完全犯罪

みかげなち

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5・日常陥落

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「旭って後ろからするのがいいの? その方が征服感あるとか?」
 居室にいる時はベッドの上で布団にくるまっている蒼葉は暇のついでに問いかけた。本を読んでいた旭は虚を突かれたのか、咳き込んでゆっくり本を閉じると蒼葉を振り返った。
「……随分唐突に訊くね……」
「だって、他の体位でしないじゃん」
 青葉が思ったままのことを言うと、旭は頭を抱えたようだった。
「蒼葉。ぼくを勘違いさせそうなことを言うのはやめた方がいいよ」
「勘違いしてるのは旭の方じゃないの? あんたまだ俺を手なずけ終わってないと思ってんの?」
「蒼葉。駄目だよ」
「なに言ってんの。旭がそうしたかったんだろ」
 確かに蒼葉の感覚は麻痺してきていた。
 拘束された生活にも監禁自体にも慣れてしまって、セックスも屈辱を快感が上回ってもう犯されているという認識がない。液体で食事をすることも、昼間に腹を下してトイレにこもることも毎日続ければそのうち適応してしまう。異常な日常生活が蒼葉には普通になってしまった。
 旭が蒼葉を求めて始めた拘束監禁生活だ。蒼葉には旭を拒絶しなくなった自分が駄目と言われることの方が疑問になってしまう。
 閉じた本を机に戻した旭は椅子から蒼葉の座るベッドまで移動して隣に腰を下ろした。
「そうだよ、蒼葉。でも、自分の置かれている状況も忘れないで」
 隣に座った旭が蒼葉の拘束した両手首を持ち上げた。じゃらりと鎖の金属音がするけれど、その音はもう蒼葉に付き纏う効果音でしかない。
「知ってる。旭はこれを外したら俺が逃げると思ってるんだ」
 青葉はぽつりと呟いた。
 旭は元々、蒼葉にセックス以外の屈辱を与えていない。食事も排泄も風呂も問題ない生活の中でセックスだけが屈辱的で苦痛だった。そのセックスが屈辱ではなくなったいま、蒼葉に拘束も監禁の意味も必要ないが、彼は蒼葉の気持ちなど信じないだろう。
 確かに蒼葉自身も驚いている。同性愛者ではないと思っていた自分が、旭相手に快楽に溺れて気持ちが傾いてしまっているのだから。けれど、蒼葉は自分の気持ちの変化を素直に受け止めた。それは旭に求められていると元から知っていたからでもある。
「なに、旭。イカれたふりしきれなかった? それとも俺が落ちたから日和った? イカれたことはじめたのあんただろ。最後まで突き通せよ。責任持てよ」
「蒼葉」
「あんたが俺を好きって言って拘束して監禁して犯しまくったんだろ!」
 今更まともらしいことを言う旭を両手で突き飛ばして、蒼葉は声を荒げた。
「俺があんたを好きになったらもう興味なしかよ。なんかの実験? 変だと思ってたんだ」
 思い切り突き飛ばした腕をだらりと下げて蒼葉は旭を見ずに呟いた。挑発して荒ぶった声が振り幅の大きな振り子のように消沈する。繰り返す屈辱を快楽に変えて、感情さえもひっくり返されて、それでもまだ異常な好意が残っているなら蒼葉はいいと思っていた。
 しかし、その全てが蒼葉を弄ぶためだけであって旭の行動の全てが何らかの記録を取るための演技なら、きっともうなにも信用できるものなどない。
「蒼葉、落ち着いて。ぼくはずっと蒼葉が好きだよ。......びっくりしただけなんだ。躰を気持ちよくすることは、案外簡単にできる。でも、気持ちはそうじゃないから」
 突き飛ばされて倒れていた旭がゆっくりと起き上がって俯く蒼葉を撫でてから、そっと引き寄せて抱いた。
「もう一回聞かせてくれるかな、蒼葉」
「好きだって言ってんだろ」
