不死身探偵不ニ三士郎

ガイア

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菅原の泊まっている部屋の隙間から、手紙が差し入れられた。

『柊ゆらぎの行方不明事件について話がある。バラされたくなければ本日2時に休憩室まで来い。その時間までに部屋から出ることは許さない、守らなければバラす 探偵』

「……っ!!」

 菅原は、手紙をくしゃりと握りしめた。布団に包まり、菅原はブツブツと何かを呟き続けている。

「俺は悪くない、俺は悪くない、俺は悪くない、俺は悪くない、復讐は終わったんだ、そうだ、復讐は終わったはずだ」

 しばらく震えながら、さながら呪詛のように菅原は俺は悪くないという言葉をつぶやき続けた。

 こんこんと続いて部屋にノックが響いた。

「ひっ」


 *

 階段を降りると、休憩室の明かりはついていなかった。

「まだ来ていないのか」

 休憩室へと足を踏み入れた途端に、何者かに首を絞められる。

「姉さんの仇……!」

「成る程……やはりあなたでしたか」

 右手で首を絞められているロープを握りしめ、片方の手でさぐりながら後ろの電気をぱちりとつけた不二三は不敵に笑った。

何度も色々な方法で殺されかけているので、絞殺では気を失うくらいなのだ。

それに、不二三のバックには、信用のできる仲間。雪知がついている。

「あなただったんですか?」
「……」

 不二三の背後でロープを握りしめている犯人は、突然の光に目を細めた。

「現行犯ですよ、昭道誠也さん」
「……」

 悲し気な表情で雪知は昭道を見つめた。昭道はロープをすっと引くと鬼のような表情で不二三と雪知を睨みつけた。

「あの男はどうした?」

 温厚でニコニコしていた昭道とは、まるで別人のようにドスの効いた声だった。

「他の人を呼んできてもらっています」
「……探偵さん、あなたはあの殺人犯を庇うんですか?」

「庇うつもりはありませんよ」

 不二三は、顎に手をあてて昭道を指すように見つめた。

「殺人犯なら、あなたも菅原さんと近藤さんを殺そうとしたのだからそうでしょう?」

「はっ、あいつらがしたことに比べたら……俺は、地獄の閻魔様の代わりにあいつらに鉄槌を下そうとしただけだ」

「そのせいで、昭道香苗さんを失ってしまっているじゃないですか」

真剣な表情の不二三に対し、昭道はバカにしたようにはっ、とほくそ笑んだ。

「あんな女、姉でもなんでもない。小さかった親友の弟を引き取っただけに過ぎない。僕の姉は、姉さん。柊ゆらぎだけだ」

 階段から、ばたばたと音がする。菅原が人を連れてきたのだろう。

「探偵さんが全て謎を解いたから来るようにと言われたと 菅原君から聞いたが、本当ですか?」

 樫杉が、休憩室に入るや否や、ロープを握りしめている昭道を見て目を見開いた。
「昭道君……?これは、どういうことですか?」

「ぞろぞろと糞どもが」

 昭道が吐き捨てるように言った。その言葉使いと表情に樫杉は射貫かれたように言葉を詰まらせた。

「事件の真相がわかったと聞いたのですが……」

「ゆらぎについて、何かわかったんですか」

 谷口と伊藤、

「菅原さんに呼ばれてきたんですけど……」 

「連れてきました」

 そして立川と菅原は、休憩室へと到着した。

「……全員揃いましたか」

 不二三はぐるりと見まわして、旅館のメンバーが全員揃ったことを確認すると、事件の真相を語り出した。
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