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第四章 青年編

第六十一話 メルニア王国

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 俺は六年間で、ムー大陸の言語も覚えた。

 まあムー大陸の言語は、そこまでレムリア大陸と変わらなかった為習得するのに時間は掛からなかったが、魔大陸の言語は相当時間がかかったな。


 俺はそう思いながらメルニア王国に入った。そこは、アドルフ王国ほど賑わってないが、相当大きかった。

 以前、リリアと一緒にアドルフ王国に入った時、はしゃいだのを思い出す。

 「よし、闘技場に行くか」

 俺はタマにそう言って、闘技場に向かって進む。

 鍛治職人は、この大会で勝ったら行こうと思っている。

 これから、行っても作ってくれるか分からない。

 そう言うのも、その人は勇者の剣などの、最強と言われるような剣を何本も作った人の息子らしい。

 そんな人が、何の実績もない俺なんかに剣を作ってくれるわけがない。

 なので、今回の闘技場で実績を上げて作ってもらおうという話だ。

 「闘技場に参加したいんですけど」

 俺は、闘技場の目の前にいる受付のような人に話しかける。

 「はい。こちらの参加料金は千円ですが持っていますか?」

 この闘技場でお金がかかることは知っていた為、お金を渡す。

 「それでは、闘技場は一週間後です。頑張ってください」

 受付の人の営業スマイルを見て、俺達は早速この国を見て回ることにした。

 やる事もないしな。

 だが、俺はここで一つやらかしてしまった。

 「あれは!」

 そんな声が聞こえた。
 
 その声の主は獣人の猫人であった。

 以前まではレムリア大陸では、殆どの獣人がいなかった。

 だがこのムー大陸では、獣人は普通にいる。

 そして忘れがちだが、一応タマは猫神なのだ。

 「げ!」

 タマはその声を聞こえた主を見て、俺の後ろに隠れた。

 その人は俺達に近づき、声をあげた。

 「猫神様でございませんか!?」

 俺の後ろにいるタマを見てそんな声をあげる。

 「猫違いですニャー」

 「ニャー!?」

 タマがニャーと言って驚いている。

 「タマ、この猫人誰?お前の知り合い?」

 「タマ!?」

 俺が後ろにいるタマに話しかけると、その猫人は更に驚く。

 「あなた!猫神様に対してタマとはなんですか!それにその言葉遣いは何ですか!」

 その人は、俺に注意するが、俺にとってこれは通常だ。

 それにタマに対して様をつけろというのか。

 こいつにそんな事をしたら、調子に乗って何でも命令するに決まってる。

 「ご主人様。今すぐ逃げようニャー」

 「ご主人様!?」

 その猫人は俺とタマを交互に見る。

 俺も今すぐ逃げたいのだが、これは逃がしてもらえそうにないと思う。

 しかもこの人、良く見たら相当強い気がするんだが。

 「一旦落ち着きましょう」

 俺がそう言うと、その人は深呼吸をして落ち着いた。

 「すいません。何年ぶりに猫神様にお会い出来て、驚いてしまいました。改めまして、猫神様の警護をしているミラです」

 「俺はこいつの主人のレイロードです」

 俺は、そう言って手を差し出したが、その人はその手を払いのけた。

 「何てことをするニャ!」

 タマが怒るが俺がそれを手で制した。

 「こんな人に握手する必要もありません。あたしの要件は一つです。猫神様を返してください」

 そんな要件が来たのだが、その瞬間後ろから悪寒が走った。

 俺はその原因を見るとタマが今まで見たこともないような怒った表情をしていた。

 「今すぐご主人様に謝れ!」

 「ですが!」

 「謝れ」

 お前ギャグキャラじゃなかったのかよと俺はその間も思ってしまった。

 すると猫人の人は俺の方を振り返り、

 「先程はすいませんでした」

 そう謝ってきた。

 「いえ。気にしてませんので。タマも落ち着け」

 俺がそう言うと、タマも怒りを鎮めてくれた。

 「それで何であなたがここにいるニャー?」

 タマがいつもの調子で猫人に聞いた。

 「猫神様を探していたんですよ!急にいなくなるんですから!何年たってもみつからないし、大変だったんですよ!」

 「しょうがないニャ。召喚されたんだニャ」

 おい。それだとまた俺が怒られるじゃないか。

 もっと誤魔化せよ!

