本当にある事故物件の話

アカバネ

文字の大きさ
上 下
22 / 24
板橋区にある事故物件の話

憑依 ー 復讐の蒼い炎 坂口編2 ー

しおりを挟む
 「坂口さんに振りかけた赤い液体の正体は、赤ワインに、はちみつを混ぜたものです。有名な闇金の漫画に出てくるやり方なんですが、今回の拷問に使わせていただきました」

 「私の復讐計画で一番大事にしている事は『出来るだけ長く、出来るだけ苦しめてから』という事です」

 「身体を傷つける拷問は世の中に沢山ありますが、痛さや恐怖でショック死する可能性がゼロではありません。その点、虫さんは最高です。虫に多少刺されても、死ぬことはまずありませんから……フフフ」

 「赤い液体赤ワインとはちみつを坂口さんに振りかけてから3時間ほど経過しています……今ごろ坂口さんがどうなっているのか、結果が楽しみです」
 
 …………

 ジジジ……ジジジ……と画像が乱れ……日笠千鶴ひかさちずるが画面に映る。

 日笠千鶴ひかさちずるは少し手前に車を停めて、坂口の様子を観察していた。
 
「誰か~ 誰か~ 助けてくれ~」

「頭のおかしい女に拷問されているんだ~ 助けてくれ~ 殺される~」

 坂口は必死に声を張り上げて、助けを求めていた。

「全く『頭のおかしい女』だなんて、失礼しちゃいます。坂口さんには、追加でペナルティが必要みたいですね」

 軽ワゴンエブリイバンに乗った日笠千鶴ひかさちずるが帰ってきた。

 今まで大声で助けを求めていた坂口だが、軽ワゴンエブリイバンが見えた瞬間、急に大人しくなった。

 充電式の投光器を手に持ち、坂口に向かって大きく手を振る日笠千鶴ひかさちずる

 ワインの匂いと甘い蜜に誘われた、夜行性の虫たちが、これでもかというほどに坂口に集っていた。

 アリ。アブ。ブヨ。ガ。クワガタ。カマキリムシ。カメムシ。セミ。バッタ。カマドウマ。ダニ。ヤマビル。

 そしてもちろん、大量の蚊。

「あやさん……助けてくれ、もう限界だ……僕は本当に虫が苦手なんだ」涙を流しながら必死に訴える坂口。

 坂口は誰か見分けが付かないないほど、顔の形が変わっていた。それはまるで12ラウンドフルで打たれ続けた、試合後の負けボクサーのような感じだった。

「ただいま帰りました、坂口さん。良い子にしてましたか?」

「もちろん良い子にしてました。彩さんが帰ってくるのを、大人しく待っていました」息を吐くように嘘をつく坂口。

「えらいえらい。お利口な坂口さんには、何かご褒美をあげないといけませんね~」うーんと笑顔で悩んだふりをする日笠千鶴ひかさちずる

「それなら頼みがある、蚊取り線〇を焚いてもらえないだろうか、もう限界なんだ……痒くて痒くて気が狂いそうだ」

「蚊取り線〇ですか、分かりました」

 日笠千鶴ひかさちずる軽ワゴンエブリイバンの後部座席から、クーラーボックス、柄杓、追加の赤い液体赤ワインとはちみつを持って戻って来た。

 早速クーラーボックスを開けて、坂口の周りに柄杓でドライアイスを撒き始める。

「彩さん……僕は蚊取り線〇を焚いてくださいとお願いしたんですが……」

 ドライアイスを撒き終え、今度は赤い液体赤ワインとはちみつが入ったペットボトルを、笑顔で上下にシェイクする日笠千鶴ひかさちずる

「おい、まさか、またそのベタベタするワインをかけるつもりか、やめてくれ、やめてくれ、やめてくれ」

 坂口の言葉は完全に無視して赤い液体赤ワインとはちみつを坂口の全身にぶっかける。

「う、うわっぷ、ぷわっ、や……約束が違うじゃないか、ご褒美を貰えるはずじゃあ……」

「坂口さん、に一体何を求めているんですか?」

「き、聞いてたのか」
 
「はい、この耳でしっかりと」
 
 そう言いながら投光器の角度を調整。坂口の全身をしっかりと照らしてから、ネジを固定する。

「ふわ~、今日は色々と楽しい事が多すぎて、すっかり眠くなってしまいました」

「待ってくれ、寝る前にこの虫を何とかしてくれ。頼む、この通りだ」

 必死に土下座して頼み込む坂口。

「まだ少し早いですが、夜更かしは美容にも悪いので、私はそろそろ寝ますね坂口さん。おやすみなさい」

 ぺこりと頭を下げてから、坂口に背を向ける日笠千鶴ひかさちずる

「お前は鬼だ、悪魔だ、死ねぇぇ、死んでしまえええええ」

 その叫び声を聞き、悪魔のように微笑む日笠千鶴ひかさちずる

 寝る前の日課にしている、ストレッチを軽くこなしたあと、蚊帳付きハンモックに潜り込む。

 後方からは、投光器の光に寄って来た、新たな虫たちに集られ悲鳴をあげ続ける坂口。

「坂口さんの悲鳴は、まるでクラシック音楽のように心地良い。今日は良い夢が見れそうです」

 日笠千鶴ひかさちずるの瞼に合わせて、画面がゆっくりと暗くなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

意味がわかるとえろい話

山本みんみ
ホラー
意味が分かれば下ネタに感じるかもしれない話です(意味深)

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

庭木を切った隣人が刑事訴訟を恐れて小学生の娘を謝罪に来させたアホな実話

フルーツパフェ
大衆娯楽
祝!! 慰謝料30万円獲得記念の知人の体験談! 隣人宅の植木を許可なく切ることは紛れもない犯罪です。 30万円以下の罰金・過料、もしくは3年以下の懲役に処される可能性があります。 そうとは知らずに短気を起こして家の庭木を切った隣人(40代職業不詳・男)。 刑事訴訟になることを恐れた彼が取った行動は、まだ小学生の娘達を謝りに行かせることだった!? 子供ならば許してくれるとでも思ったのか。 「ごめんなさい、お尻ぺんぺんで許してくれますか?」 大人達の事情も知らず、健気に罪滅ぼしをしようとする少女を、あなたは許せるだろうか。 余りに情けない親子の末路を描く実話。 ※一部、演出を含んでいます。

JOLENEジョリーン・鬼屋は人を許さない 『こわい』です。気を緩めると巻き込まれます。

尾駮アスマ(オブチアスマ おぶちあすま)
ホラー
ホラー・ミステリー+ファンタジー作品です。残酷描写ありです。苦手な方は御注意ください。 完全フィクション作品です。 実在する個人・団体等とは一切関係ありません。 あらすじ 趣味で怪談を集めていた主人公は、ある取材で怪しい物件での出来事を知る。 そして、その建物について探り始める。 あぁそうさ下らねぇ文章で何が小説だ的なダラダラした展開が 要所要所の事件の連続で主人公は性格が変わって行くわ だんだーん強くうぅううー・・・大変なことになりすすぅーあうあうっうー めちゃくちゃなラストに向かって、是非よんでくだせぇ・・・・え、あうあう 読みやすいように、わざと行間を開けて執筆しています。 もしよければお気に入り登録・イイネ・感想など、よろしくお願いいたします。 大変励みになります。 ありがとうございます。

ホラーの詰め合わせ

斧鳴燈火
ホラー
怖い話の短編集です

処理中です...