石田三成

俣彦

文字の大きさ
上 下
3 / 9

賤ケ岳の戦い1

しおりを挟む
石田三成(以下三成)「とは言え……人には限界ってモノがあるんだよな……。」

大谷吉継(以下吉継)「どうした三成。なにやら浮かぬ顔をしているが……。そうか。またおやっさんに仕事押し付けられたな。」



大谷吉継は近江の生まれ。三成のとりなしもあって秀吉の小姓として召し抱えられた吉継は、三成同様「計数の才」に明るかったばかりでなく。三成には無い軍略にも秀でた文武両道の人物。



三成「『柴田に割譲した北近江の情勢について聴かせろ』と言われたから報告に言ったまでは良かったのだが……。」



その頃三成は主君秀吉より北近江の諜報活動に従事していたのでありました。



吉継「お前のことだからソツなくこなしたんだろ。」

三成「確かに。そこまでは何ら問題なく、殿も満足されたのではあるのだが……。人間一人で出来ることには『限度』ってモノがあるんだよ……。」

吉継「で。俺に愚痴を言いに来たってわけか?」

三成「如何にも。殿から言われたのは、柴田から和議の使者が来た。と……。ただその使者は偽りだ。と。柴田の本拠は北陸である故、これから雪で閉ざされてしまうため兵を動かすことが出来ない。その間の時間を稼ぐための休戦に過ぎない。と。」

吉継「そうだな。」

三成「で。その時に来た使者が不破と前田と金森の3名。」

吉継「柴田の直属の家臣では無い人物を寄こして来たのか。」

三成「左様。確かに3名は柴田の部下ではある。ただし3名にとっての主君は柴田では無く、あくまで織田家。そこで殿が採った行動が。」

吉継「得意の引き抜き工作。」

三成「和議が不調に終わるや否や、殿は『柴田に明確な清須会議違反が発覚した』と北陸が雪で閉ざされていることを幸いに宣戦布告することになった。と……。」

吉継「それで私のところに話が来たぞ。『長浜城を攻略せよ』と。お前の情報役立ったわ。城が丸ごと寝返って来たぞ。」

三成「その間にも殿から言われたのが柴田の背後に居る上杉と繋がりをつけることだったのだが……。」

吉継「どうだったのだ?」

三成「まとめると『頑張れ』の一言だったな。」

吉継「連携を取るには遠過ぎるしな……。」

三成「殿が美濃の織田信孝を降伏されることに成功して機嫌が良い時を見計らって、それとなく報告したので、特に問題は無かったのではあるが……。」

吉継「そこでまた仕事を言い渡された。と言うわけだな……。」

三成「吉継殿。」

吉継「なんだ。改まって。」

三成「折り入って頼みごとがあるのであるが。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大将首は自分で守れ

俣彦
歴史・時代
 当面の目標は長篠の戦い。書いている本人が飽きぬよう頑張ります。  小説家になろうで書き始め、調子が出て来たところから転載します。

腐れ外道の城

詠野ごりら
歴史・時代
戦国時代初期、険しい山脈に囲まれた国。樋野(ひの)でも狭い土地をめぐって争いがはじまっていた。 黒田三郎兵衛は反乱者、井藤十兵衛の鎮圧に向かっていた。

浅井長政は織田信長に忠誠を誓う

ピコサイクス
歴史・時代
1570年5月24日、織田信長は朝倉義景を攻めるため越後に侵攻した。その時浅井長政は婚姻関係の織田家か古くから関係ある朝倉家どちらの味方をするか迷っていた。

鬼が啼く刻

白鷺雨月
歴史・時代
時は終戦直後の日本。渡辺学中尉は戦犯として囚われていた。 彼を救うため、アン・モンゴメリーは占領軍からの依頼をうけろこととなる。 依頼とは不審死を遂げたアメリカ軍将校の不審死の理由を探ることであった。

毛利隆元 ~総領の甚六~

秋山風介
歴史・時代
えー、名将・毛利元就の目下の悩みは、イマイチしまりのない長男・隆元クンでございました──。 父や弟へのコンプレックスにまみれた男が、いかにして自分の才覚を知り、毛利家の命運をかけた『厳島の戦い』を主導するに至ったのかを描く意欲作。 史実を捨てたり拾ったりしながら、なるべくポップに書いておりますので、歴史苦手だなーって方も読んでいただけると嬉しいです。

独裁者・武田信玄

いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます! 平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。 『事実は小説よりも奇なり』 この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに…… 歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。 過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。 【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い 【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形 【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人 【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある 【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。 (前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)

古色蒼然たる日々

minohigo-
歴史・時代
戦国時代の九州。舞台装置へ堕した肥後とそれを支配する豊後に属する人々の矜持について、諸将は過去と未来のために対話を繰り返す。肥後が独立を失い始めた永正元年(西暦1504年)から、破滅に至る天正十六年(西暦1588年)までを散文的に取り扱う。

【総集編】 時代短編集

Grisly
歴史・時代
⭐︎登録お願いします。 過去に起こった出来事を、新たな解釈で 短編小説にしてみました。

処理中です...