 ぶっきらぼうな口調で蒼葉が返事すると、抱き締める腕が強くなって蒼葉が被っていた布団が背中から落ちた。
 抱き締めてくる腕が、いままでとなにか違う気がする。俯いた顔を上げて触れるキスが違う気がする。そんなことをぼんやり考えながら蒼葉は口の中を撫でる舌に舌を絡めた。舌を絡めていると、喉の奥まで撫でられなくて苦しくない。唾液を混ぜ合って遊んでいるだけと変わらずに、気持ちがほんのりと興奮する。思考がとろりと溶けていく。倒錯した幸福感さえ感じる。
「旭、しよ」
「うん」
 青葉から誘うと、旭は嬉しそうに抱いて蒼葉の首筋にキスをした。長いこと離れないキスは、ほんのり吸われている感覚がして赤く跡が残ると蒼葉は気付く。旭はいままで跡を残すようなことをしなかった。いままでの旭とやっぱりなにかが違う。
「蒼葉、両手上に上げてて」
 拘束された両手首を首の後ろに回して、旭は念を押した。今更なにか反抗する気もなく、蒼葉はただ頷く。上半身を隠すものが何もなくなってベッドに倒されると、蒼葉は旭の手のひらに躰をゆるりと撫でられた。首筋から鎖骨。胸筋、腹筋、脇腹。じれったいくらいにゆっくりと撫でる手のひらに蒼葉は時々声を零す。
「蒼葉の躰、全部、ぼくに触れられたら感じて欲しくなるようにしちゃいたいな」
 ふふ、と笑いながら蒼葉の躰を丁寧に撫でる旭の言葉は、やはりどこか常識を逸脱している。
「すればいいじゃん」
 旭の手のひらに躰を撫でられて震える蒼葉は、その言葉を異常だと思いながら否定しない。
「全部気持ちよくなるようにして、俺を縛り付ければいい」
「蒼葉がいいなら本当にしちゃうよ」
「いいって言ってんのに」
 旭の指先が乳首を弾いて吐息を零しながら蒼葉は返事した。
 青葉は微塵も自分の気持ちを自棄だとは思っていない。恋人に去られた自暴自棄でも、拘束監禁されて快楽に溺れた末の気の迷いだとも思っていない。
 単純に、何日経過したのかもわからないけれど毎日ほとんどの時間を旭とだけ過ごして外界から遮断され、向き合う相手が旭しかいなく、セックス以外に無理を強いることのない旭に気持ちが傾いた。拘束して監禁すること以外に好意を示せなかった旭を多少憐れんでいたかもしれない。
 拘束も監禁からももう逃げ出す気はない。自由がなくても構わない。旭がまだ望むものがあるなら、好きにすればいいと思うだけだ。
「旭。あんたのしたいようにしていいよ。でも、俺にもさせて」
「そうだね」
 一方的に犯されるのではないからと蒼葉が言うと、旭は少し笑った。
 弾かれた側の乳首を指先で可愛がられて、逆側は舌で舐め上げられて吸われて時々歯が立てられる。キスもろくにしないで、躰もろくに触らず、口と尻を穴のように使うだけで本当にただ性欲処理の道具にされていたと蒼葉は思い込んでいた。けれど、直腸を解されるのに快感を覚えてからは少し変わってきた。犯されているよりセックスに感覚が近くなっている。
 もう蒼葉は嘔吐しない。喉の奥に陰茎を押し込まれても、苦しいと思うけれどそこに薄暗い快感がある。行為のあとに汚れを舐めることも躊躇しない。散々、何度も達したあと旭の精液にまみれた陰茎を舐めていると彼の興奮を味わっているような気にさえなる。
 それでも必要以上に躰に愛撫を施されていなかった分、蒼葉の躰は敏感になる。触れられなかった場所に丁寧な愛撫をされると、躰が震えてじんわりと熱くなる。
「……きもちいい……噛まれるの、いい」
「痛くないの」
「痛いのも苦しいのも、気持ちいい。あんたがそういう風にしたんだ……」
「そうだね」
 乳首に息が触れて躰を震わせる蒼葉の答えに、旭はほんのりと笑った。
