43 / 318
後継候補
しおりを挟む
長坂釣閑斎「謙信には実の男子が居ません。彼が信じる真言宗や飯縄明神の戒律を順守しているためと言われています。このため謙信はこれまで不犯を貫いています。故に謙信は実の男子はおろか女子も居ません。この事は家を維持する上で由々しき問題であります。謙信にもしもの事があった時、越後が乱れるのを避ける事は出来ません。
勿論謙信もその事を理解しています。しかし彼の信仰がそれを許しません。そのため謙信は養子を2人迎え入れています。
1人が長尾顕景。越後魚沼上田庄の出。父は長尾政景で母は長尾為景の娘。謙信の姉であります。元々次男でありましたが兄が早世した事に加え、父が不慮の事故に遭ったため上杉の本拠地である春日山城に移動。そこで謙信の養子となり成長。その後、上田庄の者を率い関東や越中に出陣。越中では国人衆の取成をするなど上杉家中で重要な役割を担っています。」
高坂昌信「聞くところによりますと来年には……。」
長坂釣閑斎「はい。姓を上杉に改めると共に上杉一門衆の筆頭となると言われています。」
私(武田勝頼)「つまり後継候補に任命される運びとなった?」
長坂釣閑斎「そう捉えて差し支えないかと。」
私(武田勝頼)「しかし長尾の出が簡単に上杉を名乗るのは難しいのでは無いのか?」
長坂釣閑斎「確かにその通りであります。ただ長尾顕景の系譜を紐解いてみますと母方の祖母。謙信の母にあたる人物は上条上杉家の出であり、父方の曾祖母も上条上杉家の出身であります。上条上杉家は越後守護を輩出して来た家であります。故に長尾顕景が上杉を名乗る事に問題はありませんし、越後を継承するのに必要な系譜を手に入れている人物でもあります。」
私(武田勝頼)「越後を継承する?」
長坂釣閑斎「はい。」
私(武田勝頼)「長尾顕景の血筋から得る事が出来る正当な場所は越後だけと言う事になる事に間違いは無いか?」
長坂釣閑斎「間違いありません。」
私(武田勝頼)「それでは今、うちと謙信との間で結ばれようとしている和睦をなぞるだけになってはしまわないか?」
長坂釣閑斎「その通りであります。」
私(武田勝頼)「今議題にあがっているのは越後の事では無い。上野の事。関東の事であり、上杉と北条の関係を正常化させる事にあるのだぞ?」
長坂釣閑斎「存じ上げています。」
私(武田勝頼)「長尾顕景では解決する事は出来ないと思うのだが?」
長坂釣閑斎「殿の仰る通りであります。」
私(武田勝頼)「ん!?そう言えば……。」
長坂釣閑斎「その通りであります。謙信にはもう1人。養子が存在します。」
勿論謙信もその事を理解しています。しかし彼の信仰がそれを許しません。そのため謙信は養子を2人迎え入れています。
1人が長尾顕景。越後魚沼上田庄の出。父は長尾政景で母は長尾為景の娘。謙信の姉であります。元々次男でありましたが兄が早世した事に加え、父が不慮の事故に遭ったため上杉の本拠地である春日山城に移動。そこで謙信の養子となり成長。その後、上田庄の者を率い関東や越中に出陣。越中では国人衆の取成をするなど上杉家中で重要な役割を担っています。」
高坂昌信「聞くところによりますと来年には……。」
長坂釣閑斎「はい。姓を上杉に改めると共に上杉一門衆の筆頭となると言われています。」
私(武田勝頼)「つまり後継候補に任命される運びとなった?」
長坂釣閑斎「そう捉えて差し支えないかと。」
私(武田勝頼)「しかし長尾の出が簡単に上杉を名乗るのは難しいのでは無いのか?」
長坂釣閑斎「確かにその通りであります。ただ長尾顕景の系譜を紐解いてみますと母方の祖母。謙信の母にあたる人物は上条上杉家の出であり、父方の曾祖母も上条上杉家の出身であります。上条上杉家は越後守護を輩出して来た家であります。故に長尾顕景が上杉を名乗る事に問題はありませんし、越後を継承するのに必要な系譜を手に入れている人物でもあります。」
私(武田勝頼)「越後を継承する?」
長坂釣閑斎「はい。」
私(武田勝頼)「長尾顕景の血筋から得る事が出来る正当な場所は越後だけと言う事になる事に間違いは無いか?」
長坂釣閑斎「間違いありません。」
私(武田勝頼)「それでは今、うちと謙信との間で結ばれようとしている和睦をなぞるだけになってはしまわないか?」
