女神と共に、相談を!

沢谷 暖日

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心音と共に、

告白をするために

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 心音は元の位置に戻る。私はちょっと冷静になれた。
 けど。さっきの心音の発言を思い出すと、すぐに心拍数が上がる。
 私、心音に寿命縮められてないかこれ。

 まぁ。それは一先ず置いといて。
 その時に、ふと思ったことがあった。
 心音と私は、これからどれほど一緒にいれるのかって。
 結婚はしたい。けど、それまでの過程が……。
 いや。待て待て。そもそも同性婚の問題があるだろ。
 じゃあ、結婚というより同棲になるのか。
 同性婚と同棲って似てる。全然違うのに。
 ──んな事今はどうでもよくて。
 心音とこれからどうなっていくのって問題についての方が深刻だ。
 これからもずっと一緒にいて、ずっと一緒に過ごしていくって考えでいいとは思うんだけど……。なんだか、それは現実味が薄い気がする。
 人の関係ってそんなに長く続くのかなって。
 お互いがお互い、ずっとこの人といたいって想いがあればいいのかな。
 こういうところは難しい問題点である。
 今、考えるべきことではないのかも。
 けど……。どうしても考えがそこにいってしまう。
 心音はきっと、これからも私と一緒にいるって確信してるんだと思う。
 だとしたら心音は一途すぎる。心音に言いよる女なんて山ほどいるだろうに。
 まぁ心音は、はじめに好きになった人を好きになるタイプの人なのだろう。
 中学の頃、陸上やら色々頑張ってよかった。やっとそれが報われた気がする。
 私も。心音と一緒にいたいって気持ちを強く持つと決意する。
 そう思うことこそが、大事な気がするから。
 いや。その前に告白なんだけどね? さっきから考えているんだけどね?
 それをいつ実行するべきかが重要だった。
 いつでもいいとは思うが、なるべく早めがいいだろう。
 なら、告白すべきは今日? 今日なんですか?
 んー。じゃあ、今日のいつ? どのタイミングで告白すべき? むっず。
 軽く見積もって、目の前の数学の課題の百倍は難しいかもしれない。

 もう一度冷静になろう。うん。
 告白の文句だ。それを考えよう。
 あの日、遊園地に行った日。私が返事を保留したのは、まだ心音のことをよく知らないから。
 だから「心音のことを凄く知れたので、付き合ってください」でどうだろう。
 ……んー? これは微妙か? ……微妙だよな。
 ……じゃあ、ベタベタだけど「好きです。付き合ってください」かな?
 いやでも。私にこんなことを言う勇気があるのかと言われてみると。

「……ないな。うん」

 ……ないけど、絶対言わないといけない。
 心音からもう一回告白されるという考えは多分甘えだろう。
 だからここは私から言うしかない。
 うーん。どうしようか。
 ラインで伝えてみる?
 けど、ラインで告白し合って付き合ったカップルって別れやすいって聞いたことあるな。ネット情報だけど。怖いからラインでの告白は無し。
 やっぱりこういうのは勢いだよ。勢い。
 『ここねー! 付き合ってくれー!』みたいな。
 心音はきっとOKを出してくれるはず……って、これも甘え?
 いやでも振られちゃったら、もう一生物のトラウマになりかねない。
 いやいやいやいや。そこの心配はしないでいい。と思う。
 じゃあ。勢い作戦でいってみる?
 いつしようか。……今?
 今は、ムード的な問題でダメ?
 ……ムードってそもそも何。
 海辺に連れて行って、おしゃれな音楽流して……みたいな?
 そもそも近くに海ないじゃん。

「……」

 なんだこの私の思考。
 ほどいた一つの思考の糸が、また別の糸と絡み合って、それがずっと続いてしまっている感じだ。
 ちょっと告白の予行練習みたいなのしてみるか……。

 私はゴクリと唾を飲み込む。
 予行練習というのは、ただ心音の名前を呼んでみるだけだけど。
 私は深呼吸をして、課題に集中しきっている心音に声を飛ばした。

「こ、心音!」

 手の動きを止めた心音は少し遅れてその美麗な顔を上げる。
 いつも思うが、心音は真顔だ。
 この顔に告白をしても、いい返事は返ってこなさそうな気がする。
 やっぱり告白なんてねぇ……。難しいよ。

「……」

 私的にはここで終わりのはずだったが、心音は顔を下げない。
 当たり前だが、用件を待っているようだった。
 何を言えばいいかと迷って。
 ここで告白するべきか? と思ったが、その提案はすぐに打ち消される。
 それでも何も思いつかないから。

「心音さんっていい人だよね~!」

 そんな本当に脈絡もないことを言ってしまった。
 ……バカだ。恋愛脳とは今の私のことを指すのだろう。
 もう反射的に、私は下を向く。
 私は恥ずかしくなったら直ぐに下を向いてしまう癖があるらしい。
 訳分からないことを言ったのに、それでも心音はこっちに気配を寄せてきた。
 視界の隅に映るのは、さっきも見た心音のハイハイ姿。
 ハイハイから姿を変えて、私の耳元に顔が近付いた。

「伊奈さんの方がいい人ですよー」

 それだけ囁き、私の元を直ぐに離れる。
 たったこれだけを伝えるために。

 ……うわー。好き。
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