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夜の女王の真実
番外編 馬に馬癖、人に一癖 Ⅱ
しおりを挟む「あ…悪魔だって…?ディページと同じ悪魔なのか…?」
「ブルル(いや…あれはケルピーだ)」
「ケルピー…?」
「ブルル…(水辺で人間を食べる悪魔だよ)」
ケルピーは本来、魚の形をした悪魔である。
水辺で暮らし、近くで歩き疲れた人を見かけると馬の姿に変身して近づく。
その人がケルピーの背中に乗ると、一目散に水辺の中に連れて行ってしまう。
そして内蔵を残して全て食べられたあと、残った内蔵は魔法を使って液状に溶かされ、その水辺の一部にされてしまう。
その話をすると、ハルちゃんはディページの上で小刻みに震える。
「なんだそれ…めちゃくちゃ怖い悪魔じゃないか…」
「ブルル…(まぁ、悪魔なんてみんなそんな感じよ?)」
「そんな『地元じゃフツ―』みたいな感じで言われても…ふ、普通の馬のように見えるが…」
「ブルル…(足元を見てみ)」
「…?」
ハルちゃんはディページに言われてケルピーの足を見ると…
足よりもむしろ、ケルピーがつけたであろう足跡に違和感を覚えた。
「…なんだ…あれは?」
その足跡は前後逆だった。
まるで後ろ向きに歩いているような足跡。
その馬は蹄鉄を付けておらず、爪の跡がひっくりかえったように逆になっていた。
「ブル…(ケルピーの足先は普通の馬と逆についているんだ…無機物を液状に溶かす魔法を使う以外は、特徴はそれくらいかな)」
「無機物を溶かす…」
と、ジェイスに聞いた受け売りをそのまま話す。
ディページはケルピー同様、オロバスという馬の悪魔であるが…
この二つの悪魔には明確に違う点がある。
オロバスは人間に変身できる馬の悪魔であるが…
ケルピーは馬に変身できる魚の悪魔。
つまりオロバスは馬の姿が真実の姿であり、ケルピーは馬の姿が偽りなのである。
ケルピーは実際の馬を模倣して変身するものの、馬の足先がどのようになっているのかを知らない。
そのため足先が普通の馬と逆になってしまっていると言われている。
「だだだだ、大丈夫なのか?勝てるよな…?」
「ブルル…(平気でしょ…ケルピーって基本的に受け身スタイルの引きこもり悪魔だし)」
「なんだその言い方…」
「(けど…ケルピーは水場で狩りをする悪魔だ…なんでこんなレースに…)」
そんなことを言っていると…
レース主宰者であるファンジャルタ牧場の主であり、シルディアの父…
オ―レ・ファンジャルタが大きな声であいさつを行った。
「それでは第84回ヨルデシンド領見世競馬!!第8レースを行います!」
観衆は決して声を上げたりしない。
まぁ、このレースの本質はギャンブルではなく商売。
当然と言えば当然だった。
「出場しますは、第1コースからラムクォーツ牧場のパラック!トランティ・ル・ベル牧場のジョージ!ホージェス牧場のディーン!レヴジェーン農場の…」
出場する騎手の名と所属名の紹介が終わり…
馬の前に置かれた樽が取り除かれた。
目の前にスタートの合図を告げる男が現れ…
大きい声でカウントダウンを始める。
「3!2!1!」
バアアンッ!
