143 / 318
目的は
しおりを挟む
鳥居強右衛門「何故、甲斐から遠く離れた斯様な地に固執するのでありますか?」
高坂昌信「『とっとと居なくなってしまえ。』
と言う事でありますね。」
鳥居強右衛門「いえ、そのようには申していません。」
高坂昌信「一言で言えば、先代の信玄公が行った外交の失敗が原因であります。元々我らと信長の関係は悪いものではありませんでした。勝頼の子供の母は信長の姪であります。家康についても共同でいくさを行った事がありました。本音の所は定かでありませんが、少なくとも表向きは良好な関係を築いていました。」
鳥居強右衛門「それが何故このような事に?」
高坂昌信「遠江の権益で争う事になった家康と、家康と同盟している信長の関係が最も大きかった。ただそれでも信長との関係が破綻する事はありませんでした。それが崩壊した要因となりますと……。」
織田信長と将軍足利義昭との関係悪化。それに伴う比叡山の焼討に一向宗徒の対立。
高坂昌信「ここに信長の遠山領併合が切っ掛けとなり、奥三河の国衆が我らに従う事になりました。目的は勿論、生き残るため。その一択であります。其方も同様では無いかと?」
鳥居強右衛門「確かに。」
高坂昌信「我らも同じであります。我らと織田の関係が元に戻る事はありません。徳川も同様であります。どちらかが滅亡するまでこの争いが終わる事はあり得ません。私共が奥三河を意地でも死守しようとしているのはそのためであります。
東三河の方々にとって我らは邪魔な存在でありましょう。我らが居なくなってしまえば、徳川家康の下。平和を謳歌する事が出来るようになります。外からの侵入者に気にする事無く田畑を耕す事が出来るようになりますし、物資の行き来も安全なものになります。そこから得られたものを蓄積する事により、いくさに頼らずとも豊かな暮らしを手に入れる事が出来るようになります。その事は我らも重々承知しています。
しかし今は出来ません。我らも生きるのに必死でありますので。このいくさ。負けるわけにはいきません。何故なら敗れた瞬間。私の一族並びに家臣とその家族がどのような憂き目に遭ってしまうのか。御存知でありましょう。」
鳥居強右衛門「……そうですね。」
高坂昌信「だからと言いまして、東三河がどうなっても良い。と考えているのではありません。そこも間違わないで下さい。我らは今後も三河北部を死守します。そして……。」
今、徳川との係争地となっている東三河南部を武田の手で安泰へと導いて見せます。
高坂昌信「しばしの猶予を願います。」
高坂昌信「『とっとと居なくなってしまえ。』
と言う事でありますね。」
鳥居強右衛門「いえ、そのようには申していません。」
高坂昌信「一言で言えば、先代の信玄公が行った外交の失敗が原因であります。元々我らと信長の関係は悪いものではありませんでした。勝頼の子供の母は信長の姪であります。家康についても共同でいくさを行った事がありました。本音の所は定かでありませんが、少なくとも表向きは良好な関係を築いていました。」
鳥居強右衛門「それが何故このような事に?」
高坂昌信「遠江の権益で争う事になった家康と、家康と同盟している信長の関係が最も大きかった。ただそれでも信長との関係が破綻する事はありませんでした。それが崩壊した要因となりますと……。」
織田信長と将軍足利義昭との関係悪化。それに伴う比叡山の焼討に一向宗徒の対立。
高坂昌信「ここに信長の遠山領併合が切っ掛けとなり、奥三河の国衆が我らに従う事になりました。目的は勿論、生き残るため。その一択であります。其方も同様では無いかと?」
鳥居強右衛門「確かに。」
高坂昌信「我らも同じであります。我らと織田の関係が元に戻る事はありません。徳川も同様であります。どちらかが滅亡するまでこの争いが終わる事はあり得ません。私共が奥三河を意地でも死守しようとしているのはそのためであります。
東三河の方々にとって我らは邪魔な存在でありましょう。我らが居なくなってしまえば、徳川家康の下。平和を謳歌する事が出来るようになります。外からの侵入者に気にする事無く田畑を耕す事が出来るようになりますし、物資の行き来も安全なものになります。そこから得られたものを蓄積する事により、いくさに頼らずとも豊かな暮らしを手に入れる事が出来るようになります。その事は我らも重々承知しています。
