上 下
571 / 625

勧降

しおりを挟む
私(村上義清)「重繁だな?」

真田幸隆「はい。重繁が景繁の進言を受け入れてくれるかどうかに掛かっています。」

私(村上義清)「引き続き安中領は安中氏に委ねる。安中氏は関東管領上杉輝虎の上野守護代真田幸隆の指示に従う。あと人質の提出か……。」

真田幸隆「もう1つあります。」

私(村上義清)「(幸隆が条件に出して居ると思われる場所を見やりながら)と言うと?」

真田幸隆「はい。松井田城の接収であります。」

私(村上義清)「となると松井田城の周辺領域も接収するのか?」

真田幸隆「いえ。それはしない予定であります。ただうちが使うとなりますと敵から狙われる場所にもなりますので、替地を用意する事も選択肢に入れなければなりません。」

私(村上義清)「俺の所か?」

真田幸隆「いえ。上野より条件の悪い場所を宛がっても嫌がられるだけでありますので。」

私(村上義清)「(……確かに。)上野内で別の場所となると……。」



 箕輪城。



真田幸隆「と言う事になります。」

私(村上義清)「もし重繁が断って来たら……。」

真田幸隆「攻め込むしかありません。あそこを押さえない事には安中を無力化する事は出来ません。」

私(村上義清)「うちに従うのだから、うちに対する障壁を設ける必要は無いだろう。」

真田幸隆「えぇ。」

私(村上義清)「景繁は認めているのか?」

真田幸隆「認めてなければ私は今ここには居ません。」

私(村上義清)「景繁の書状は重繁の所に届いているのか?」

真田幸隆「はい。後は期限までに吉報が入る事を待つだけなのでありますが……。」



 期限が来るも返事は無し。



私(村上義清)「偽書と思われているかも知れぬな?」

真田幸隆「四郎の働きにより(松井田から安中へ)直接通信する事が出来なくなっています故、裏を取れなくなっている事が影響しているかもしれません。」

私(村上義清)「それならば四郎の任を解く事にしよう。」

真田幸隆「こちらに呼び寄せますか?」

私(村上義清)「ここで四郎にいくさをさせてしまったら、四郎のこれまでの働きを評価する事が出来ないでは無いか。」

真田幸隆「そうでしたね。それでありましたら四郎には安中に移動してもらいましょう。そこで(真田幸隆嫡男の)信綱の役。安中領内の治安維持を引き継がせましょう。」

私(村上義清)「『またつまらない仕事を。』とか言われそうだな。」

真田幸隆「ただ安中は対箕輪の最前線。当地を守る任は重要であります。」

私(村上義清)「そうだな。」



 これまで遮断していた松井田安中間の行き来を解放。安中からの情報が松井田に齎されると同時に、改めて景繁から重繁宛に書状を送付するも……。



私(村上義清)「(降伏の報せは届かないか……。)」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた

中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■ 無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。 これは、別次元から来た女神のせいだった。 その次元では日本が勝利していたのだった。 女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。 なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。 軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか? 日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。 ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。 この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。 参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。 使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。 表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

暁のミッドウェー

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。  真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。  一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。  そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。  ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。  日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。  その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。 (※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜

雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。 そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。 これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。 主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美 ※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。 ※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。 ※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。

信濃の大空

ypaaaaaaa
歴史・時代
空母信濃、それは大和型3番艦として建造されたものの戦術の変化により空母に改装され、一度も戦わず沈んだ巨艦である。 そんな信濃がもし、マリアナ沖海戦に間に合っていたらその後はどうなっていただろう。 この小説はそんな妄想を書き綴ったものです! 前作同じく、こんなことがあったらいいなと思いながら読んでいただけると幸いです!

高天神攻略の祝宴でしこたま飲まされた武田勝頼。翌朝、事の顛末を聞いた勝頼が採った行動とは?

俣彦
ファンタジー
高天神城攻略の祝宴が開かれた翌朝。武田勝頼が採った行動により、これまで疎遠となっていた武田四天王との関係が修復。一致団結し向かった先は長篠城。

処理中です...