長坂釣閑斎「その通りであります。」
私(武田勝頼)「今議題にあがっているのは越後の事では無い。上野の事。関東の事であり、上杉と北条の関係を正常化させる事にあるのだぞ?」
長坂釣閑斎「存じ上げています。」
私(武田勝頼)「長尾顕景では解決する事は出来ないと思うのだが?」
長坂釣閑斎「殿の仰る通りであります。」
私(武田勝頼)「ん!?そう言えば……。」
長坂釣閑斎「その通りであります。謙信にはもう1人。養子が存在します。」
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
武田義信に転生したので、父親の武田信玄に殺されないように、努力してみた。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
アルファポリス第2回歴史時代小説大賞・読者賞受賞作
原因不明だが、武田義信に生まれ変わってしまった。血も涙もない父親、武田信玄に殺されるなんて真平御免、深く静かに天下統一を目指します。
死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~
未来人A
ファンタジー
主人公、田宮シンジは妹のアカネ、弟のアオバと共に異世界に転移した。
待っていたのは皇帝の命令で即刻処刑されるという、理不尽な仕打ち。
シンジはアンデッドを自分の配下にし、従わせることの出来る『死霊王』というスキルを死後開花させる。
アンデッドとなったシンジは自分とアカネ、アオバを殺した帝国へ復讐を誓う。
死霊王のスキルを駆使して徐々に配下を増やし、アンデッドの軍団を作り上げていく。
彼の名はドラキュラ~ルーマニア戦記~ ヴラド・ツェペシュに転生したら詰んでます
高見 梁川
ファンタジー
大学の卒業旅行でルーマニアの史跡を訪れた俺はドラキュラの復活を目論むカルト宗教の男に殺されたはずだった……。しかし目覚めて見ればそこはなんと中世動乱の東欧。「ヴラド兄様……」えっ?もしかして俺ドラキュラですか??
オリジナル小説
偽典尼子軍記
卦位
歴史・時代
何故に滅んだ。また滅ぶのか。やるしかない、機会を与えられたのだから。
戦国時代、出雲の国を本拠に山陰山陽十一カ国のうち、八カ国の守護を兼任し、当時の中国地方随一の大大名となった尼子家。しかしその栄華は長続きせず尼子義久の代で毛利家に滅ぼされる。その義久に生まれ変わったある男の物語
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~
クロン
ファンタジー
俺は異世界の一般兵であるリーズという少年に転生した。
だが元々の身体の持ち主の心が生きていたので、俺はずっと彼の視点から世界を見続けることしかできなかった。
リーズは俺の転生特典である生産魔術【クラフター】のチートを持っていて、かつ聖人のような人間だった。
だが……その性格を逆手にとられて、同僚や上司に散々利用された。
あげく罠にはめられて精神が壊れて死んでしまった。
そして身体の所有権が俺に移る。
リーズをはめた者たちは盗んだ手柄で昇進し、そいつらのせいで帝国は暴虐非道で最低な存在となった。
よくも俺と一心同体だったリーズをやってくれたな。
お前たちがリーズを絞って得た繁栄は全部ぶっ壊してやるよ。
お前らが歯牙にもかけないような小国の配下になって、クラフターの力を存分に使わせてもらう!
味方の物資を万全にして、更にドーピングや全兵士にプレートアーマーの配布など……。
絶望的な国力差をチート生産魔術で全てを覆すのだ!
そして俺を利用した奴らに復讐を遂げる!
転生したらエルフだったので無双する
随喜夕日
ファンタジー
ある日、神と呼ばれる存在は二人の勇敢な男女を気に入った。
そして二人にもっと楽しませて貰おうと、別の世界へと転生させた。
特殊部隊の隊員だった2人の転生者は神の言葉に従い、剣と魔法の世界で強く生き抜くことを決意する。
それは、失った平穏を取り戻すための物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる