大将首は自分で守れ

俣彦

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担がれた神輿

上田原の戦い2

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 板垣信方と甘利虎泰。



家臣「信虎追放後。信濃における戦闘と戦後処理をこの2人が中心となって行っています。」

村上義清「特に厄介なのは板垣だな……。」



 信虎時代。義清と板垣は、佐久地域において幾度となく激戦を繰り広げて来ました。



家臣「加えて板垣には今。諏訪の衆が……。」

村上義清「武田の先兵として鍛えられた諏訪の衆とそれを指揮する板垣。まともに戦って勝てる相手では無い……。」

家臣「葛尾城を活かしますか……。」



 葛尾城は南から攻めて来る敵を想定し、自然の地形を活かして建てられた要塞。今回の敵、武田晴信の侵攻ルートと重なる。



村上義清「葛尾に籠ることにより、武田からの攻撃を防ぐことは出来るが、問題となるのが……。」



 義清には、後詰となる味方がいない。



家臣「友達がいませんからね。」

村上義清「孤高の将と呼んでくれ。それに……。」



 持久戦となった場合、先に音をあげることになるのは経済力に劣る村上義清のほう。



家臣「武田は川の治水に手を回すことが出来ますからね……。」

村上義清「そうなると打って出ることになるのではあるが……。」

家臣「板垣と甘利が前面に押し出してきます。」

村上義清「……そうなんだよな問題なのは……。そこさえ突破することが出来ればチャンスが回って来るのではあるが。」

家臣「仮に突破できたとしましても、突破するだけで我がほうの被害も甚大。とても晴信めと戦うことは出来ませぬ。」

村上義清「……そうなんだよな。ヘトヘトになって辿り着いても餌食になってしまうばかり……。」

家臣「結果。葛尾に籠ることになり。」

村上義清「四面楚歌の中。……それでは面白くないな……。かと言って。」

家臣「和睦出来るような相手ではありませぬ。」

村上義清「戦うしか無いんだよな……。」

家臣「御意。」

村上義清「う~~~~ん。今。我が領内にあるものを洗い出してみるか……。」

家臣「まずは洪水の恐れがあるとは申せ。千曲川における開発に加え。特産の麻織物の収益がありますので、数年単位の籠城に耐えるだけの蓄えがあります。」

村上義清「ただそれを使って籠城しても、その間の収益(兵に囲まれているため収穫は出来ないばかりか物流も滞り)を期待することはできず。いづれ尽きることになる。」

家臣「はい。次に先の志賀城の戦いにおいて、住処をおわれたもの。身内を失ったものが多数流入しています。」

村上義清「生活の拠点がないものが入って来ても領内が不安定になるだけだろ。」

家臣「以上です。」

村上義清「それだけか。」

家臣「はい。」

村上義清「多少の金と職にあふれた流民。これが我が領内に今あるものなのか?」

家臣「はい。」

村上義清「それで武田と相対せ。と言うのか。」

家臣「左様。」

村上義清「左様って。これで板垣甘利を破り、武田晴信を討て。と言うのか。」

家臣「今あるのはこれだけです。」

村上義清「う~~~~ん。」



 長考に入る村上義清でありました。
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