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三章 再開の灯火
百話 油断の隙
しおりを挟む祝!100話目!
♦♦♦♦♦
「ゴホッ!?」「ゲべッ?!」「メギョッ!?」
「……よし、これで全員っと。で、鍵はどこだ?」
「あ、あれです!」
「そうか。じゃ、後は寝てな」
「へ?デッ!?」
俺は鍵がある部屋を守る番の男共を気絶させた後、ついでにここまで案内させたリーダー格っぽい男も気絶させた。
俺はいくつか使えそうな鍵と、目的の一番重要そうな鍵を取る。これで大丈夫なはずだ。
俺は鍵を紋章にしまい、リーダー格っぽい男から聞いた情報通りの道を進んでいる途中、何となく嫌な予感を感じた。
それと同時にふと疑問が頭をよぎる。ここは教会と繋がっているはず。なのに教会関係者らしき人物は最初のリュオデスだけであった。
いくらなんでも、リュオデスを除いでここまで一人として関係者が居ないのはおかしいのでは無いか?
寧ろリュオデスがいることが特殊であり、本来は直接関わったりしないのか?
俺は足を進めながらも、もしかしたらという気持ちで会えて隙を晒す。
その瞬間、その隙をずっと狙っていたかのように鋭い殺気が放たれる。
「っ!?誰だ!」
「……」
隙を晒す以上、もしもの為にすぐに防御をできるようにしておいたおかげで何とかこちらに飛んできた物を刀で弾き飛ばすことに成功した。
弾いた物を見ると、それは投げるように作られたであろう無駄な装飾のない所謂投げナイフであった。
テルは即座に足を止めて何時でも反応できるように刀をかまえ、声を上げて投げてきた人物に向けて叫ぶ。
しかし、予想通りではあるが一切返事は返っては来なかった。
これは厄介なことになったぞ。これから少し前からずっと俺を狙っていたのか、偶然居合わせたやつが狙ってきたのかは分からない。
だが、俺はこの場所から出るまでずっと今の攻撃を警戒しなくてはならないのだ。
「気配も無ければ殺気も感じない……。そういえば、リュートンでもこんなことがあったな」
リュートドーム事件での戦い中に俺にだけしか聞こえなかった誰かの声。
あの声も教会関係者なのであれば、同じことが出来る人が居てもおかしくはない。
まぁ、気配遮断系は闇属性魔術だが……それらの様な能力は幾らでもある筈だ。
俺は一度足を止め、どこから来ても良いように警戒しながら意識を鋭く研ぎ澄ませる。
そしてようやく感じる数体の違和感。視線をそちらに向けるが、一切違和感を感じるようなものはなかった。
……仕方ない。魔力を温存したかったが、不安要素は少しでも潰しておくべきだ。
「『印切り』『結目の瞳』……そこか」
俺は先に感じ取った違和感を目印に能力を使った状態だ索敵をする。
すると、先程までは正確に感じとれなかった存在の姿を容姿こそ分からないものの、体格や体勢、背負っている武器等を正確に把握出来た。
どういう訳か先程は明確に殺気を感じることが出来たのに、今では視線すら感じ取れない。
いや、もしかして攻撃という行動をするには気配を隠しきれなくなるのか?
あいつらはこの気配遮断の効果を信頼しきっているのだろう。俺が周りを警戒するようにわざとらしくキョロキョロ見渡しているのは見えてるはずだが、そこから移動せずにこちらを見ている。
もしかしたら俺には何も感じ取れないと油断し、見下して笑っているのかもしれない。
……想像したらちょっとイラついてきたな。さっさと片付けるか。
俺は構えていた刀を鞘にしまい、会えて隙を晒すように隠れている奴らの方を向いて走る。
さっきのように殺気は感じない。先程の隙を逃がさない奴らがこの隙を逃がすはず無い。なら、俺が極限まで近づいた時に襲うつもりなのだろう。
俺が自らの意思で自分達に近づいてるとも知らずに。
奴らが襲ってくるであろうタイミングを測る。来るとすれば、俺があいつらの目の前に来る直前のはずだ。
来るぞ。……3……2……1!
「隙あり!」
「お前がな!」
「ゴボッ!?」
「「っ!?」」
まさか攻撃を避けられなんて思っていなかったのだろう。襲ってこず立ったままだった人物たちに向けて隙だらけの襲ってきた人を蹴り飛ばす。
声も何も聞こえないが、明らかに壁ではない何かにぶつかった音がした。今がチャンスだ!
