石田三成

俣彦

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賤ケ岳の戦い1

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石田三成(以下三成)「とは言え……人には限界ってモノがあるんだよな……。」

大谷吉継(以下吉継)「どうした三成。なにやら浮かぬ顔をしているが……。そうか。またおやっさんに仕事押し付けられたな。」



大谷吉継は近江の生まれ。三成のとりなしもあって秀吉の小姓として召し抱えられた吉継は、三成同様「計数の才」に明るかったばかりでなく。三成には無い軍略にも秀でた文武両道の人物。



三成「『柴田に割譲した北近江の情勢について聴かせろ』と言われたから報告に言ったまでは良かったのだが……。」



その頃三成は主君秀吉より北近江の諜報活動に従事していたのでありました。



吉継「お前のことだからソツなくこなしたんだろ。」

三成「確かに。そこまでは何ら問題なく、殿も満足されたのではあるのだが……。人間一人で出来ることには『限度』ってモノがあるんだよ……。」

吉継「で。俺に愚痴を言いに来たってわけか?」

三成「如何にも。殿から言われたのは、柴田から和議の使者が来た。と……。ただその使者は偽りだ。と。柴田の本拠は北陸である故、これから雪で閉ざされてしまうため兵を動かすことが出来ない。その間の時間を稼ぐための休戦に過ぎない。と。」

吉継「そうだな。」

三成「で。その時に来た使者が不破と前田と金森の3名。」

吉継「柴田の直属の家臣では無い人物を寄こして来たのか。」

三成「左様。確かに3名は柴田の部下ではある。ただし3名にとっての主君は柴田では無く、あくまで織田家。そこで殿が採った行動が。」

吉継「得意の引き抜き工作。」

三成「和議が不調に終わるや否や、殿は『柴田に明確な清須会議違反が発覚した』と北陸が雪で閉ざされていることを幸いに宣戦布告することになった。と……。」

吉継「それで私のところに話が来たぞ。『長浜城を攻略せよ』と。お前の情報役立ったわ。城が丸ごと寝返って来たぞ。」

三成「その間にも殿から言われたのが柴田の背後に居る上杉と繋がりをつけることだったのだが……。」

吉継「どうだったのだ?」

三成「まとめると『頑張れ』の一言だったな。」

吉継「連携を取るには遠過ぎるしな……。」

三成「殿が美濃の織田信孝を降伏されることに成功して機嫌が良い時を見計らって、それとなく報告したので、特に問題は無かったのではあるが……。」

吉継「そこでまた仕事を言い渡された。と言うわけだな……。」

三成「吉継殿。」

吉継「なんだ。改まって。」

三成「折り入って頼みごとがあるのであるが。」
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