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廃墟
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俺は自宅のある街から電車で一時間半程の片田舎にあった。
芳樹君と二人で目的地の駅まで行く。
駅は無人駅で周りには本当に小さなターミナルと民家。
そして小さいスーパーマーケットがあるだけだった。
「よし、こっからまあまあ歩くぞ」
「はい」
どうやら目的の建物は駅から徒歩四十分の地点にあるようだった。
歩いていると意外なことにこの町にはそれなりに人が住んでいる。
駅前は閑散としているが少し歩けばコンビニ
、ドラッグストア、ハンバーガーチェーンやラーメン屋といった店がありそれなりに車の往来があった。
車を見ていると老人が多めではあるが若い人や自転車に乗った小中高生なんかもそれなりにいた。
歩き始めて三十分ほど経った頃とある交差点に辿り着いた。
一車線だがそれなりに大きい道路が横に流れている。
目についたのはその先だ。
道幅が少し狭まって坂となっており周りには木々が生い茂っている。
坂になっているからかそれとも木々による光の遮断のせいなのかまるで洞穴の様になっていた。完全な暗闇では決してないが薄暗くまるで怪物の口、あるいはこの世とあの世の境目のようだった。
足が止まる。本当に大丈夫なのだろうか。
もし幽霊が存在したのなら昔聞いた怪談のような何か取り返しのつかない事態になる可能性だってある。
そもそも芳樹は信用していいのか?彼が殺人鬼だったら?
押し殺したはずの不安が一気に湧き出てくる。
そんな俺の様子に気づいたのか芳樹君が声をかけてきた。
「どうした?ビビっちゃったか?」
笑いながら、それでいて優しげな声に少し落ち着きを取り戻す。
「いえ、大丈夫です、少し考え事してて」
と、笑顔で答えた。
芳樹君はもうすぐだぞと返した。
交差点を渡り木々に囲まれた坂を登る。
遠くから見ると不気味に見えたが歩いてみるとそうでもない。
木々は程よく日光を隠し土と草の爽やかな香りが心地いい。
近くに川があるのか水の音が聞こえた。
道は狭まったが車の往来も少なくなり自然の美しさを堪能できる。
そうしてしばく歩いているとそれはあった。
道の左側にポツンと平屋の一軒家が建っていた。
「あれだ」
芳樹君が呟くように言った。
一見何処にでもある普通の民家でとても幽霊が出るとは思えない、とゆうか廃墟にすら見えない。
「なんてゆうか、全然普通ですね」
芳樹君の口角が上がった。
「うん、俺も初めてみたけど余裕そうだな」
二人で道を渡り家の前までやってきた。
ベージュの壁に茶色い屋根、前は砂利が敷かれ駐車場となっていた。
砂利のおかげなのか雑草もそれほど生えてない。
「じゃ、中入るか」
と芳樹君は鍵を取り出した。
おそらく不動産屋か個人かこの家の管理者から許可を得て借りたのだろう。
それを見て少し驚く。小さい頃に見たヒーローの正体を知ってしまった時のような、そんな少し寂しい感覚。
よく考えれば当たり前だ。不法侵入で撮影なんてありえない。
しかし、かろうじで残っていたこの家に対する畏怖の感情は消え去ってしまった。
なので鍵を開け中に入る芳樹君に自然と付いていった。
玄関は中々に広く右側に靴を入れる用の棚が置かれていた。
靴を脱ぎ家に上がる。
右側は壁と窓、左側にはそれなりの空間が広がっていた。
十畳以上はある広い長方形の空間で玄関から入って右側には高さ腰ほどの壁があり水道の無いシンクとコンロの無いガス設備がついている。おそらくこの空間はリビングとキッチンという事だろう。
左側は大きなガラス冊子で先程までいた砂利の駐車場が見えた。
正面の壁にはドアが二つあった。
フローリングの床は埃が少しあったが想像していたよりもずっと綺麗だ。
「意外と綺麗だなぁ」
部屋の中央に立つ芳樹君は抑揚のない声でそう言った。
おそらくがっかりしているのだろう。
これでは爽やかな中古一軒家でしかない。心霊ビデオって雰囲気ではないのは明白だ。
しかしそれは俺にとっては良い事でしかない。朽ち果てたような廃屋に一週間いなければいけないと思っていたが少し不気味ではあるものの、ここに一週間住むだけで二十万もの大金を得る事が出来るのだから。
「まあ、とりあえずカメラ何個か設置するからさ、適当に暇つぶしててよ」
そう言って芳樹君はカメラ設置の作業を始めた。
特にする事ない。スマホの充電は取っておきたい。一応モバイルバッテリーは三個持ってきてはいるが明るい内は使いたく無かった。
「芳樹君、もしかしてこのリビングみたいなとこで生活するんですか?」
暇だったので作業中の芳樹君に話しかけた。
「それでも良いけど、一応そっちの部屋に寝泊まりしてもらおうかなって」
と俺のいる方角を指差す。
振り返ると玄関に通じる通路の隣にドアがあった。ドアに近づき開けるとそこには六畳程の部屋があった。
「ここじゃあ流石に広すぎてキツイと思ってさ、まあ、好きにして良いよ」
後ろの声に分りましたと返事をした後その部屋を観察する。
入って右手にクローゼットらしき扉があり左の壁にはベッドがあった。
なんの変哲もない寝室だ。
角部屋なので窓も二つ付いていて明るく、リビングよりもかなり雰囲気が良い。
ベッドに腰を掛ける。
一週間で二十万。俺の心は高鳴っていた。最初こそ不安があったがそれはかなり小さくなっていた。
芳樹君と二人で目的地の駅まで行く。
駅は無人駅で周りには本当に小さなターミナルと民家。
そして小さいスーパーマーケットがあるだけだった。
「よし、こっからまあまあ歩くぞ」
「はい」
どうやら目的の建物は駅から徒歩四十分の地点にあるようだった。
歩いていると意外なことにこの町にはそれなりに人が住んでいる。
駅前は閑散としているが少し歩けばコンビニ
、ドラッグストア、ハンバーガーチェーンやラーメン屋といった店がありそれなりに車の往来があった。
車を見ていると老人が多めではあるが若い人や自転車に乗った小中高生なんかもそれなりにいた。
歩き始めて三十分ほど経った頃とある交差点に辿り着いた。
一車線だがそれなりに大きい道路が横に流れている。
目についたのはその先だ。
道幅が少し狭まって坂となっており周りには木々が生い茂っている。
坂になっているからかそれとも木々による光の遮断のせいなのかまるで洞穴の様になっていた。完全な暗闇では決してないが薄暗くまるで怪物の口、あるいはこの世とあの世の境目のようだった。
足が止まる。本当に大丈夫なのだろうか。
もし幽霊が存在したのなら昔聞いた怪談のような何か取り返しのつかない事態になる可能性だってある。
そもそも芳樹は信用していいのか?彼が殺人鬼だったら?