 俺がそう言う前に、ミラさんがまたしても声を荒げる。

 「どういうことですか!?猫神様を召喚するなんて!」

 なので俺は今までの事を正直に全部話した。

 「そう言うことですか。昔から、猫神様は護衛の目を掻い潜って獣人の森を抜けようとしていましたし」

 こいつそんな事をしていたのか。

 俺がタマを見ると、タマは目を逸らした。

 「しょうがないニャ。暇だったニャ」

 それで、逃げ出された方はたまったもんじゃないだろうな。

 俺達は、大分色んな人の注目を集めていた為場所を移した。

 三人で、そろそろ昼ご飯ということもあってご飯を食べながら、続きを話した。

 今度は、ミラさんも落ち着いたようだ。

 「私からの要求は一つです。猫神様を返してください」

 「私が嫌ニャ」

 それに俺が答えるよりも前にタマが答えた。

 「俺も昔までならまだ良かったですが、今は渡したくありません」

 この人も困っているのかもしれないが、もう俺にとってタマは家族だ。

 もしもタマが戻りたいというならしょうがなく渡すが、タマも反対してるんだ。

 「何でですか?猫神様には何不自由なく過ごさせてきたつもりですが」

 「それが嫌なのニャ。つまらないニャ。私はもっと自由気ままに過ごしていきたいニャ」

 タマは、首を横に振って、絶対に行かない様子だ。

 「なら、レイロードさんが死んだらどうするんですか?猫神様の寿命はレイロードさんより長い筈ですよ」

 そこで、初めてタマが口を開かなくなった。

 これは、タマにも何も言えないのだろう。

 「ですから、森へ帰りましょう。森へ帰ってくださるなら、少しぐらい外出も許可しますから。」

 ミラさんは、タマにそう促す。
 
 だが、ここでホイホイ連れ行かれてたまるか。

 「大丈夫ですよ。俺が死んでも俺の家族がタマと一緒にいますよ。タマは皆に好かれてますから」

 俺がそう言うと、ミラさんに余計な事を言うなと目で訴えられる。

 「そうニャ。私にはご主人様の家族がいるニャ」

 タマも元気を取り戻し、また反対する。

 「でしたら、レイロードさんは私より強いんですか?私より強くないのに猫神様を守れるんですか?」

 ミラさんにとってこの言葉は自信があったのだろう。

 「余裕でご主人様の方が強いニャ。だからもう諦めるニャ」

 その言葉に、ミラさんは唖然としていた。

 「何を言っているんですか?仮にも私は三獣士の一人ですよ?」

 三獣士とは何だろうか。

 俺はそれがもの凄く気になるんだが。

 「三獣士もコテンパンにやられるニャ。それほどまでにご主人様は強いニャ」

 その言葉にミラさんの眉が吊り上がる。

 これ絶対怒ってるよ。

 「いいでしょう!そこまで言うなら勝負をしましょう!私が勝ったら猫神様には帰っていただきますからね!」

 ミラさんは先程までの落ち着きが無くなり、店ということを忘れて、立ち上がって言った。

 「それでいいニャ。なら闘技場で勝った方に付いて行くニャ。ついでに他の三獣士も呼ぶといいニャ。全員コテンパンにやられるけどニャ」

 その言葉に、ミラさんはプルプル震えている。

 お前が戦う訳じゃないのに、挑発するなよ。

 だが、ミラさんが怖すぎて、口が出ない。

 「後悔しないでくださいね。では三獣士の誰かがレイロードさんに勝てなかったら帰っていただきますから!」

 そう言って、ミラさんはお金を置いて店を出て行った。

 「なあ。三獣士って何なんだ?」

 「三獣士は、獣人の中で、猫人、犬人、狼人の中の最強の奴らニャ」

 とんでもないじゃないか。

 「お前あんな事言ってたけど、俺勝てるのか?」

 「ご主人様は最強になるんじゃなかったのニャ?三獣士を倒せなかったら魔王なんて夢のまた夢ニャ」

 確かにその通りだな。

 「タマにしては珍しくまともな事言うじゃないか」

 「私がいつまともじゃないことを言ったのか教えて欲しい所ニャ」

 俺達はそれから宿に戻り、遊んだり鍛錬しながら過ごした。

 そして一週間後。

 少しずつ世界の時代が動き出す事をレイロードは知らない中、試合を楽しみにするのだった。
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