 指先でこね回されていた方の乳首が摘まれて引っ張られると、蒼葉はあられもない声を上げる。小さな先端を強く摘んで引っ張られると痺れるような快感が背筋を走る。痛いよりも快感の方がずっと強い。息が詰まって引っ張った先の指が滑って解放されると、蒼葉はひくひくと震えて声を零しながら呼吸を乱した。
「は、あ……あ」
「蒼葉。可愛い。痛いのにすぐ気持ちいい顔になっちゃうんだ。乳首、大きくなって腫れてるよ」
「いいよ。気持ちいいから……」
「もっとしてほしい?」
「うん」
「たくさん気持ちいい顔、見せて。痛い顔も苦しい顔も全部見せて気持ちよくなって」
 乳首を舌で遊んでいた顔を上げて旭は深い深い色の目で蒼葉を覗き込んで、頬と首筋ににキスを落とした。
 摘んで引っ張られた乳首はまた指先に強くこね回されて、蒼葉は濡れた声をいくつも零す。潰されそうに強く摘まれて痛いのに、その奥が気持ちいい。強く潰されて、引っ張られると快感が増す。躰は快感を少しでも多く拾おうとして感覚を触れられている場所に集中させる。
 片側ばかり可愛がられていると、もう片側に歯を立てられた気持ちよさを思い出して欲が出る。
「旭……もう片っぽ、噛んで」
「いいよ」
 首筋にいくつもキスをしていた旭は蒼葉の願いを聞いて背中を抱きながら顔を下ろして、留守の乳首に舌を這わせる。蒼葉はそれだけでぞくりとした快感を感じて躰を縮めた。がり、と容赦なく乳首に歯が立つと思った以上の痛みに蒼葉は呻き声を上げた。甘噛みではなく、本気で噛まれた。小さな部分に鋭い痛みが走る。
「うっ……」
 眉根が寄って蒼葉の顔に苦痛が滲む。それでも旭は力を緩めようとしない。片側の乳首を指で潰しながら、噛んだ乳首をそのまま引っ張る。
「うあぁっ……! あ、ああっ」
 短い悲鳴のあとは声が明らかに蕩けていった。蒼葉は躰を縮めて全身を小さく震わせる。乳首に感じる快感など初めてで、潰され、噛まれ、引っ張られて痛みを与えられているのに気持ちよくなってしまう。指が、歯が離れるとじんじんとした痛みが残って、快感の余韻が長い。まだ触れられていないのに、陰茎が反応しているのがわかる。
「蒼葉、乳首、気持ちいい?」
「うん。いい」
「もっと欲しい?」
「欲しい」
 素直に欲望のまま答えると、旭は嬉しそうに笑って蒼葉の頬を撫でた。
「蒼葉の声、もっと聞かせて」
 そう言ったかと思うと蒼葉の躰は起こされて、壁を背にした旭に後ろから抱かれた。頭上に上げた両手を下ろされてすっぽりと旭の腕に収まると、なぜか蒼葉はほっとした。そんなことを自覚する間もなく、後ろから回った旭の両手が乳首を撫でてきつく摘まみ上げる。摘まれたまま、両方の乳首を指で潰すようにこねられて、びくりと震えた蒼葉は乱れた息の合間に濡れた声を出す。
 じわじわと快感が溜まっていって、強くこねられるだけでは足りなくもっと強い刺激が欲しくなる。
「あさ、ひ……気持ちいい」
「うん。痛い顔しているのに気持ちよさそう。蒼葉。どうして欲しいか言って?」
「引っ張って」
「いい子だね、蒼葉」
 背中から抱く旭に躰を捩って強請ると、頭に頬を寄せられて撫でられた錯覚がした。旭の声は優しいが、責める手は容赦なく強く摘んだまま乳首を引っ張る。ぎりぎりまで引っ張って指が滑らないように膨れた乳首の根本を潰す。
「うぐっ……う、ううっ……」
 強張った躰で蒼葉は呻き声をだす。小さな根本を潰されそうに摘まれて無理に引っ張られて痛くて涙が滲みそうになる。なのに、気持ちよくて離してしまわないで欲しい。達するぎりぎりの時の葛藤に似ている。
「もっと、して」
「欲張りだね、蒼葉」
 ふと旭の声が耳に触れて、引っ張った乳首の根本を摘んだ指先が強いままそこをこねた。痛みと快楽が混ざって蒼葉はめちゃくちゃな声をいくつも上げる。腹に生温いものが滴る感触がしたが、初めて与えられる気持ちよさに翻弄されて蒼葉にはどうでもよかった。
