たまには異能力ファンタジーでもいかがです？

たまにはチャラ男とネクラはいかがです？

番外編 矢代新という男

※本編で描ききれなかった黒の使途メンバーのパーソナルエピソードです。
※この物語を読まなくても本編は楽しむ事ができます。





ウチの親父とお袋って、本当バカだったんスよねぇ。



「おい、見てみろ。かっこいいだろ？」

「新、お父さんが新しいパーツ買ってきたって！」



いい年こいて、車いじりが好きな親父。
安い車に高いパーツくっつけて…
ヤンキー上がりのバカ夫婦。



「エンジンの音がいいんだ。マフラーも新しいのに替えようかな…」



けど…
俺にとっては唯一の両親で。
唯一の家族で…

大切だったんス。





「事故？なんスか…それ…」

「高速道路のトラック横転事故に巻き込まれたらしい…」



でっかいトラックに…2人とも…車ごと…
死んじゃったんス。

2人ともバカだったから…
きっと今までの行いがよくなかったんスね。

けど…聞いちまったんスよ。



「…」



葬式で…俺のところに謝りに来たトラックの運転手が…
親父とお袋を殺した運転手が…

喫煙所で話しているところ。



「で、どんな車だったんだよ。」

「だっせぇ軽自動車に、似合わねぇパーツで改造して…いかにもドキュンカーって感じだったよ。」

「いるよなぁそういうヤツ。高い車買えないから、安い車に不釣り合いな改造するやつ。」

「そうそう…大した事故じゃねぇのにボロい車乗るから…死んじまいやがって…おかげでこっちが殺人鬼扱いだぜ。あんな車に乗る事にならねぇように新しい仕事みつけねぇと…」



おれも正直。
親父の車…だっせぇってバカにしてたんスよね。

けど、その時なぜか悔しかったんス。
バカにすんじゃねぇって。

お袋が好きだった親父を…
親父が好きだった車を…
バカにすんじゃねぇって…








「あの…」

「…？だれだ…このガキ…」

「バカ！ほら、お前が轢き殺した夫婦の…」

「…あ！あぁ！…ごめんね…おじさん、本当に反省してるんだ。」

「…」

「えっと…おじさんに何か用かな？」

「クラクション…聞こえなかったんスか？」

「…え？」

「親父…バカだから高速でも平気でクラクション鳴らすんスよ。」

「…」

「聞こえなかったんスか…？」

「…はは…ごめんね。おじさん…耳が悪くて…」

「…そう…っスか」

「…」

「ミッドナイト・クラクション・ベイビー」

「…え？」

「素敵な一日を…」




なんでこんなこと言ったのか…
きっと自分の能力に、本能的に気づいてたんス

こいつを殺してやるって…
本気でそう願ったんス。 

バカの息子は。
やっぱりバカだったんス。








ロストマンレポート　※追記

矢代　新
失ったモノ：両親