上 下
2 / 2
甲斐の国の出

甲斐の国―信虎の時代1―

しおりを挟む
子「井伊家自体が……。」

父「まぁそうであるけれども、私は甲斐の出。縁あって今は彦根に居を構えておる。」

子「甲斐の出と言うことは。」

父「元は武田の家臣。」

子「甲斐の武田と言えば、あの織田信長でさえ恐れた……。」

父「のちに滅ぼされたわけではあるがな。」



ここから話は甲斐の話へ。

甲斐の武田家は守護大名から戦国大名になった稀な存在。そんな武田であっても……。



父「他国同様甲斐の国も国人や守護代に牛耳られておった。」

子「でも甲斐の守護大名は。」

父「都に在住する義務は無かったが、その代わり関東の面倒を見ることが求められていた。」



関東の騒乱に介入し、敗れた武田家は一時主を失う。その後、室町幕府の支援の下、甲斐への復帰を果たすも



父「基盤が弱く、国内では乗っ取り。国外からは侵略を繰り返される時代が続く。」



この騒乱状態に終止符を打ったのが



父「武田信虎様であった。」

子「あまり評判が良くない……。」

父「のちに信玄公と仲違いしたことと、家康様が信玄公を大事にしているため相対的に悪者の誹りを受けてはおるが、甲斐の国を安定させたのは信虎様で間違いはない。」



そんな信虎が武田家の家督を継いだ時、



父「武田家の領土言えるエリアは甲府盆地に限られていた。」

子「ほかの地域の国衆は?」

父「当然の如く信虎様の言うことなど聞くわけもない。厳密には、そのことが当時は当たり前であったのではあるが……。」



彼らの権益を奪うべく甲斐統一へ動く信虎。



父「まず東へ兵を進め小山田氏を服属。自分の妹を嫁がせ。」

子「小山田氏の影響力を使って間接的に統治した。と……。」



信虎が東に兵を進めていたその時、甲斐北西部でも動きが。



父「信濃の諏訪が甲斐の国に兵を進めて来た。」

子「ほぼ同時期と言うことは甲斐東部と諏訪が連動していた?」

父「その可能性もある。もしくは信虎様が東に兵を進め手薄となった北西部を諏訪が衝いたとも言える。」



そんな中、今度は甲斐南部から今川氏が。



子「『信虎はいくさばかりしていて』と言われていますが、実際は『いくさをせざるを得なかった』。」

父「そういう時代だった。と言うこと。この今川の侵入は関東との動きも絡んでおって。」



信虎の外交方針は両上杉との同盟関係を維持すること。



父「この両上杉と対立関係にあったのが後北条氏。」

子「議論ばかりやって、何も決めることが出来ず城を包囲された……。」

父「当時はそうでは無かったが、その北条氏は上杉と対立する一方、今川とは近い関係にある。」

子「となりますと自動的に今川と武田の関係は。」

父「もちろん今川が遠州同様甲斐の国を狙っていたとも言えるのではあるが。」



国衆との戦いと、今川による影響力の行使に打ち勝った信虎は甲斐の国を統一。



子「甲斐の国を統一することは=それまで間接的であった今川や諏訪と直接相対することに。」

父「一時的に今川や北条などと和睦をするも、信虎様の方針は両上杉との協調であるため、諏訪・今川・北条との緊張関係が融けることは無かった。」

子「地図で見ますと武田と上杉が連携出来る箇所が限られていますね。」

父「唯一連携出来る南関東に信虎様はそれ程興味を示していなかったことに加え、喫緊の課題とも言える今川と上杉は境を為していない。」



その上杉と信虎の嫡男・のちの信玄との婚姻が結ばれる。



父「この2年前にも似た動きがあり、その時は家臣の一部が反発。甲斐北西部で諏訪と合流する事態に発展。信虎はこれを撃破しての婚姻であったのであるが。」



その後信虎は今川攻めを敢行するも、北条の侵入を許すことになる。



子「甲斐への通路三方全てが敵ですか。当然その時上杉は。」

父「北条領を通らなければ。だからな……。」



三方からの侵攻に悩まされることになった信虎。この危機に信虎は。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

大将首は自分で守れ

俣彦
歴史・時代
 当面の目標は長篠の戦い。書いている本人が飽きぬよう頑張ります。  小説家になろうで書き始め、調子が出て来たところから転載します。

浅井長政は織田信長に忠誠を誓う

ピコサイクス
歴史・時代
1570年5月24日、織田信長は朝倉義景を攻めるため越後に侵攻した。その時浅井長政は婚姻関係の織田家か古くから関係ある朝倉家どちらの味方をするか迷っていた。

腐れ外道の城

詠野ごりら
歴史・時代
戦国時代初期、険しい山脈に囲まれた国。樋野(ひの)でも狭い土地をめぐって争いがはじまっていた。 黒田三郎兵衛は反乱者、井藤十兵衛の鎮圧に向かっていた。

【総集編】 時代短編集

Grisly
歴史・時代
⭐︎登録お願いします。 過去に起こった出来事を、新たな解釈で 短編小説にしてみました。

獅子の末裔

卯花月影
歴史・時代
未だ戦乱続く近江の国に生まれた蒲生氏郷。主家・六角氏を揺るがした六角家騒動がようやく落ち着いてきたころ、目の前に現れたのは天下を狙う織田信長だった。 和歌をこよなく愛する温厚で無力な少年は、信長にその非凡な才を見いだされ、戦国武将として成長し、開花していく。 前作「滝川家の人びと」の続編です。途中、エピソードの被りがありますが、蒲生氏郷視点で描かれます。

江戸の夕映え

大麦 ふみ
歴史・時代
江戸時代にはたくさんの随筆が書かれました。 「のどやかな気分が漲っていて、読んでいると、己れもその時代に生きているような気持ちになる」(森 銑三) そういったものを選んで、小説としてお届けしたく思います。 同じ江戸時代を生きていても、その暮らしぶり、境遇、ライフコース、そして考え方には、たいへんな幅、違いがあったことでしょう。 しかし、夕焼けがみなにひとしく差し込んでくるような、そんな目線であの時代の人々を描ければと存じます。

独裁者・武田信玄

いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます! 平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。 『事実は小説よりも奇なり』 この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに…… 歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。 過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。 【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い 【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形 【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人 【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある 【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。 (前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)

鬼が啼く刻

白鷺雨月
歴史・時代
時は終戦直後の日本。渡辺学中尉は戦犯として囚われていた。 彼を救うため、アン・モンゴメリーは占領軍からの依頼をうけろこととなる。 依頼とは不審死を遂げたアメリカ軍将校の不審死の理由を探ることであった。

処理中です...