「0」の掛け声と同時に…
その男は魔法で空高く小さな火球を飛ばした。
それと同時に横並びになる12頭の馬が一斉に走り出す。
「おおっ!」
「早い!」
まず先頭にたったのは…
我らが悪馬ディページ。
力強い踏み込みで、一気に距離を離す。
「うわあっ!!!」
「ブルル(これくらいで驚かないでよ!まだトップギアじゃないよ!)」
みるみるうちに他の馬と距離が離れていく。
気づけばディページ以外の馬の足音がなくなっていた。
「…!」
しかし…
「!!」
ふと後ろを見ると…
一切足音を立てず、ぴったりとディページについてくる馬が一頭。
「ケルピー!!!」
「…」
ホージェス牧場のディーンが乗るケルピーだ。
漆黒の身体が闇夜に溶けて、一瞬その速度に気付かない。
速かった。
ディページに劣らぬほど。
ディページは一気にスピードを上げる。
普通の馬とオロバスが違う点は、スピードだけではなくスタミナだ。
ディページは数時間トップギアで走り続けることができる。
序盤からスピードを上げても疲れることはない…
しかし…
「!」
ケルピーもその速度についてくる。
ディページの後をぴったりと…
すでに後方集団の馬とは7馬身ほどの差が開きつつあった。
ディページはケルピーだけでなく、後方集団との距離も測っていた。
そんなことに気を取られていると…
「ブル(あ!)」
第一コーナーに曲がり始める刹那…
ケルピーは身体の重心をずらして、わずかにディページよりもインコースに身体をすべり込ませた。
当然外側になるディページは、ケルピーよりも多く走らなければならず…
そのままケルピーに抜かれてしまう。
「ブル…(!)」
「…」
その時…ディページはケルピーの背中に乗る騎手を見た。
ホージェス牧場のディーン。
さきほどはたくましい顔つきの男性と思ったが…
よくみると目が虚ろになり…
ガクン…ガクン…と頭を揺らしている。
「ブルル…(「悪魔あたり」か…)」
以前も話をさせてもらったが…
強力な悪魔の魔力は、耐性がない人間にとっては強い毒になる。
意識を失い、何も考える事が出来ず…
魔力に敏感な体質ものだと、死んでしまうことすらある。
ディページはケルピーの背中に乗るディーンという騎手が…
今まさにそんな「悪魔あたり」になってしまっていることに気付いた。
今にも落ちそうだが…
気力なのか本能なのか、ディーンは必死にケルピーにしがみついていた。
「…」
「うぅ…」
しかし、必死にしがみつくという意味ではディページの上に乗るハルちゃんも同じだ。
ディページは落ちなきゃいいくらいに思っていたが、実はこれ、大きな間違いである。
スピードがでているということは、それだけ馬体の揺れが激しいことを意味する。
優秀な騎手であれば、その揺れとリズムをあわせ、馬が走りやすいようにサポートをする。
うまく騎手と馬のリズムがあえば、馬単体ではだせないような速度で走ることも可能だ。
しかし、ハルちゃんにはそれができなかった。
ディページは地形に合わせて無意識に最適な歩幅や、足の上げ方を変えて対応する。
ハルちゃんは、それに合わせることができない。
移り変わるディページのリズムに合わせることができない。
いや…
優秀な騎手ですら、こんな速度で移り変わる馬のリズムに合わせることなんて難しいだろう。
「ブルルッ!(走りづらい…ジェイスが乗ってる時はこんな感じにならないのにッ!)」
騎手の不安定なリズムは、馬にも伝わる。
身体が無意識に行う走りと、違うリズムが身体に伝わる。
ディページは無理にスピードをあげようとするが、なかなか速度が上がらなかった。
「…」
パカラッ!パカラッ!!
ザカラッ!ザカラッ!
コースが芝から砂利に変わる。
その時、ディページはさらに自分の走りに違和感を覚えた。
「ブルッ!!」
砂利道が…まるで大雨の直後のようにぬかるんでいるのだ。
ここ数日、ブルービルドには雨なんて振っていなかったのに。
「フシュゥ…」
「ブルル(あいつ…!)」
ディページの速度がさらに落ちる。
必死にしがみつくハルちゃんもそれに気付いたようで、ディページに聞く。
「どッ!どうしたんだディページ!スピードが落ちた!俺に気を使って速度を落としたのか!?」
「ブルル(違う…あいつの足元をみてよ!)」
ケルピーの足元を見ると…
踏んだその地面がぐちゃぐちゃになっていた。
「地面が…溶けてるッ!?」
そう、ケルピーは触れた無機物を溶かす魔法を使う。
踏んだ地面はその瞬間に溶解し、乾いた砂利がぬかるんだ泥のようになっていた。
「ブルル…(あいつ、魔法で地面を溶かしながら走ってるんだッ!うまく力が地面に伝わらないッ!)」
いくらディページが早くても…
その力が正確に地面に伝わらなくてはスピードなんてでない。
「ブルル…(まずい…どんどん差が…もっと早く走らないと!)」
その時…
ドサッ!!