「あっ……きもちいい……! いいっ……うっ、うあぁ……痛いの、もっとちょうだい……」
 引っ張られた乳首の根元を潰されてこねられて、蒼葉は快感に身を捩る。痛みが快感になる異常さを自覚しない。危ない行為だとも自覚しない。
 強く引っ張られて両乳首が強く摘まれたまま力任せに更に引っ張られて、指が離れると蒼葉はぜいぜいと息をして旭にぐったりと躰を預けた。胸の痛みがまだ快感になって痺れて残っていて、膨れた乳首を指先で撫でられるだけで大きく震えて感じてしまう。
「蒼葉、もしかして乳首でイケそう?」
 耳元で囁かれて、蒼葉は快感に震えた。低くて穏やかな声だけをずっと聞いている。それ以外の人の声など忘れてしまいそうだ。
 ぐったりと躰を預けたまま、蒼葉は頷いた。本当に達するかどうかは判断つかないが、気持ちよくてまだ欲しいことは間違いない。
「じゃあ、乳首だけで気持ちよくなって見せて」
 強く指先で膨れた乳首を弾かれてくぐもった呻き声を上げて、蒼葉は躰を無防備に預けたまま「……うん……」と蕩けた返事をする。
 ぷっくりと膨れた両乳首はいろいろな角度から潰されて、引っ張られて先端や根本をこね回される。その度に痛みに呻く声はすぐに蕩けていく。執拗に与えられる痛みに快感が蓄積して躰が強張り、固くなる。声の間隔が短くなって、緊張しすぎた躰は震えて、強い痛みと共に乳首を解放される度にびくびくと大きく痙攣する。それが気持ちよくて、口が勝手に「もっとして、いっぱいして」と強欲に強請った。
「すごく……きもちいい……イキそうだから」
「可愛いね、蒼葉。触ってないのに先走りでびしょびしょだよ」
「そっち、触んなくてもいい」
「うん。ここが気持ちいいんだもんね」
 息切れしながら蒼葉が訴えると、後ろから旭が囁いてくる。躰を預けてしまっているから、蒼葉は快感だけを貪るように受け取って支配される。
 敏感になった膨れた乳首の先端をゆるゆると撫でられるだけで震えが走って、吐息が漏れる。たっぷりと乳首を撫でられて焦らされると、片側をまず摘まれて潰された。鋭い痛みに短い声が上がって、すぐに恍惚とした溜息になる。蓄積された快感が増す。もう片方も同じようにされて、痛みに呻きながら蒼葉は震えながら身をよじって躰を旭に寄せた。
 じっとそのままされているだけでも蓄積した快感が溢れてしまいそうなのに、強く潰された乳首が片方ずつ捩じられて、知らない痛みが増す。
「う、ぐ、あぁっ……」
 ぎゅっと眉根を寄せて蒼葉は新しい痛みに呻く。びくりと大きく躰が痙攣した。短い声をいくつも上げていると、そのまま両方の乳首がぎりぎりと引っ張られて千切られるのではないかと思う。なのに、気持ちよくて今にも達しそうだ。
 は、は、と短い息を繰り返して蒼葉は「あさひ」と呼んで顔を上げた。蒼葉が顔を上げると旭は後ろからキスを落として、限界まで潰して捩じった乳首をぎりぎりに引っ張ってしばらくそのままにしてたかと思うと、強く潰したまま強引に指が滑るまま解放した。キスで口が塞がれていて蒼葉はくぐもった声しか上げられない。けれど、体が激しく痙攣して達したことを旭に伝えた。

 正上位で挿入されると、初めてセックスの最中の旭の顔が見えて蒼葉は不思議に思った。何度もしているのに、最中の顔を見るのは初めてだ。快楽に溺れながら、そんなことを考える。嬉しそうに蒼葉を見て、幸福そうにキスを落とす。そんな顔をもっと見せていればきっと蒼葉は早く陥落したかもしれない。
「旭、ちょっと俺の好きにさせて」
 とろりと蕩けそうに気持ちいいまま、蒼葉は手を伸ばして旭の頬を撫でた。なにもかも一方的にされるばかりで、蒼葉が旭を撫でることも初めてだった。旭も少し驚いた顔を見せたが、穏やかに「いいよ」と返事した。
