上 下
35 / 223
二章 強さの道筋

三十五話 種類の偏り

しおりを挟む




 司会者の男がいなくなった後、周りの冒険者達もぞろぞろと自分が受けたい訓練の場所に向かって歩き出す。

「じゃ、私達もここで一旦お別れだね~。テル君はやっぱり武術?」
「ああ、シエはどうするんだ?」
「私はね~……能力にする!」

 少し悩む様子を見せた後、シエはそう宣言する。

「魔術じゃなくていいのか?」
「うん!どの道、魔術を極めるには絶対に通らなきゃならない道だしね!じゃ、いってきます♪」

 シエは俺の俺の肩をポンポンと叩いた後に能力の書かれた看板に向かって行った。

 シエを見送った後、俺も武術の訓練場所に向かう。

 どうやら全体の割合的に武術の訓練に参加する人が一番多いようだ。まぁ当たり前か。冒険者になる人のほとんども能力は身体強化系なのだから。

 紋章の能力にも種類があり、偏っている割合がある。

 この世の約五割以上の紋章は『黄』ランクで、『身体強化系』と呼ばれる能力だ。
 名称通り身体を強化する能力で、例えば腕力を強化したり、脚力を強化したりする能力が多い。

 少しレアならあの時の盗賊のような身体を硬化する能力もあるが、ほとんどが身体強化系で魔力での身体強化の補助程度の能力が普通であり、一般的な能力だった。

 実際、この場にいるほとんどの人が能力として身体強化を持っているだろう。特に武術訓練に参加した殆どは。

 次に多い能力の種類は約三割しか存在しない『緑』ランクで、『付与系』だ。

 これも名称通り物体、もしくは魔力体に目に見える形で何かを付与する能力に分類される能力だ。

 それはまさにゼロスの能力がこれに当てはまり、身体を炎で包んだり、もしくは武器に炎を纏わせたりする能力が該当する。

 中には魔術に能力を付与することで威力を上げたり能力の効果で擬似的に二属性魔術を放ったりなんてことが出来る能力だ。

 因みに俺の能力がこれに分類されるかは微妙な所だ。

 そして次に約一割以上が『青』ランクが分類されることが多い『特殊』系。
 実はその半分近くは貴族出会ったりする。

 特殊系は今までの身体強化や炎を纏う、なんてわかりやすい能力では無い。

 有名な能力だと物体の大きさを変えられたり、自分の見た目を全くの別人に変装できたり、物を何も使わず動かしたり等だ。

 そして最後の約一割以下は『赤』と『紫』ランクに分類されることが多い『特異系』。

 例として、相手の心を読んだり、見るだけで相手を石に変えたり、自身の身体を別の物に変化させたり……等だ。

 特異系に関してはほとんど伝説に近いが、紫ランクの冒険者は特異系の能力持ちも存在するし『七紋章の血族』にも稀に産まれる。

 そして『虹』ランクに関してだが、これは歴史上『虹』ランクの能力を持っている人物は一人しか確認されていないので割合には入っていない。

 一説によるとその能力はこの世に紋章を授けた能力なのではないかと言われてたりする。

「さて、集まったなお前ら。じゃあまず武器をしまってこの鍛錬用の木でできた武器を持て!まずはお前らの実力を確認する!」

 気がつくと全員が別れ終わり、それぞれ訓練が始まった。どうやら使う武器は訓練用の武器のようだ。

 用意された木の武器が置かれた場所に向かい木刀を取る。
 俺以外取る様子はない。やはり本数的にやはり刀は人気がないのだろうか?

 気にしてもしょうがないので俺は刀を背中に背負い、木刀を腰に備えた。

 実は紋章の器の最も大きいと言われる弱点の一つ、紋章の機能である『収納』に器は入れることができないのだ。

 ならそこらに置いとけばいいのでは?とも思うかもしれないが、器は持っておかないと紋章の能力を使えない。

 器を奪われたとしても感覚的にどこにあるかわかるが、戦場で敵に奪われたりすれば武器と能力を同時に奪われた事になり、圧倒的に不利になってしまう。

 その分持っていれば通常の能力より強力な能力を持ち、絶対に壊れない武器を使えるという利点があるが、戦場では無い日常生活に影響を与えてしまうのが器のデメリットだった。

 まぁ収納できないものは仕方ない。収納の中がいっぱいで入らないって事にしよう。

「よし、全員準備で来たな。次は二人一組になれ!持っている武器が同じではなくてかまわん!」

 これは困った。周りの冒険者は同じパーティの人や仲が良い人と組んでいるようで、そんな人は俺には一人もいなかった。

 くっ、まさかこんなところで俺の人付き合いのなさが露見するとは……。

「ちょっといいですか~?なんで二人一組なんて面倒くさいことをするんですか~?」
「ん?ああ、先にやることを説明すると、二人一組で軽く武器の打ち合いをしてもらう。本当に軽くな。とは言っても手を抜けと言っているわけではないぞ。あくまで武器の打ち合いなので倒すわけじゃないからな?これはさっきも言った通りお前らの実力を見るためにやってもらう。一人一人確認するのは時間の無駄だからな。あ、身体強化以外の能力の使用も無しだ」

 指導者の戦士っぽい冒険者は三度も念を押すが……なんというか、一人だけ結果が見えてるような……。

 っと、そんなことはどうでもいい。早く俺も誰かと一緒に組まないと完全にボッチになってしまう!

「ねぇ、君。空いてるなら僕と組んでくれないかい?」

 そんなところに救世主が現れる。振り向くと木の槍を持った青年が立っていた。

「もちろんだ」
「よかった!実は仲のいい冒険者があまりいなくて困っていたんだ」
「ああ、俺もこの街に来たばかりでいなくて困っていたところだ」
「ふふっ、僕と同じだね!」

 青年はニコッと笑う。その笑顔は青年というより少年と言った方がいい気がするぐらい幼さを感じられる笑顔だった。

 これが世に言うショt……

「あ、今絶対僕の事子供っぽいってバカにしたでしょ」
「……」

 ……俺はそんなに顔に出やすいのだろうか?

 どうやら俺は賭け事など向いていないようなのでカジノ等は行かない様にしようと誓ったのだった。


 ♦♦♦♦♦

 面白い!続きが読みたい!と思ったら是非お気に入り登録等をよろしくお願いします!

『女神様からもらったスキルは魔力を操る最強スキル!?異種族美少女と一緒に魔王討伐目指して異世界自由旅!』という作品も連載してます!ぜひ読んでみてください!


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

出て行けと言って、本当に私が出ていくなんて思ってもいなかった??

新野乃花(大舟)
恋愛
ガランとセシリアは婚約関係にあったものの、ガランはセシリアに対して最初から冷遇的な態度をとり続けていた。ある日の事、ガランは自身の機嫌を損ねたからか、セシリアに対していなくなっても困らないといった言葉を発する。…それをきっかけにしてセシリアはガランの前から失踪してしまうこととなるのだが、ガランはその事をあまり気にしてはいなかった。しかし後に貴族会はセシリアの味方をすると表明、じわじわとガランの立場は苦しいものとなっていくこととなり…。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

処理中です...