びしゃぁ!
ケルピーに乗っていた騎手ディーンが…
気を失って、落馬した。
ケルピーはそれでも走り続ける。
道をぐちゃぐちゃに溶かしながら。
ディページは落馬したディーンをよけ、ケルピーによってぬかるんだ道を走り抜ける。
はやく、ケルピーに追いつけないと…。
「ブルル…(まだ勝機はある…確か最終コーナーは芝だったはず…)」
「まってディページッ!!!」
「!!」
ディページがさらにスピードを上げようとした瞬間…
背中に乗るハルちゃんが、おもいきり手綱を引いた。
「ブルル(ば、ばかッ!スピードが!!)」
「とまって!ディページ!」
「ブルル(は!?)」
「助けるんだ!!ディーンを!」
「ブルル…(何言ってるんだよ!!そんなことしたら負けちゃうよ!!)」
「頼むッ!!」
「…」
仕方なくディページは立ち止まる。
するとハルちゃんはディページから下りて、泥まみれになるディーンに駆けよった。
「ひどい怪我だ…骨が折れているかも…」
「ブルルッ!!(ねぇ!そんなの放っておいていこうよ!!本当に追いつけなくなるよ!?)」
「ダメだッ!!!」
「!」
「ディページ…俺は誇り高いコシューイン家の息子だッ!ちっちゃくても貴族なんだ…!貴族は、弱いものを置いて逃げたりなんかしないッ!」
「…」
泥んこになって…
高い衣服を汚しながら、ハルちゃんはディーンを背負った。
どうやら一番近いテントに戻ろうとしているようだ。
しかしテントからは、もう大分距離が離れてしまっていた。
後ろからは後方集団も迫ってる。
「…」
ディページは…
それでも必死に自分の体格の倍以上はあるディーンを背負うハルちゃんを見る。
後方集団を見る。
走り抜けるケルピーを見る。
そして…
「ブルル(もう!!!乗せて!!!)」
「…え?」
「ブル(いいから乗せてッ!!ここからならテントよりゴ―ルに向かった方が速い!!!)」
「で…でも…」
「ブルル!(早く!)」
「う、うん!!!」
ハルちゃんはディページにディーンを乗せて、落ちないように腕と蔵をロープで結んだ。
ハルちゃんも騎乗し、またコースを走り始める。
「ごめんディページ…」
「…」
「俺、どうしても勝ちたいなんて言いながら…ディページに迷惑ばかりかけて…」
「…」
ハルちゃんは距離の空いてしまったケルピーを見た。
すでにディページから10馬身ほどの距離が離れてしまっている。
ハルちゃんはそれでも必死に走るディページの上で…
「きっともう無理だディページ…本当にごめん…」
と、小さい声で謝った。
ディページは2人の人間を乗せたまま、ぬかるんだコースを走る。
悔しさと情けなさで震えるハルちゃんの温度は…
手綱を伝って、確かにディページにも届いていた。
「ブルル(あぁもう!!俺は娼婦とエッチなことがしたいの!!)」
「…!!!」
「ブルル(貴族なんだろ!?コショー…なんとか家の跡取りなんだろ!?シルディアちゃんと結婚したいんだろ!!)」
「…ディページ」
「ブル!(あきらめんなッ!!!!)」
「う…うん!!!!」
そういってディページは、さらにスピードを上げる。
しかしケルピーとの距離は縮まらず、最終コーナーを過ぎようとしていた。
「で、でもどうするんだ!?もう距離もそんなにない!」
「ブルル…(確か最終コーナーを曲がった先は、ずっと芝のコースだったよね!?)」
「あぁ…確かそうだったはずだ」
「ブル…(ケルピーが溶かすことができるのは、石とか砂とか命の無い物だけ…芝は植物だから当然生きている!)」
「…!」
「ブルル(しかも、きっと直接触れた部分しか溶かすことができないんだ…もし芝の下にある土を溶かすことができていたら、スタート地点からコースはぬかるんでいたはず!)」
