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第一章
いや、やっぱ無理
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「やっぱり、これは交際したということになってるのかな……」
机に突っ伏しながら、ポツリと呟いた。
というか彼──戸山君とかいったな──は、私の何を好きになったのだろうか。
私なんかに、魅力はあるのだろうか。
それを確認するために、机の端に置いてある鏡を近くに寄せて、自分の顔を見てみる。
(やっぱり、全然可愛くない)
恥ずかしながらも色々なポーズをしたけれど、鏡を覗いた結果は変わらない。
やがて、もしかしたらこれは嘘の告白かもしれないと思い始めるようになった。
今時の若者はよくやっていると聞く(姉からの知識)し、ああいうチャラチャラした連中なんて毎日のようにやっていそうではないか(偏見)。
むしろ、「あれは全て冗談でしたー!」と言われ、ドッキリ大成功と書かれた札を掲げられた方が納得がいくし、私からしたらありがたい。
だが、あの無邪気な子供のように純粋な瞳──あれが嘘には見えなかった。
……今時の若者は演技力も高いのだろうか? なら皆俳優かなんかになれば良いのに。
しかし、もしあれが本心だったとすれば、私は受け入れるしかないのだろうか……?
「今考えたって、仕方無いか」
そう言ったのを最後に、私はその件について考えるのをやめた。
そしてノートを開き、静かに勉強を始めたのだった。
「おはよう! 木嶋さん!」
「!?」
翌日の朝、玄関の扉を開けると戸山君が家の前に立っていた。
(え、え。……え?)
頭がついていかない。
なんだこの状況?
(もしかして、一緒に登校しようって事なのかな? でも、そんなに親しくなってないのに)
私が見るからに嫌そうな顔をしていたのか、戸山君はしゅんと俯いた。
「ご、ごめん。迷惑だった? 恋人になれて、俺、調子に乗っちゃったかな……」
いやいや。
仮に恋人という状態でも、まだ初対面の人間に迎えに来てもらって嬉しいか?
とは、とても声に出して言えない。
「あぁ、いや、えっと。そのぉ……」
こういった返事が来たら答えはYESだということを、薄々でも察してはくれないだろうか。
だが、彼にはとても無理だろうな。
なんとなく、昨日のやり取りからそう感じた。
色々と鈍そうな人な気がする。
「嫌だったらハッキリ言っちゃっていいから!」
そんな事、出来るわけ無い。
出来ていたら、告白だってキッパリ断っていたのだから。
「いや、えっと……大丈夫で、す、よ?」
「……なんだぁ! 良かった」
右手を胸に置き、ほっと安堵する戸山君と、「どうして自分はこうなんだ!」と、自らを恨むしかない私。
(この人は、本気で私を愛しているのかな? けど、そもそも『愛』ってよく分かんないし)
「さて、じゃ、行こっか!」
戸山君はそう言って、スキップで前に進み始めた。
私はその二、三歩後ろを歩く。横はさすがに、恐れ多いからだ。
一歩一歩が、ぎこちないものになってしまう。
(私って、こんなに歩くの下手だったっけ?)
うわ……駄目だ。
今だけならまだしも、学校付近には大勢生徒がいる。こんな状態を見られたら、何と言われるか分かったもんじゃない。
(いや申し訳ないけど……やっぱ無理!)
そう思い、私は戸山君を追い抜かして走り出した。
「……え?」
戸山君は呆気にとられ、しばらくその場を立ち尽くしていたのだった。
机に突っ伏しながら、ポツリと呟いた。
というか彼──戸山君とかいったな──は、私の何を好きになったのだろうか。
私なんかに、魅力はあるのだろうか。
それを確認するために、机の端に置いてある鏡を近くに寄せて、自分の顔を見てみる。
(やっぱり、全然可愛くない)
恥ずかしながらも色々なポーズをしたけれど、鏡を覗いた結果は変わらない。
やがて、もしかしたらこれは嘘の告白かもしれないと思い始めるようになった。
今時の若者はよくやっていると聞く(姉からの知識)し、ああいうチャラチャラした連中なんて毎日のようにやっていそうではないか(偏見)。
むしろ、「あれは全て冗談でしたー!」と言われ、ドッキリ大成功と書かれた札を掲げられた方が納得がいくし、私からしたらありがたい。
だが、あの無邪気な子供のように純粋な瞳──あれが嘘には見えなかった。
……今時の若者は演技力も高いのだろうか? なら皆俳優かなんかになれば良いのに。
しかし、もしあれが本心だったとすれば、私は受け入れるしかないのだろうか……?
「今考えたって、仕方無いか」
そう言ったのを最後に、私はその件について考えるのをやめた。
そしてノートを開き、静かに勉強を始めたのだった。
「おはよう! 木嶋さん!」
「!?」
翌日の朝、玄関の扉を開けると戸山君が家の前に立っていた。
(え、え。……え?)
頭がついていかない。
なんだこの状況?
(もしかして、一緒に登校しようって事なのかな? でも、そんなに親しくなってないのに)
私が見るからに嫌そうな顔をしていたのか、戸山君はしゅんと俯いた。
「ご、ごめん。迷惑だった? 恋人になれて、俺、調子に乗っちゃったかな……」
いやいや。
仮に恋人という状態でも、まだ初対面の人間に迎えに来てもらって嬉しいか?
とは、とても声に出して言えない。
「あぁ、いや、えっと。そのぉ……」
こういった返事が来たら答えはYESだということを、薄々でも察してはくれないだろうか。
だが、彼にはとても無理だろうな。
なんとなく、昨日のやり取りからそう感じた。
色々と鈍そうな人な気がする。
「嫌だったらハッキリ言っちゃっていいから!」
そんな事、出来るわけ無い。
出来ていたら、告白だってキッパリ断っていたのだから。
「いや、えっと……大丈夫で、す、よ?」
「……なんだぁ! 良かった」
右手を胸に置き、ほっと安堵する戸山君と、「どうして自分はこうなんだ!」と、自らを恨むしかない私。
(この人は、本気で私を愛しているのかな? けど、そもそも『愛』ってよく分かんないし)
「さて、じゃ、行こっか!」
戸山君はそう言って、スキップで前に進み始めた。
私はその二、三歩後ろを歩く。横はさすがに、恐れ多いからだ。
一歩一歩が、ぎこちないものになってしまう。
(私って、こんなに歩くの下手だったっけ?)
うわ……駄目だ。
今だけならまだしも、学校付近には大勢生徒がいる。こんな状態を見られたら、何と言われるか分かったもんじゃない。
(いや申し訳ないけど……やっぱ無理!)
そう思い、私は戸山君を追い抜かして走り出した。
「……え?」
戸山君は呆気にとられ、しばらくその場を立ち尽くしていたのだった。
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