旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になっていた私。どうやら自分が当主らしい。そこまでわかって不安に覚える事が１つ。それは今私が居るのは天正何年？

関係

私（武田勝頼）「我らが萩長沢両城で為すべき事は、岡崎の動きに注視しながら五井からの侵入に備える。ただし我らが兵を動かす事が出来るのは牧野の権益からはみ出ようとした時のみで、深追いは厳禁。今は五井が単体で動いているだけであるから真田だけで対応する事が出来てはいるのだが……。」

山県昌景「五井と岡崎が連動した時、厄介な事になってしまいます。」

私（武田勝頼）「それを防ぐためには五井を封じ込めなければならぬ。奴らを御油八幡に入る前に留めようとするならば……。」



　地図を眺めながら。



山県昌景「五井まで兵を進めなければなりません。しかしあそこに辿り着くためには更なる山を越えなければなりません。補給もままなりませんし、長沢の件を知っている以上。同じ失態を期待するのは無謀でしかありません。」

高坂昌信「殿。」

私（武田勝頼）「どうした？」

高坂昌信「敵を御油や八幡で活動させなければ宜しいのでありますね？」

私（武田勝頼）「そうだ。しかしその方法を見つける事が出来ずに困っている。」

高坂昌信「その事についてでありますが。」



　徐に複数の書状を拡げる高坂昌信。これら書状の送り先は全て牧野宛で、送り主は……。



武藤喜兵衛「……今川義元。」

高坂昌信「三河南進が決まってから、殿の了解の下。様々な調略活動を行って来ました。主に野田と牛久保であります。この内、牛久保については私。高坂が請け負い、牧野家当主康成と話し合いの場を持って来ました。主家の鞍替えと言う繊細な問題であります故、これまで殿を始め。具体的な報告はして来ませんでしたが、ここに至り問題が発生しました。そうです。五井による御油八幡への不法侵入であります。御油と八幡は牧野の権益であります。確かに牧野は家康には従いました。しかしそれは屈服ではありません。完全に対等とまでは言えませんが、関係は取引によって成立しています。織田と徳川の関係と位置付けても差し支えないかと。

　ただ徳川と牧野は今も友好関係にあり、我らを共通の敵と見做しています。それは事実であります。故に御油、八幡に入って来たのが信康自らであったのなら。ないし信康から事前に連絡があれば問題ありませんでした。しかし実際は異なる者でありました。

『五井が我が権益を脅かして来た。』

と……。

　この動きを見た私は牧野に連絡。会談の場を持った結果。こちらに並べました今川義元からの書状の数々をお預かりする事が出来た次第であります。」