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地下アイドル♂は女装をする
【2】
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A子の言葉に冬街は動作を止めた。B子も同じように動きを止めたようだった。
控え室に緊張した空気が張り詰める。
地下アイドルは恋愛禁止が掟として存在する。人気が出る前も、出た後も、それは例外なく行われる。その理由はファンを一気に減らす危険性があるからだ。地下アイドルの魅力はアイドルとファンの距離が近いことにある。その関係上、恋愛関係の噂が流れるとファンは一気に減るのだ。それに嫉妬や怒りがこみあげるファンも少なからずいるため、人気な地下アイドルのスキャンダルは(小さな世界だが)世間を騒がせるものである。
それにファンは地下アイドルとその事務所にとって生命線のようなもの。ファンがいるおかげで食べていけるのだ。ファンが減ったらライブができなくなってしまうため、恋愛禁止の掟は必要なことなのである。
「鳥色とはなんの関係もないですよ。同期みたいなものです」
「あ、そうなんだ。じゃあなんで会いたいとか言うの?」
色恋沙汰が好きなのだろうA子はスマートフォンをいじりながら興味津々に問いかける。その隣でB子はカタカタと震えていた。携帯を固く握りしめているためか、指先が白くなっている。
「知りませんよ。そもそも私、あんなくずと付き合ってないです」
これは本音である。
鳥色という男は正真正銘のクズ。同性という立場から見ても彼の気質、性格、人格は最悪と言える。
誓約が嫌い、老若男女関係なく興味が湧いた人物だったらすぐに手を出す男だ。複数人と関係を持ち、その人たちの人生を破滅へと追い詰めている。まるでオム・ファタルのような性格をしている。
彼は誓約が嫌いであるにも関わらず、気に入った相手には指輪を贈るのだ。自分の所有物である証明のように。そう、B子が右薬指に嵌めているシルバーリングは彼が贈ったものである。B子は彼に惚れているため、自ら進んで薬指に嵌めたのだろう。
贈り物を送る行為は滅多にしない。彼は守銭奴で貪欲だから人に贈り物をするという行為はほとんどしない。むしろ貢がれることが大半だ。ファン達から無造作に搾取する。その中で気に入った相手、つまり誰よりも多く貢いでくれた彼女に対し周囲に隠れながら指輪を渡している。あなたが一番である、と。
B子もその一人だったということ。鳥色に喰われた女性の話を聞くと、皆そろって「イケメンだし悪い人じゃないから」と答える。しかし鳥色という男は付き合ってはいけない部類の男である。
なんせ人生を破滅へと導く存在なのだから。
A子は周囲の空気を読むことが疎いのか、B子の状態にも気付かないで鳥色との関係を暴こうとしている。
「性格はああだけど顔はとてもイケメンじゃん?ここ最近、SNSでの活動が注目されてテレビ出演が決まったみたい!やっぱりこの世の中顔なんだなって感じ~!冬街はあいつのタイプなんだろうね」
「そうですか。私は忙しいって伝えておいてください」
これ以上ここにいては身の危険があると判断した冬街はトートバッグに化粧品道具を入れながら帰宅する準備をし始める。最後、ルージュ色の口紅を鞄にしまうと冬街はパイプ椅子から立ち上がった。
周囲が見えていないB子に何をされるか分からない。後ろから鈍器で殴られでもしたら堪らないし、今の彼女ならやりかねない。ここは逃げるが勝ちだろう。
「鳥色に伝えてください。彼女たちを大事にしろって」
冬街は控え室をささっと出て帰路に着いた。
控え室に緊張した空気が張り詰める。
地下アイドルは恋愛禁止が掟として存在する。人気が出る前も、出た後も、それは例外なく行われる。その理由はファンを一気に減らす危険性があるからだ。地下アイドルの魅力はアイドルとファンの距離が近いことにある。その関係上、恋愛関係の噂が流れるとファンは一気に減るのだ。それに嫉妬や怒りがこみあげるファンも少なからずいるため、人気な地下アイドルのスキャンダルは(小さな世界だが)世間を騒がせるものである。
それにファンは地下アイドルとその事務所にとって生命線のようなもの。ファンがいるおかげで食べていけるのだ。ファンが減ったらライブができなくなってしまうため、恋愛禁止の掟は必要なことなのである。
「鳥色とはなんの関係もないですよ。同期みたいなものです」
「あ、そうなんだ。じゃあなんで会いたいとか言うの?」
色恋沙汰が好きなのだろうA子はスマートフォンをいじりながら興味津々に問いかける。その隣でB子はカタカタと震えていた。携帯を固く握りしめているためか、指先が白くなっている。
「知りませんよ。そもそも私、あんなくずと付き合ってないです」
これは本音である。
鳥色という男は正真正銘のクズ。同性という立場から見ても彼の気質、性格、人格は最悪と言える。
誓約が嫌い、老若男女関係なく興味が湧いた人物だったらすぐに手を出す男だ。複数人と関係を持ち、その人たちの人生を破滅へと追い詰めている。まるでオム・ファタルのような性格をしている。
彼は誓約が嫌いであるにも関わらず、気に入った相手には指輪を贈るのだ。自分の所有物である証明のように。そう、B子が右薬指に嵌めているシルバーリングは彼が贈ったものである。B子は彼に惚れているため、自ら進んで薬指に嵌めたのだろう。
贈り物を送る行為は滅多にしない。彼は守銭奴で貪欲だから人に贈り物をするという行為はほとんどしない。むしろ貢がれることが大半だ。ファン達から無造作に搾取する。その中で気に入った相手、つまり誰よりも多く貢いでくれた彼女に対し周囲に隠れながら指輪を渡している。あなたが一番である、と。
B子もその一人だったということ。鳥色に喰われた女性の話を聞くと、皆そろって「イケメンだし悪い人じゃないから」と答える。しかし鳥色という男は付き合ってはいけない部類の男である。
なんせ人生を破滅へと導く存在なのだから。
A子は周囲の空気を読むことが疎いのか、B子の状態にも気付かないで鳥色との関係を暴こうとしている。
「性格はああだけど顔はとてもイケメンじゃん?ここ最近、SNSでの活動が注目されてテレビ出演が決まったみたい!やっぱりこの世の中顔なんだなって感じ~!冬街はあいつのタイプなんだろうね」
「そうですか。私は忙しいって伝えておいてください」
これ以上ここにいては身の危険があると判断した冬街はトートバッグに化粧品道具を入れながら帰宅する準備をし始める。最後、ルージュ色の口紅を鞄にしまうと冬街はパイプ椅子から立ち上がった。
周囲が見えていないB子に何をされるか分からない。後ろから鈍器で殴られでもしたら堪らないし、今の彼女ならやりかねない。ここは逃げるが勝ちだろう。
「鳥色に伝えてください。彼女たちを大事にしろって」
冬街は控え室をささっと出て帰路に着いた。
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