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二章 強さの道筋

五十四話 能力の範囲

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「でゅべっへっへ!オレ様こそが最強なんだよ!……ん?なんで三枚あるんだ?まぁいい!全員、ぶち殺す!」

 ……自分の能力の限界がわかってないのか? いや、そんな訳がない。
 いくら自動発動系でもどういった能力なのか、どこまでできるのかは感覚でわかるはずだ

 なのに厄介男はまるでそれを知らなかったような言動を取る。
  ブラフか?しかし、今のアイツにそこまでの事が出来るとは思えなかった。

 有り得る可能性としては二つ。
 一つはシエの魔法が直撃したことにより命の危険を感じての覚醒。

 俺のように能力が進化して全く別の能力が芽生える様なことは普通ありえない。

 だが、鍛錬や魔素の吸収だけでなく、ふとしたきっかけで能力が大幅に強化されるとはある。その大きな理由として自分の死に直面した時等だ。

 だが、今のあいつは例えシールドが無かったとしても魔術に当たって死ぬとは思えない。なんなら、奴には危機管理能力が欠如しているようにも感じられる。

 そんな彼がこのタイミングで覚醒するとは思えない。

 ならばもう一つの理由、謎の現象による強化が能力にも適用された、だ。

 能力の外部的要因で直接的かつ永続的な強化なんて言うのは、冒険者等の能力を多用する職業の者に取って誰しも夢見る事だ。

 しかし、それが起こりうるのはせいぜい神話の中ぐらい。つまり、能力の強化とはまさに神の領域の力なのだ。

 ならば有り得ないのでは無いか?とは思うが、実際に目の前で人体だけでなく同時に武器までも膨張し強化されるのを見た。ならば能力も強化されてもおかしくないだろう。

「ど、どうするのあれ~……」
「攻撃し続けるんだ!能力ならいつかは魔力が尽きる!あそこまでの強さならそれなりに魔力消費も激しい筈だ!」

 シエの言葉にレイが返す。確かに、魔力切れまで耐えればいつかはあのシールドが使えなくなる時が来るだろ。だが……。

「俺達がそこまで持つかどうか、怪しいがな」
「……もっと矢を持って来ておくべきだった」

 俺達も体力は無限ではない。更にさっきのドラゴン戦でだいぶ削られた。

 チビ筋肉野郎からデカ筋肉野郎になったアイツが無尽蔵に力を振るう様子を見るとどうしても耐久戦は得策には思えなかった。

 俺は俺達を囲んでいる他の冒険者達を見る。
 魔術師はそれなりにいる。彼らを使えば物量戦も出来なくはないが、その場合ヘイトが俺たちから離れてその魔術師に向かう可能性がある。

 俺達も避けることは出来ても押しとどめることは出来ない。彼らに頼むとすれば最後の止めとしての一斉放射ぐらいだった。

「あぁ、そういえばお前みたいな女も居たなぁ!邪魔だからお前から殺すぅ!!」
「うへぇ!?こっち来るの~!?」
「くっ、やっぱりそっちに行くか……!」

 敵と戦っているのに遠距離から攻撃されれば誰だってそちらの対処を考える。
 厄介男も自動防御の能力があるとはいえ、突然魔術を撃たれれば嫌でも意識が向いてしまうだろう。

「行かせないよ!」
「フン!雑魚は消えやがれ!」
「……近寄るな。『貫通狙撃』」
「効かねぇ!!」

 弓使いの攻撃が一直線に厄介男を射抜かんと放たれるが厄介男は何事も無かったように近づく。
 あのシールドは衝撃すらも吸収するのかもしれない。

「あっ、そうだ。アレが使えるかも……。弓使いさん!一瞬でいいからあいつの動き止められる?」
「……多分、一度だけなら」
「お願い!」
「……了解」
「オレ様にはどんな攻撃も無意味なんだよぉぉ!!!」

 厄介男は叫びながら斧を振り回しながらシエ達に近づく。
 走る速さこそ早くはないが、止めることは勿論、振り回す斧で近づくことも出来なかった。

「……『煙幕の矢《スモークアロー》』」
「ぐわっ!?なんだこれは、煙か?!邪魔くせぇがこんなのじゃ足止めは出来ねぇぜ!!」
「……『障害物の矢《ブロックアロー》』」
「グベヘッ?!」
「よし、今だ~♪」

 弓使いが最初にはなった矢は厄介男の目の前でシールドに阻まれた瞬間に大量の煙を発生させた。

 一瞬の動揺はあったものの、それでも殆ど速度を落とさず厄介男は走り続ける。
 しかし、次に放った矢はどうやら地形に影響を与える物のようで、十センチほど飛び出した地面に前が見えなかった厄介男は見事に足を引っかけてそのまま転倒した。

「イメージは~……広く浅くじゃなくて、狭く深く一点に!『奪魔との旧約』!」

 ペチッ!

 転倒して足元にある厄介男の頭をシエが手で叩く音が響く。

 その瞬間、厄介男が纏っていた膨大な魔力が一瞬にして消える。いや、シエに奪われる。

「「「!?」」」
「う、うおぉぉぁ!?!?」
「シエ!」

 俺は厄介男が暴れ出す前にシエに近づき、その体を持って離れる。
 俺が助けてくれるのをわかっていたからか俺がシエを触る前に能力を解除したシエは、次に杖を上に突き上げる。

「今度は~広く浅く広範囲に!……暴風の荒波よ」
「「!?」」
「な、なんだ!?魔力が……」
「どうなってるんだ!?」

 突然魔力が奪われるという謎の現象に冒険者達は騒ぎ始める。それは勿論、レイや厄介男達も例外では無い。

「障壁を貫き、天の道とせよ、『天乱貫《あまくだれ》』!!」
「「「「うわぁぁぁ!?!?」」」」

 ドーム内に巨大な竜巻が現れる。属性は水属性と風属性と……これは、地属性!?

「持ってけぇ~~♪」
「地面が?!」

 地面が揺らいだかと思うと、地面の床が剥がれるように浮かび上がり竜巻に、厄介男に向かって飛んで行ったのだった。

 ♦♦♦♦♦

 どんどんシエが強くなっていく……。

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『女神様からもらったスキルは魔力を操る最強スキル!?異種族美少女と一緒に魔王討伐目指して異世界自由旅!』という作品も連載してます!ぜひ読んでみてください!

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