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第二章 『厄介な日常』
こんなに仲悪かったっけ?
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さて、小熊さんの誕生日プレゼントを選んでいた我々だが最終的に、あるものを購入した。
「いや~、奮発したねぇ」
「まあ、小遣いが少ないわりに大分出したからな。ただ、喜んでもらえるのは確かなんじゃないか? このスポーツシューズ」
「小熊さんの好きな色知らないから、シンプルな白だけどな」
「変にカラフルな物よりはよっぽど良いだろ。僕だって喜ぶぞ、これなら」
ちょっぴり高かった靴の眠る袋を握り締め、彼女が喜ぶ姿を想像する。
小熊さんがたくさん運動をするタイプかどうかなのかは分からないけれど、得意なのは確かだし、靴なら邪魔になることも無いと思い購入したスポーツシューズ。
女の子へのプレゼントは初めてじゃないけれど、やっぱり選ぶ度にドキドキワクワクが止まらない。
○ ○ ○
「楽しみだな~、愛ちゃん家。どんな感じだろう」
「別に大したこと無いわよ、あの家。我が家と変わんないわ。それより冷房効きすぎて体冷えたりしてないわね? 多田さん」
「うん、大丈夫だよ。というか2人の家に大差がないのは当然でしょ」
最近話題に挙がらなかったが、加納院メイもまた愛ちゃんと同規模の金持ちである。
忘れがちな情報だなぁ。
「まあそうね。でも私の家の方が綺麗よ。家具の色全部白で統一してるから」
「へぇ。掃除してないと目立ちそうだね」
「清掃員がいるから大丈夫よ。……それにしても、私があの女の誕生日会に足を運ぶ事になるとは。正直、私の中では38%の確率だったわ」
「び、微妙な数値だね」
そういえば、百分率で表すのが好きだったっけ。
(あれ、なんでこんな加納院さんのこと忘れてたんだろう。うっかりしてたなぁ)
小熊さんを「あの女」呼ばわりする加納院さんだけど、実際そこまで嫌っていないみたいだ。彼女のバッグから少しだけ顔を出す謎の包装紙から、その事実は伺える。
ちなみに小熊さん本人は現在愛ちゃん宅で先輩使用人方から教育を受けている。しかしこれはパーティーの準備が進められている大広間へ誤ってでも足を踏み入れることを避けるためだ。
「ちょっとメイさ~ん? 晃狩さんに近付き過ぎじゃないですか? 距離感考えて下さいっ」
「何言ってるの愛。これは別に変な気持ちがあっての行為じゃあないわ。ただ、車内が冷えてるからお腹壊したりするかもしれないでしょ?」
「屁理屈ですよ! 強い冷房は弱めればいいだけじゃないですか!」
俺を挟んで険悪な雰囲気になる2人。
(この後誕生日会やるのに、これで大丈夫かな~?)
「まさに両手に花だな、多田」
こういう状況で、香山がからかってこない確率は0%。
他人というか俺が困るといつも高みでケラケラと嘲笑ってくるのである。慣れっこだから腹は立たないが、嬉しくもない。
「うるさいな~」
「皆様、到着致しました」
(やっとだ!)
喜びのあまり車から急いで飛び出す。──というのは真ん中の席では不可能なので、愛ちゃんに続いてゆっくりと出る。
「ここが駐車場かぁ。広い」
「何百台イケるんだ? この場所は」
素朴な疑問を口にする香山に、愛ちゃんは笑顔で回答する。
「ええと、大体580台ほどかと。お客様用が殆どですね。我が家はあまり台数無いので」
「へぇ、貧しいのね」
カチンッ。
「受け取り方が捻くれてますね。神田家は無駄な出費をしない、だから台数が少ないのです。1台に深く長く愛を注ぐ、それが私達のスローガンです」
「まずその考え方から貧乏なのよねぇ。あるものは使っちゃって良いじゃない」
「裕福であるからといって、図に乗ってはいけませんよ。いつか痛い目を見ますから」
「そんな未来、あって5%程度よ」
また始まった……。
「そんなものアナタの独断じゃないですか。なんの根拠も無いです」
「ねぇもうやめ──」
「それを言ったら愛の主張こそ、核心を突く言葉がないじゃない。迷信よ、め・い・し・ん!」
俺の台詞を聞く耳持たず……というより、両者とも全く周りが見えていないな。
「あの……運転手さん。会場まで案内していただけませんか?」
「え? あ、あぁ……。承知しました。少々お待ちくださいね」
「はい、分かりました」
運転手さんは愛ちゃん達を見てしっかり事情を察してくれた。
「お2人は、どう致しましょう」
「放っておいて良いんじゃないっスか? ここは神田さんの家なんだし、危険はないでしょう」
