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三章 再開の灯火

九十話 本来の能力

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「と、飛んでます!?飛んでますよぉ!?」
「お~!すごいね~♪」
「な、なんだと……!」
 
 私は真下で大男の腕が振り抜かれる音を聴きながらそんな呑気にそんな感想を漏らす。
 飛んでる……のとはちょっと違うかな~?だって今も足音聴こえてるし、どちらかというと空中を走ってる?
 そういえばテル君から聞いた話によると、変異種も通常種と同じ力を持っているって言ってたし、もしかしたら……。
 
「ユーミーちゃん!スカイホースの能力って知ってる~?」
「えっ……ああ!そう言えばスカイホースの能力は『空歩』です!でも……あれ?こんな感じでしたっけ?」

 フフン!予想通り~♪
 その名前は明らかに空中を走っている今の状況に合致してるね~♪
 ちょっとだけユーミーちゃんの言葉に引っ掛かりは覚えるけど、今は逃げ切る事を優先しないと!

 レインちゃんはそのまま空中を走りながら大男の頭上を走り、その途中で大男の後頭部を蹴りつける。
 どうやらただ空中を走るだけの能力ではなく、空中で留まったり出来るようだ。

「ブルルン!」
「ぐあぁぁ!?」
「脚力が上がってます!今ので魔力の扱いを完全に理解したみたいです!」
「そうでないとね~♪」
「……うおぉぉ!!」

 しかし、そんなレインちゃんの一撃を後頭部に直撃しても一切の傷もなく大男は立ち上がる。どれだけ頑丈なの!?

「ブルルン!?」
「おわぁ!?レインちゃん!?」
「た、多分ずっとは空中を走れないみたいです!」

 このまま空中を走れば逃げ切れる!そう思った途端に、まるで空振りするようにレインは足が空を切り、そのまま地面に着地する。バランスを崩すことは無かったが落下の衝撃はモロに私達に伝わった。

「ぐぉぉぉ!!」
「ひぃ!?あの人正気を失ってますぅ!」
「や、やばい!レインちゃん頑張って!」
「ブルルン!」

 どうやら一度に空中に留まれる時間?回数?は決まってるみたい。だけど、魔力を使えるようになって強化されたのは攻撃力だけじゃない!

「ブルルン!」
「速い速~い♪」
「う、うわぁぁ!?」

 先程も私の全力疾走より速い速度で走っていたけど、その速度は更に加速してる!先程までは大男の方が少し速い程度だったけど、今は同じ速度走れてるっぽい!

 ……え?よく考えたらあの人って、馬よりも速い速度で走ってるの?……怖すぎでしょ。

 とは言え、同じ速度という事は追いつかれることは無いけど逃げ切ることは出来ない。
 大通りに出て目撃者が一杯いる所なら流石にあの大男も大暴れはできないはず!

「ウゴゴゴゴ……!」
「え?!な、なんですか!?」
「な、何この魔力!?レインちゃん!急いで!」
「ブルルン!」

 突如として大男の体から異様な魔力が溢れ出し始める。
 こ、これは……あの時と同じ!?

「ウガァァァァ!」
「ひ、ひぃぃ!?野生の動物みたいです!?」
「や、やっぱりこれって!?」

 感じる既視感とアイツとの共通点。怒りという強い感情による暴走と溢れ出る異様な魔力。そして……黒く染まる紋章。
 そっか!だからこいつはこんなに人間離れした巨体だったのか!

 あの時のように体が異様な変形を起こすことは無い。だけと、その服が破けそうな程に全身の筋肉が膨れ上がり、獣のような雄叫びを男はあげたした。
 そしてそれに伴い跳ね上がる速力。この速度はさっきよりも速度に差があった。

「や、やばいやばいやばい~!!」
「れ、レインちゃん!前!前が壁ですぅ!?」
「えぇ!?ここに来て曲がり角!?」

 このまま全力疾走で走り抜ければ曲がりきれずに壁に衝突することは目に見えてる。
 だけど、少しでもこの速度を落としたらもうすぐ後ろに来てる大男のにぺっちゃんこにされる。これは明らかに絶体絶命!?