しかし今は出来ません。我らも生きるのに必死でありますので。このいくさ。負けるわけにはいきません。何故なら敗れた瞬間。私の一族並びに家臣とその家族がどのような憂き目に遭ってしまうのか。御存知でありましょう。」
鳥居強右衛門「……そうですね。」
高坂昌信「だからと言いまして、東三河がどうなっても良い。と考えているのではありません。そこも間違わないで下さい。我らは今後も三河北部を死守します。そして……。」
今、徳川との係争地となっている東三河南部を武田の手で安泰へと導いて見せます。
高坂昌信「しばしの猶予を願います。」
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
武田義信に転生したので、父親の武田信玄に殺されないように、努力してみた。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
アルファポリス第2回歴史時代小説大賞・読者賞受賞作
原因不明だが、武田義信に生まれ変わってしまった。血も涙もない父親、武田信玄に殺されるなんて真平御免、深く静かに天下統一を目指します。
死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~
未来人A
ファンタジー
主人公、田宮シンジは妹のアカネ、弟のアオバと共に異世界に転移した。
待っていたのは皇帝の命令で即刻処刑されるという、理不尽な仕打ち。
シンジはアンデッドを自分の配下にし、従わせることの出来る『死霊王』というスキルを死後開花させる。
アンデッドとなったシンジは自分とアカネ、アオバを殺した帝国へ復讐を誓う。
死霊王のスキルを駆使して徐々に配下を増やし、アンデッドの軍団を作り上げていく。
彼の名はドラキュラ~ルーマニア戦記~ ヴラド・ツェペシュに転生したら詰んでます
高見 梁川
ファンタジー
大学の卒業旅行でルーマニアの史跡を訪れた俺はドラキュラの復活を目論むカルト宗教の男に殺されたはずだった……。しかし目覚めて見ればそこはなんと中世動乱の東欧。「ヴラド兄様……」えっ?もしかして俺ドラキュラですか??
オリジナル小説
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
偽典尼子軍記
卦位
歴史・時代
何故に滅んだ。また滅ぶのか。やるしかない、機会を与えられたのだから。
戦国時代、出雲の国を本拠に山陰山陽十一カ国のうち、八カ国の守護を兼任し、当時の中国地方随一の大大名となった尼子家。しかしその栄華は長続きせず尼子義久の代で毛利家に滅ぼされる。その義久に生まれ変わったある男の物語
チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~
クロン
ファンタジー
俺は異世界の一般兵であるリーズという少年に転生した。
だが元々の身体の持ち主の心が生きていたので、俺はずっと彼の視点から世界を見続けることしかできなかった。
リーズは俺の転生特典である生産魔術【クラフター】のチートを持っていて、かつ聖人のような人間だった。
だが……その性格を逆手にとられて、同僚や上司に散々利用された。
あげく罠にはめられて精神が壊れて死んでしまった。
そして身体の所有権が俺に移る。
リーズをはめた者たちは盗んだ手柄で昇進し、そいつらのせいで帝国は暴虐非道で最低な存在となった。
よくも俺と一心同体だったリーズをやってくれたな。
お前たちがリーズを絞って得た繁栄は全部ぶっ壊してやるよ。
お前らが歯牙にもかけないような小国の配下になって、クラフターの力を存分に使わせてもらう!
味方の物資を万全にして、更にドーピングや全兵士にプレートアーマーの配布など……。
絶望的な国力差をチート生産魔術で全てを覆すのだ!
そして俺を利用した奴らに復讐を遂げる!
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる