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居酒屋の扉の前で
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なんだかんだ私は合コンの日を迎えた。がたんがたんと揺れる電車に揺られ、何度も深呼吸しながら、集まりの会場へと向かっている。
どうして結局行くことにしたのかというと、淡的にいえばきっと私は、寂しかったのだ。久々に貴子に会える機会に胸が躍ったのも、行ってみようと思ったのも、一人で過ごす夜を思えば、一人で悩む毎日を考えれば、同い年くらいの男女と独身の悩みなんかを話せたらなんて思っていた。
居酒屋なんて、飲み会なんて最悪な思い出しかないけれど……だめだ、不安で心が押しつぶされそう。そもそも、貴子の大学って凄く偏差値が高いところだったよね。主席とって授業料免除されたっていってたけど、そんな賢い人たちが集まる場所に私が行って話合うのかな?ずっと栄養素の話とかしてたらどうしよう。
はあ、やっぱり……。
「……やっぱり帰ろうかな」
居酒屋の前で、うろうろしている私は居酒屋の前で立ち尽くしている男性の独り言を聞いた。横目で見ると、眼鏡で、背が160センチ前後くらいしかなくて、猫背で、俯いているから顔はよく見えない。
「……なんですか」
「……!……!」
横目で見ていたことがバレたらしい、私は咄嗟に返事が思いつかずに、手をふわふわさせた。顔をあげた男性は、20代よりは上そうで、でも40代よりは若そうな印象を受けた。同い年くらいの男性と喋る機会がない私は、声の出し方を忘れた人魚のように口をパクパクさせて、こんがらがった脳みそをフル回転させた。
なんて言おう?見ていてごめんなさい?すみません?逆に無視して店に入る?でも集合時間より前だし、知り合いもいないし、お座敷の席で予約とってるって聞いてるけど、加藤で予約とってるから店の人にいってって言われたけど!
一人で待ってて、他の人が来た時、私が一人で座っているのを見てがっかりした顔してるのを見たらその場で帰りたくなる……!
どうしよう、どうしよう。余計な事ばっかり考えて頭がまとまらない。
「すみません……僕のことなんか見てなかったですよね」
「うえっ?え、っ」
「すみません」
男性は、ぼそっとそういって眼鏡をくいっとあげると、店に入っていった。
私は、それにも答えることができずに泣きそうになった。私、こんな調子で合コンなんかいけるのかな。無理でしょ、地味めな男性一人とも喋れなかったんだもん。
あー、ほんと、自分が嫌になる。えい、でもここまで来てしまったんだから。私は拳を握りしめて居酒屋へと入店した。
予約者の名前を告げると、すぐに座敷へと案内された。酒は飲めるが、居酒屋でわざわざ飲まない、嫌なことがあったりした時にやけになって飲む程度だ。
がらりと引き戸を開け、私は小さい声で「こんにちは」と言って中に入った。
どうして結局行くことにしたのかというと、淡的にいえばきっと私は、寂しかったのだ。久々に貴子に会える機会に胸が躍ったのも、行ってみようと思ったのも、一人で過ごす夜を思えば、一人で悩む毎日を考えれば、同い年くらいの男女と独身の悩みなんかを話せたらなんて思っていた。
居酒屋なんて、飲み会なんて最悪な思い出しかないけれど……だめだ、不安で心が押しつぶされそう。そもそも、貴子の大学って凄く偏差値が高いところだったよね。主席とって授業料免除されたっていってたけど、そんな賢い人たちが集まる場所に私が行って話合うのかな?ずっと栄養素の話とかしてたらどうしよう。
はあ、やっぱり……。
「……やっぱり帰ろうかな」
居酒屋の前で、うろうろしている私は居酒屋の前で立ち尽くしている男性の独り言を聞いた。横目で見ると、眼鏡で、背が160センチ前後くらいしかなくて、猫背で、俯いているから顔はよく見えない。
「……なんですか」
「……!……!」
横目で見ていたことがバレたらしい、私は咄嗟に返事が思いつかずに、手をふわふわさせた。顔をあげた男性は、20代よりは上そうで、でも40代よりは若そうな印象を受けた。同い年くらいの男性と喋る機会がない私は、声の出し方を忘れた人魚のように口をパクパクさせて、こんがらがった脳みそをフル回転させた。
なんて言おう?見ていてごめんなさい?すみません?逆に無視して店に入る?でも集合時間より前だし、知り合いもいないし、お座敷の席で予約とってるって聞いてるけど、加藤で予約とってるから店の人にいってって言われたけど!
一人で待ってて、他の人が来た時、私が一人で座っているのを見てがっかりした顔してるのを見たらその場で帰りたくなる……!
どうしよう、どうしよう。余計な事ばっかり考えて頭がまとまらない。
「すみません……僕のことなんか見てなかったですよね」
「うえっ?え、っ」
「すみません」
男性は、ぼそっとそういって眼鏡をくいっとあげると、店に入っていった。
私は、それにも答えることができずに泣きそうになった。私、こんな調子で合コンなんかいけるのかな。無理でしょ、地味めな男性一人とも喋れなかったんだもん。
あー、ほんと、自分が嫌になる。えい、でもここまで来てしまったんだから。私は拳を握りしめて居酒屋へと入店した。
予約者の名前を告げると、すぐに座敷へと案内された。酒は飲めるが、居酒屋でわざわざ飲まない、嫌なことがあったりした時にやけになって飲む程度だ。
がらりと引き戸を開け、私は小さい声で「こんにちは」と言って中に入った。
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