「ブルルン!」
「えぇぇ!?レインちゃん!?なんで更に加速するのぉぉお!?」
「い、いやぁぁ!?死にたくないですぅ!!」
「ブルルン!!」

 まるで最後の足掻きと言わんばかりにさらに加速するレインちゃん。この状況は私が何とかしないと、と思った時に今まで以上に強い意志の込もつたレインちゃんの鼻息。

 もしかして、「信じて」って言ってる?……わかった!私はレインちゃんを信じるよ!

 恐怖で取り乱してるユーミーちゃんが振り下ろされないように全身とレインちゃんの背中で挟み込むように固定する。
 やったれレインちゃん!!!

 段々と近づいてくる壁。ユーミーちゃんは恐怖で目をつぶってしまったけど、私は信じる。

 迫ってくる壁から目を離さずにレインちゃんがみているであろう景色を見るために、私だって根性の一つや二つ見せつけてやる!

「グルォォォ!!」
「ヒ、ヒィィ!」
「ブルルン!!」

 レインちゃんの顔の先が壁にぶつかる。そう思った瞬間に感じる少し特殊な魔力。そして私の目に写ったそれは、そのレインちゃんの顔が様子で。
 
 いや、違う。もう少し正しく言うなら、突如として出現した穴に入り込んだ。

 私はそれに驚く暇もなく、私自身もその穴に入り込む。
 そこはまるで光の届かない海の底のようで。周りは真っ暗なんだけどどこか青い、そして時間がゆっくりになったかのようななんとも言えないゆったりとした世界に迷い込む。

 私はそんな状況を理解できずにいるが、レインちゃんはまるで全てわかっていたように勢いを止めずに走り続ける。

 そして更に能力を発動した訳でもないのに浮かび上がるレインちゃんの体。そして右側の向きに体を向けた瞬間、また感じる特殊な魔力。

「う、うわぁぁ……あえ?か、壁はどこですか?」
「す、すごい!これがレインちゃんの本当の能力なんだね!」
「ブルルン!」

 その空間から出た瞬間にまた動き出したかのように感じる時間。
 どういう原理かは分からないけど、レインちゃんは能力で生み出した謎の空間に入って体と勢いの向きを右側に向けることで完璧に右折したのたんだ!

 その瞬間に後ろから鳴り響く爆音。
 曲がる為に減速、なんてことに意識の回らない大男はそのまま建物にぶつかる。あ~あ、やっちゃった。

 しかし、こいつはそんなことは気にしないみたいで。すぐに立ち上がった大男は継続して私達を追い続ける。

 でも、これならいつかは逃げ切れる!そう確信した野と同時に感じる、私の魔術が崩壊した感覚。……テル君だ!

「レインちゃん!ちょっと魔力貰っちゃうけど、ちゃん逃げ切ってよね!」
「ブルルン!」

 レインちゃんの任せとけ!を聞いた私は必要以上に能力を発動しないように、事前に脳内で発動する魔術の効果を想像する。
 想像するだけなら魔術じゃないからね~♪

 今の今まで魔術を壊せなかったってことはテル君でも苦戦する……もしかしたら勝てない程の強者。しかも、テル君なら勝てる勝てないは別としてもそいつを殺しちゃ行けない事に気が付くはず。なら、完璧に相手から逃れるための魔術を……!

「行っくよ~♪……『隠蔽煙幕インビジブルボム』!」
「ま、また聞いた事のない魔術です!」
「グルォォォ!!グゴォ!?」
「ブルルン!」

 また謎の空間に入って大男を巻いた瞬間に私は魔術でテル君以外の気配感知が出来なくなる煙幕を障壁があった地点に打ち上げる。
 よしよし!これでテル君は逃げ切ってくれるはず!

「じゃ、そろそろこっちもケリをつけましょうかね~!」
「ブルルン!」
「グラァァ!」
「ひぃぃ!?もう嫌ですぅ!!」




 ♦♦♦♦♦

 

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『女神様からもらったスキルは魔力を操る最強スキル!?異種族美少女と一緒に魔王討伐目指して異世界自由旅!』という作品も連載してます!ぜひ読んでみてください!
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