たしかに、道がぬかるみ始めたのはコースが砂利道へ変わった瞬間だった。
「ブルル(おそらく芝のコースは、溶かすことができない!そこで勝負をかける!)」
漆黒の悪馬と…
純白の悪馬が砂利道を抜ける。
コースが芝に変わると、ディページの読み通り道が安定してきた。
「うわぁッ!!」
その瞬間、フラストレーションのたまっていたディページの筋肉が一気に躍動する。
安定した地面をしっかりと踏み込み、首と胴を交互に動かして…
水を得た魚…
ならぬ芝を得た馬が一気にスピードを上げる。
「ブルル!(ハルちゃん!俺とリズムを合わせて!!俺だけの力じゃ追いつけないッ!!!)」
「うん!!!」
ハルちゃんも、必死にディページの後押しをすべくリズムを合せていく。
安定したコースに入ったこと…そして徐々にディページという馬の特性を掴みつつあったハルちゃんは…
不器用なりにも騎乗が形になりつつあった。
「ふしゅぅぅう…」
「ブルルッ!!」
そして…
バンバンバン!!!!
「ゴォォォォル!!!優勝は…」
「ブルル…」
「…」
「フシュウ…」
「コシューイン家のハルダッド・レン・コシューインッ!!!!」
いつもなら歓声もそこそこな見世競馬…
落馬した男を助ける決断をした騎手と、2人の成人男性を乗せたまま逆転劇を演じた美しい白馬の有志は、淡白だった観客を奮い立たせるのに十分なドラマだった。
沢山の歓声が、美しい白馬とその騎手に注がれた。
ディページが止まると、多くの人がつめより…
落馬したディーンはすぐに手当てにつれていかれた。
そして、2人への歓声は夜のブルービルドにも響いくほど大きなものになった。
…
たくさんの馬主(おじさん)が、優勝した白馬に触れようと集まってくるのを予期していたディページは…
すぐに隠れて人間の姿に戻っていた。
「あれ…ディページいつのまに…」
「…♪」
「ハルダットさん!」
「シシシシルディアさんッ!!!」
2人は駆けよると、抱き合うわけでもなく…
少し照れくさそうに下を向いていた。
「しし…シルディアさん…その…僕…」
「…」
プロポーズだ。
今からプロポーズが行われる。
さすがのディページもそこは空気を読み…
黙って二人を近くで見守っていると…
「えっと…そ、その…だから…えっと…その…」
「…」
「ゆゆゆ優勝しました!!だから…えっと…」
「…イライラ」
緊張して上手く喋れていないハルちゃんを見て…
ディページがイライラしだす。
仕方が無いのでディページが、さわやかな顔を作り、颯爽と手助けに参じる。
「ハルちゃ…いや、ハルダット・レン・コショ―ウィンさんは素晴らしい方ですよ…」
「えっと…あなたは?(こしょーうぃん?)」
「僕は彼の友達です…彼は本当に素晴らしい馬主ですよ」
「…」
「彼は、馬の言葉がわかるのです…」
「馬の…言葉…?」
「えぇ…たまにいるんです…動物の言葉を理解し、信頼関係を築ける才能がある人が…そういった人が支える牧場や農園は、末永く繁栄すると言われています」
「…」
「彼は、きっと素晴らしい旦那さんになってくれますよ…」
「ディページ…」
そして、そんなディページに後押しされたハルちゃん…いや…
コシューイン家の貴族、ハルダッド・レン・コシューインは…
心をこめて、彼女に言った。
「僕、あなたのために優勝しました…僕はちっこいし、まだまだ頼りないかもしれない…だけどあなたを愛する気持ちは、この世界で一番だと思っています!」
「ハルダッドさん…」
「ぼぼぼ僕と…結婚してください!!」
「…」
シルディアは少し深呼吸して…
嬉しそうににっこりと笑った。
そして…