「そ、そうですね。では参りましょうか」
とりあえず、あの空気を会場まで持ってこなければもう何でもいいや。
「いや~、奮発したねぇ」
「まあ、小遣いが少ないわりに大分出したからな。ただ、喜んでもらえるのは確かなんじゃないか? このスポーツシューズ」
「小熊さんの好きな色知らないから、シンプルな白だけどな」
「変にカラフルな物よりはよっぽど良いだろ。僕だって喜ぶぞ、これなら」
ちょっぴり高かった靴の眠る袋を握り締め、彼女が喜ぶ姿を想像する。
小熊さんがたくさん運動をするタイプかどうかなのかは分からないけれど、得意なのは確かだし、靴なら邪魔になることも無いと思い購入したスポーツシューズ。
女の子へのプレゼントは初めてじゃないけれど、やっぱり選ぶ度にドキドキワクワクが止まらない。
○ ○ ○
「楽しみだな~、愛ちゃん家。どんな感じだろう」
「別に大したこと無いわよ、あの家。我が家と変わんないわ。それより冷房効きすぎて体冷えたりしてないわね? 多田さん」
「うん、大丈夫だよ。というか2人の家に大差がないのは当然でしょ」
最近話題に挙がらなかったが、加納院メイもまた愛ちゃんと同規模の金持ちである。
忘れがちな情報だなぁ。
「まあそうね。でも私の家の方が綺麗よ。家具の色全部白で統一してるから」
「へぇ。掃除してないと目立ちそうだね」
「清掃員がいるから大丈夫よ。……それにしても、私があの女の誕生日会に足を運ぶ事になるとは。正直、私の中では38%の確率だったわ」
「び、微妙な数値だね」
そういえば、百分率で表すのが好きだったっけ。
(あれ、なんでこんな加納院さんのこと忘れてたんだろう。うっかりしてたなぁ)
小熊さんを「あの女」呼ばわりする加納院さんだけど、実際そこまで嫌っていないみたいだ。彼女のバッグから少しだけ顔を出す謎の包装紙から、その事実は伺える。
ちなみに小熊さん本人は現在愛ちゃん宅で先輩使用人方から教育を受けている。しかしこれはパーティーの準備が進められている大広間へ誤ってでも足を踏み入れることを避けるためだ。
「ちょっとメイさ~ん? 晃狩さんに近付き過ぎじゃないですか? 距離感考えて下さいっ」
「何言ってるの愛。これは別に変な気持ちがあっての行為じゃあないわ。ただ、車内が冷えてるからお腹壊したりするかもしれないでしょ?」
「屁理屈ですよ! 強い冷房は弱めればいいだけじゃないですか!」
俺を挟んで険悪な雰囲気になる2人。
(この後誕生日会やるのに、これで大丈夫かな~?)
「まさに両手に花だな、多田」
こういう状況で、香山がからかってこない確率は0%。
他人というか俺が困るといつも高みでケラケラと嘲笑ってくるのである。慣れっこだから腹は立たないが、嬉しくもない。
「うるさいな~」
「皆様、到着致しました」
(やっとだ!)
喜びのあまり車から急いで飛び出す。──というのは真ん中の席では不可能なので、愛ちゃんに続いてゆっくりと出る。
「ここが駐車場かぁ。広い」
「何百台イケるんだ? この場所は」
素朴な疑問を口にする香山に、愛ちゃんは笑顔で回答する。
「ええと、大体580台ほどかと。お客様用が殆どですね。我が家はあまり台数無いので」
「へぇ、貧しいのね」
カチンッ。
「受け取り方が捻くれてますね。神田家は無駄な出費をしない、だから台数が少ないのです。1台に深く長く愛を注ぐ、それが私達のスローガンです」
「まずその考え方から貧乏なのよねぇ。あるものは使っちゃって良いじゃない」
「裕福であるからといって、図に乗ってはいけませんよ。いつか痛い目を見ますから」
「そんな未来、あって5%程度よ」
また始まった……。
「そんなものアナタの独断じゃないですか。なんの根拠も無いです」
「ねぇもうやめ──」
「それを言ったら愛の主張こそ、核心を突く言葉がないじゃない。迷信よ、め・い・し・ん!」
俺の台詞を聞く耳持たず……というより、両者とも全く周りが見えていないな。
「あの……運転手さん。会場まで案内していただけませんか?」
「え? あ、あぁ……。承知しました。少々お待ちくださいね」
「はい、分かりました」
運転手さんは愛ちゃん達を見てしっかり事情を察してくれた。
「お2人は、どう致しましょう」
「放っておいて良いんじゃないっスか? ここは神田さんの家なんだし、危険はないでしょう」
「そ、そうですね。では参りましょうか」
とりあえず、あの空気を会場まで持ってこなければもう何でもいいや。
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