俺の目に映る三人の一番魔力の濃い場所を狙い、能力を発動した刀で全て切り裂く。服や肌が幾らか切れても文句を言われる筋合いは無い。
俺は彼等が纏う魔力が薄まっていくのを確認し、能力を解除する。
すると、そこには先程までは影すら見えなかった三人の人物が横たわっているのがハッキリと見えた。
その服装は明らかに教会関係者が来ていそうな修道服。リュオデスと同じような服装であった。
まだ三人は現状を呑み込めないようで、人が上に乗っているのもあり上手く立ち上がれていなかった。
俺はこれはちょうどいいなと思い、アファーから貰った魔道具を試すことにする。
「ほいっ」
「「「っ!?」」」
俺が三つ程取り出して三人に放り投げたのは箱型の一見使い方の分からない魔道具。それに魔力を流し、対象に接触させると、魔力の光線らしきものが四本発生してそれぞれを拘束した。
これはアファー監修のかなり高性能の拘束用の魔道具らしく、弱らせている状態なら赤ランク冒険者が戦うような街一つ滅ぼしかねない魔物ですらこれ一つで行動不能にするらしい。
「さて、お前らはここで迎えが来るまで蹲ってな。あ、これは貰っとくぜ」
「なっ、それは!?辞めろ!それは貴様のような汚らわしい者に触っていい物ではない!」
「そうです!それは我々神に選ばれたものでしか使えない神聖な物なのですよ!」
「遂には汚らわしい者扱いか。それにしても神聖なものねぇ……。それっぽいだけのただの魔道具にしか見えないが」
「はっ、貴様の様な神に仇なす物には分からないだろうな!」
こいつらが腕に着けてあった魔道具を奪い取る。これで姿を消していたはずだ。
それにしてもこいつめちゃくちゃ煽ってくるな。まぁ、別に神に選ばれてないなんて今更過ぎるけどな。
寧ろこんな能力を貰った俺の方が選ばれている気もするが、正直どうでもいいので直ぐにこの考えは捨てる事にする。
「まぁ、騒がれるのはめんどくさいからな。お前らも気絶してろ」
「な、何を……あばばば!?」
「「あばばば!?」」
俺がアファーに言われた通りに目の前の男の魔道具に魔力を流すと、連動して電気が走ったように三人が痺れ始めた。
2~3秒電気が走った後、電気が止まると全員ぐったりしたように倒れた。息は……ちゃんとあるな。気絶しているだけみたいだ。
魔物用でもあるらしいので、なかなかに容赦がないな。
俺はこいつらはもういいかなと思い、さっさと行く予定の場所に向かう。一応気配を探るが、こいつらと同じような違和感は感じなかった。
こいつらも別段弱い訳では無いと思う。先程の動きも誰が飛ばしたか分からないナイフも、なかなかのものだった。
だが、この気配遮断魔道具に頼りすぎたせいでフェイントや駆け引きのようなものがかなり疎かになっていた。まぁ、仕方ないと言えば仕方ないのかもしれないが。
俺はやっと目的の扉の前に辿り着く。情報通り無駄にでかい扉があり、軽く押すと腕には扉の重量感と鍵がかかったようなガチャガチャという感覚を感じた。
俺はその扉のサイズに合った大きな鍵を取りだし、それを大きなドアに差し込む……ようなことはなく、その大きな扉に着いた小さな扉に普通のサイズの鍵を差し込んで鍵を解除する。
流石にこの無駄にでかい扉を出入りする度に開けるようなことは無いようだ。
ドアを開けて中に入ると、その中はまるで空間が別の場所につながっているのかと思うほどに様子がガラッと変わった。
さっきまでの場所は『工場』と言った感じはあったが、この中はまさに『研究所』のような場所で、謎の緑色と黄色の液体が入った巨大なガラスのタンクや、どういう働きをするのよく分からない魔道具が沢山置いてあった。
「緑色の液体……やっぱりここで作ってるのか。よし、これを回収して……」
明らかに不気味な雰囲気を漂わせるこの場所で生産される謎の液体。これをアファーの元に持って行けばなんなのか解析してくれるはず。
俺は計画を口にしながら一歩踏み出すが、もう一歩を踏み出すことが出来なかった。
何故なら、真横から感じたくなかった気配と殺気を感じてしまったからだ。
「それを回収して、どうするんだ?なぁ、『無能』」
「……リシュア」
やはり、こいつとの戦いは避けられないようだ。
♦♦♦♦♦
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