「起こして」
 手を伸ばしたまま蒼葉は言うと、繋がったまま旭は蒼葉の躰を起こした。
 拘束された両手を旭の首にかけると、蒼葉は腰を動かして体勢を探る。少しだけ膝を立てた方が深くて奥まで届くことに気付いて腰を押し付けた。ぴったりと抱き付くと浅くなってしまうから、深くなるように腰は逸らして上半身だけ旭を引き寄せて蒼葉は深い息をついて落ち着いた。
「このまま、しばらく好きにさせろよ」
「腰、支えてようか」
「うん」
 挿入の前に指で慣らされて何度も達して、挿入しているだけでも全部もう気持ちいい。旭に好きに動かれていても、蒼葉は快感を感じて旭が達するまでに何度も達している。けれど、腹の中に穿たれたものの存在感を確かめたことはないから、したかった。
 旭の陰茎を根元まで咥え込んで、直腸の深くに穿たれている。奥の深いところがそれだけでじんわりと気持ちいい。ゆるりと腰を揺らしてみると快感が広がって溢れそうになる。旭の肩に頭を押し付けて、ゆっくりと腰を揺らして深いところに快感を貪る。濡れた声が零れて、押し付ける腰が深くを求めて中で簡単に達してしまう。
 ゆるく深く躰を揺らしているだけなのに、深くまで気持ちよくて足先から震えが上ってきて短い喘ぎ声が止まらなくなる。
「旭……イクっ」
「うん。いいよ。いっぱいイッて」
 青葉の耳元で旭が囁いて腰を支えるだけだった手が強くなって、繋がりが深くなったような気がした。びくりと大きく躰が痙攣して、ひとつ波が来た。達した。けれど、その後も何度も躰が大きく痙攣してその度に蒼葉は達した。動いていない。深いところで奥を押し付けているだけなのに、躰がいうことをきかずに、勝手に痙攣して直腸が旭を強く締め付ける度に蒼葉は達する。
「あっ……あ……と、止まんな、い……」
「いっぱい気持ちいいね、蒼葉」
 戸惑いの声を上げているのに、旭の片手が蒼葉をゆるりと撫でてまた痙攣して達した。全身がおかしくなったように続く絶頂に蒼葉はろくに息ができない。旭の手のひらが頭を背中を撫でるだけでも達した。
 どれだけ時間が経ったのかわからない頃にようやく蒼葉は落ち着いて弛緩した躰はベッドに崩れた。まだ呼吸が整っていなくて張り付くように痛い。両手を回されたまま旭が蒼葉に被さってキスをされると、喉が潤った。
「蒼葉、自分で中の気持ちいいとこでたくさんイッて可愛い。奥でじっとしてるのそんなに良かった?」
「……おかしくなるかと、思った……」
「なってもいいのに」
 切れ切れの掠れた声でまだ困惑したまま蒼葉は言うけれど、旭は蒼葉の乳首を舐めて笑う。敏感なままの乳首を舐められるだけで蒼葉は震えて腹に力が入って旭を締め上げてしまう。
「蒼葉が気持ちいいとぼくも気持ちいいんだよ」
「じゃあ、もっとして」
 両手を旭の首に回したままベッドに倒れた蒼葉は薄く笑った。昨日までのセックスと全然違う。蒼葉が達していたのは変わらないけれど、一方的ではない。それだけで蒼葉はこのあとがどうなってもいいと思う。
 初めて乳首だけで達してぷっくり膨らんだままの場所に歯が立つ。ぎり、と噛まれて痛みが走ると腹に力が入る。中に穿たれているものがはっきりと存在を主張して痛いのに気持ちいい。噛まれたまま、引き千切るように乳首を引っ張られると、腹の中だけでなくて乳首に痛い快感が残る。呻き声なのか喘ぎ声なのかわからない声がひたすらに零れる。
「……蒼葉、すごくえっちな顔してるよ。痛くて気持ちよくていい顔、もっと見せて。ぼく、我慢できなくなる」
「我慢すんなよ」
 掠れた声で蒼葉が笑うと、旭は首にかけた蒼葉の腕を外して正上位に戻って腰を深く落とす。挿入の角度が少し変わっただけで蒼葉は声を上げるのに、上半身が自由になった旭は腰を深く落としたまま片手で蒼葉の乳首をひねり上げる。