「…はい」
と優しい言葉を彼に返した。
「…」
ディページは…なんとなく去った方がいいと思った。
自分は邪魔だと…
プロポーズが成功して喜ぶハルダッドを見ていたら、なんだか満足してしまって…
お別れのあいさつも言わず…
誰にも気づかれないようにその場から去った。
…
もう誰もいないレースで使われたコースを歩き、街の入り口に戻るディページ。
いつの間にかたいまつも消されており、真っ暗な夜の道。
ディページが歩いていると…
闇夜から解けだしたような漆黒の馬がディページの前に現れた。
「やぁ…」
「ふしゅうう…」
そう…
レースで準優勝した悪魔、ケルピーである。
ケルピーは馬の姿のまま、人間となったディページに言う。
「まさかオロバスともあろう悪魔が…人間の戯れに参加されているとは思いませんでしたよ」
「なんか文句でも?」
「いえ…ただ…恰好悪いなぁと思いましてね」
「…」
「普通であれば、オロバスがケルピーに負けるはずなんてありませんな…あなたの首につけられているそれが原因では?」
「…」
ケルピーはディページの首にある首輪をみる。
ジェイスによってつけられた、『使役の首輪』。
「人間に飼われるとは…なんとも不憫でなりませぬ」
「君だって似たようなもんでしょ?レースに参加してたってことは…」
「私のは本当にお遊びでございます…終わった後、そのまま人間を食べてしまおうと思っておりましたし…あなたが参加されたのを気づいて、ついつい本気になってしまいましたが…」
「…」
「オロバスであるあなたにこんなことを言いたくはありませぬが…」
「…」
「人間を助け、人間のために走るあなたの姿は…なんとも滑稽でございました」
「…人間に飼われてる俺を笑いにきたと…?」
「はい…人の不幸を笑うのが悪魔でございますから…それと僭越ながらご忠告を…」
「…忠告?」
「人間と悪魔の間には、妙な友情などは生まれやしませぬ」
「…」
「人間のことを好いた悪魔は、必ず足元をすくわれます…お気をつけなされ…」
「…」
そういってケルピーは…
何もない闇夜に消えて行った。
「…ふん」
ディページは、自分でも少しづつ…
自分が変わりつつあることに気付き始めていた。
しかし、気づいてはいけないとも思っていた。
気づいていたら、何もかもが終わってしまう気がしてた。
そして今日も…
気づかぬふりして、何も難しいことを考えないいつもの馬の悪魔に戻ろうと思った。
…
街でふらふらとナンパしたり…酒場にいってナンパしたり…
そんなこんなで次の日を過ごしていた。
街の娼婦に話を聞くと…
どうやら謎のモンスタースレイヤーがべスティナ邸にいるらしい。
ハルダッドからお金を貰うことをすっかり忘れられて、娼館遊びもお預けになったディページは…
仕方なくべスティナ邸からジェイスが来るのをまっていた。
するとついてすぐにジェイスが出てくる…
タイミングがよかった。
どうやら問題は解決したようだ。
「あ、ジェイスおかえりぃ」
「ディページ…」
「街の娼婦から聞いたんだ…ここにいるって…」
「お前…二日間もどこいってたんだ?」
「どこって…」
「あ、いや愚問だった…娼婦と一緒にいたんだろ」
「ちょっと!いつも俺が娼婦とばっか遊んでると思わないでよ!」
「違うのか?じゃあ誰といたんだ?」
「…ん~…バカでちっこい貴族」
「…なんだそりゃ」
「ジェイスの方はどうだったの?べスティナ街長といたんだろ?」
「…いや」
「え?じゃあ誰といたのよ?」
「豚の怪物と、夜の女王」
「なんだそりゃ…」
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