲームの引退を宣言して、ギルドも自分から脱退していったのだとか。
そして、私とシオンの他にルディアスの本性を知る人物でもある……という話だった。
そんな彼女が突然ゲームに復帰したのだから、驚くのも無理はない。
「大体の事情はわかりましたけど……」
自分で言ってて思った……なんか今、私すごい嫁ヅラしてるよね。
いや、実際に嫁だからいいんだろうけど、彼が好きなのはアバターの方だし私が出張るのは何か違う気もする……。
「『なんで引退宣言なんかしたの?』って聞きたそうな顔してるわね」
突然、リノが私に向かってそう言った。
「……ルディに振られたのよ。私が勝手に本気になって、告白したら玉砕したってわけ。それで、自棄になって……ギルドを抜けて引退宣言したの」
「え……」
……先に実行してた人がいた。そして、見事玉砕かぁ……まあ、そうなりますよね。
でも、この人は彼が二次コンだってことは知らなそう。
「宣言しちゃった手前、もう二度と来ないつもりだったんだけど……またルディに会いたくなって、来ちゃったの。そしたら、会えた……運命だと思った。でも……」
そう言いながら、リノは私の方をちらりと見る。
「既に、新しいお嫁さんがいたみたいね」
「あ……えっと。なんか、すみません」
「謝ることないわよ。これで、やっと私も吹っ切ることができたから」
リノはそう言うと、寂しそうに笑った。
吹っ切るって……残念ながら、私もアバターしか見てもらえてませんよ。
……それにしても、冷静に考えると変な光景だ。
一見、修羅場なのに当のルディアスはどちらにも(中身には)興味ないという……。
彼が見てるのは私たちのアバターだけ。ああ、何だろう……この妙な敗北感。
しかもルディアスは、なんか退屈そうに腕を組みながら壁に背を預けて、空を仰いでるし。
まあ、どうせ今日放送する深夜アニメのことでも考えてるんだろうけど。
あるいは、今度発売するアトレイアのフィギュアのことについてかも知れない。
うん、あの顔は絶対そうだ……間違いない。安定のブレなさだ。
……って、最近は彼が考えていそうなことまでわかるようになってしまった。
まあ、そんなことはどうでもいいんだよ。
とにかく、貴方のことで二人とも悩んでるんですよって言いたい。
「話は終わったか?」
リノとの話が一区切りついた頃を見計らって、離れていたルディアスが戻ってきた。
こ、こいつ……! 本来なら自分も最後まで参加するべき話でしょうが!
大体の説明だけして、私たち二人が話し始めたら少し遠くに離れて行きやがりましたよ。
「ええ、終わったわよ」
「それで、どうするんだ? 復帰するのか?」
「考え中よ。ねえ、もし暇なら……久しぶりに一緒にダンジョンに行かない? あ、もちろんユリアさんも一緒に」
そう提案して、にっこりと微笑むリノ。
「別に、構わないが……ユリアは?」
「私、どっちかっていうとまだ初心者なので、足引っ張ることになりますけど……」
「大丈夫よ。しっかり援護するから」
「は、はい……」
リノに誘われて、成り行きでダンジョンに行くことになってしまった。
というか、元嫁と現嫁を引き連れてダンジョンに行くとか、普通に気まずすぎるでしょ……。
全く気にしないところが、流石ルディアスだよね……。
リノのジョブはアーククレリック。引退宣言して来なくなる前は、ヒーラーとして活躍していたらしい。
ルディアスについていけるくらいだから、結構キャラ育ててたのかな。
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