「う、ぐ……っ」
 摘んで潰されるよりも、ひねり上げられる方が痛い。そして快感が強い。ひねられたまま乳首をこね回されて、痛くて気持ちよくて腹が中を締め上げてしまうのに、旭はそのまま腰を動かして蒼葉を溺れさせる。
 連続で達したばかりの蒼葉には刺激が強すぎる。腹は描き回される度に達して、乳首は痛みが麻痺する寸前に解放されて残る痛みと快感を何度も繰り返される。喘ぎ声と呻き声の合間に蒼葉は朦朧と旭を呼ぶ。
「蒼葉。今日が一番可愛いよ」
 そんな言葉を聞いたかと思うと、片側だけひねり上げて痛めつけていた指がぱちんと離れて奥の深い深いところを突かれて、旭が達した。ぎゅうぎゅうに中を締め付ける蒼葉に旭の脈動が伝わる錯覚がする。
 深くにたっぷりと吐精して余韻を楽しんだ後、旭が蒼葉から陰茎を抜くと、蒼葉は疲れ果てた躰を起こして旭を捉えた。両手を拘束されていて、旭の片手を掴んで引き留めるとそのまま顔を下ろしてまだ萎えていない精液に塗れた陰茎に舌を這わす。殊更丁寧に精液を舐めとって、深く咥え込んで舌で撫でまわした。
「蒼葉。しなくてもいいよ」
 頭上から旭の声が聞こえたけれど、蒼葉は聞かなかったことにした。陰茎を更に深く咥えて、喉の奥まで届いた感覚を確かめて、深くを離さないようにしてゆっくりと扱きながら舌で愛撫する。蒼葉の舌に、陰茎が硬さを戻していく感覚が伝わる。
 時々呻き声を零しながら、蒼葉は喉を塞がれる苦しさに涙を滲ませてうっとりと愛撫を施す。蒼葉の舌使いがうまいかどうかなどはわからないが、喉まで咥えた陰茎は口の中で確かに反応している。唾液を飲み込めなくて、浅く引いて時々唾液を零しながら再び咥え込んで飲みきれない唾液にぐちゃぐちゃと水音を立てながら舌と喉で深くまで施す愛撫は苦しいけれど、口より奥を擦ると躰が震える。自分ではそれ以上に深いところまではできない。苦しさの方がまだ怖い。
「蒼葉。そんなにしたらイッちゃうから、離して」
「やだ。イケよ」
 口の端を唾液で汚して、蒼葉は一度口を離すと旭の言葉を拒否してまた深く咥えた。旭を引き留めていた手を自分の頭に触れるように導いて、喉まで飲み込む。ごぼ、と口の中で唾液が音を立てて陰茎が喉を塞ぐ。
「……じゃあ、イクね。蒼葉。全部飲んで」
 頭を押さえられて蒼葉は頷いた。ほっとした。
 頭ごと旭に強く押さえつけられて、蒼葉は自分では咥えられない喉の奥まで陰茎を咥え込んで小さいけれど早い動きで喉で扱く。ぐちゃぐちゃな水音が激しくなって苦しくて気持ちいい。呼吸ができなくて唾液に溺れそうだけど、いい。
「蒼葉。気持ちいい。上手にできてるね。いい子。とってもいい子。奥にあげるから全部飲んで」
 腰を震わせた旭は更に蒼葉の頭を腰に押さえつける。喉奥を突かれるくらいに深くまで咥え込んで、眩暈がする。なにも考えられなくなるくらい頭が真っ白なまま、唾液を零して蒼葉が喉奥までいっぱいに陰茎を咥えてぐちゃぐちゃな愛撫をしていると、旭の頭を押さえる手が強くなって身動きが取れなくなると同時に、喉奥に射精された。
 口の中ではなく喉に射精されると、嚥下をコントロールできない。ただ、注ぎ込まれる。強制的に注がれる精液は喉まで咥え込んでいるせいで溺れてしまいそうな苦しさがある。ひくひくと震えながら蒼葉が注がれた精液を全部飲むと、ゆっくりと陰茎が引き抜かれた。口の中に残った唾液が引き抜かれると同時に溢れて滴る。
 頭を撫でられながら蒼葉はうっとりとした顔をして、下半身を少し反応させていた。
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