押し殺したはずの不安が一気に湧き出てくる。
そんな俺の様子に気づいたのか芳樹君が声をかけてきた。
「どうした?ビビっちゃったか?」
笑いながら、それでいて優しげな声に少し落ち着きを取り戻す。
「いえ、大丈夫です、少し考え事してて」
と、笑顔で答えた。
芳樹君はもうすぐだぞと返した。
交差点を渡り木々に囲まれた坂を登る。
遠くから見ると不気味に見えたが歩いてみるとそうでもない。
木々は程よく日光を隠し土と草の爽やかな香りが心地いい。
近くに川があるのか水の音が聞こえた。
道は狭まったが車の往来も少なくなり自然の美しさを堪能できる。
そうしてしばく歩いているとそれはあった。
道の左側にポツンと平屋の一軒家が建っていた。
「あれだ」
芳樹君が呟くように言った。
一見何処にでもある普通の民家でとても幽霊が出るとは思えない、とゆうか廃墟にすら見えない。
「なんてゆうか、全然普通ですね」
芳樹君の口角が上がった。
「うん、俺も初めてみたけど余裕そうだな」
二人で道を渡り家の前までやってきた。
ベージュの壁に茶色い屋根、前は砂利が敷かれ駐車場となっていた。
砂利のおかげなのか雑草もそれほど生えてない。
「じゃ、中入るか」
と芳樹君は鍵を取り出した。
おそらく不動産屋か個人かこの家の管理者から許可を得て借りたのだろう。
それを見て少し驚く。小さい頃に見たヒーローの正体を知ってしまった時のような、そんな少し寂しい感覚。
よく考えれば当たり前だ。不法侵入で撮影なんてありえない。
しかし、かろうじで残っていたこの家に対する畏怖の感情は消え去ってしまった。
なので鍵を開け中に入る芳樹君に自然と付いていった。
玄関は中々に広く右側に靴を入れる用の棚が置かれていた。
靴を脱ぎ家に上がる。
右側は壁と窓、左側にはそれなりの空間が広がっていた。
十畳以上はある広い長方形の空間で玄関から入って右側には高さ腰ほどの壁があり水道の無いシンクとコンロの無いガス設備がついている。おそらくこの空間はリビングとキッチンという事だろう。
左側は大きなガラス冊子で先程までいた砂利の駐車場が見えた。
正面の壁にはドアが二つあった。
フローリングの床は埃が少しあったが想像していたよりもずっと綺麗だ。
「意外と綺麗だなぁ」
部屋の中央に立つ芳樹君は抑揚のない声でそう言った。
おそらくがっかりしているのだろう。
これでは爽やかな中古一軒家でしかない。心霊ビデオって雰囲気ではないのは明白だ。
しかしそれは俺にとっては良い事でしかない。朽ち果てたような廃屋に一週間いなければいけないと思っていたが少し不気味ではあるものの、ここに一週間住むだけで二十万もの大金を得る事が出来るのだから。
「まあ、とりあえずカメラ何個か設置するからさ、適当に暇つぶしててよ」
そう言って芳樹君はカメラ設置の作業を始めた。
特にする事ない。スマホの充電は取っておきたい。一応モバイルバッテリーは三個持ってきてはいるが明るい内は使いたく無かった。
「芳樹君、もしかしてこのリビングみたいなとこで生活するんですか?」
暇だったので作業中の芳樹君に話しかけた。
「それでも良いけど、一応そっちの部屋に寝泊まりしてもらおうかなって」
と俺のいる方角を指差す。
振り返ると玄関に通じる通路の隣にドアがあった。ドアに近づき開けるとそこには六畳程の部屋があった。
「ここじゃあ流石に広すぎてキツイと思ってさ、まあ、好きにして良いよ」
後ろの声に分りましたと返事をした後その部屋を観察する。
入って右手にクローゼットらしき扉があり左の壁にはベッドがあった。
なんの変哲もない寝室だ。
角部屋なので窓も二つ付いていて明るく、リビングよりもかなり雰囲気が良い。
ベッドに腰を掛ける。
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