上 下
523 / 625

殺到

しおりを挟む
私(村上義清)「……これをやれば、遠巻きに見ている北条の連中もこっちに向かって来るんだな?」

真田幸隆「はい。」

私(村上義清)「北条氏照の本隊もやって来るんだな?」

真田幸隆「はい。」

私(村上義清)「功を焦って、万全では無い状態で。だよな?」

真田幸隆「間違いありません。しかしこれには条件があります。」

私(村上義清)「何だよ!条件って!?」

真田幸隆「時間がありません。」

私(村上義清)「どう言う事だ?」

真田幸隆「いくさはまだ始まったばかりであります。」

私(村上義清)「それがどうした?」

真田幸隆「今、氏照の本隊は勿論の事。遠巻きにしている北条の部隊並びに城門へ向かえど、まだ辿り着く事が出来ていない連中は味方の惨状を知りません。

『渋滞にしてるな。戦っているんだろうな。』

とは思っているかもしれませんが。真の状況を知っているのは、今我らの反撃に身動きが取れなくなっている城門前の奴らだけであります。何れこの惨状は後ろの部隊にも伝わってしまう事になります。それではいけません。彼らに真実の情報を伝えてはなりません。あくまでうちが負けている。城が落とされた。もしくは落とされようとしている。と言う姿を知らしめなければなりません。

『村上義清を首を獲る好機を逃してはならない!褒美を得るのは俺たちだ!!』

と思わせなければなりません。」

私(村上義清)「お前の本音を聞く事が出来たような気がするのだけど。」

真田幸隆「気のせいであります。」

私(村上義清)「これをすれば良いんだよな。」

真田幸隆「はい。氏照をこちらの土俵に引きずり上げる事が出来ます。」

私(村上義清)「そのためには?」

真田幸隆「敵に真実を知られる前に実行しなければなりません。」

私(村上義清)「……やるのか?」

真田幸隆「時間がありません。」

私(村上義清)「……わかった。」



 滝山城内から先程の爆発とは異なる場所から黒煙が立ち上るや否や、場外目掛け掲げられた大量の旗。そこに記された文様は『三つ鱗』。北条の旗印。これを見た北条の全部隊は一斉に城門目掛け殺到するのでありました。



私(村上義清)「落城にしか見えないな……。」

真田幸隆「用意しておいて良かったです。」

私(村上義清)「ところでさ。」

真田幸隆「何でしょうか?」

私(村上義清)「さっきも狼煙で良かったよな?」

真田幸隆「それは結果論であります。今回は旗印が大きかったでしょう。殿の断腸の思いに感謝申し上げます。」

私(村上義清)「(虎綱にチクるかな……。でも『承認したのはあなたでしょ?』と叱責されるのは……俺の方だよな……。)」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた

中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■ 無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。 これは、別次元から来た女神のせいだった。 その次元では日本が勝利していたのだった。 女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。 なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。 軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか? 日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。 ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。 この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。 参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。 使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。 表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜

雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。 そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。 これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。 主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美 ※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。 ※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。 ※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。

暁のミッドウェー

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。  真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。  一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。  そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。  ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。  日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。  その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。 (※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

信濃の大空

ypaaaaaaa
歴史・時代
空母信濃、それは大和型3番艦として建造されたものの戦術の変化により空母に改装され、一度も戦わず沈んだ巨艦である。 そんな信濃がもし、マリアナ沖海戦に間に合っていたらその後はどうなっていただろう。 この小説はそんな妄想を書き綴ったものです! 前作同じく、こんなことがあったらいいなと思いながら読んでいただけると幸いです!

高天神攻略の祝宴でしこたま飲まされた武田勝頼。翌朝、事の顛末を聞いた勝頼が採った行動とは?

俣彦
ファンタジー
高天神城攻略の祝宴が開かれた翌朝。武田勝頼が採った行動により、これまで疎遠となっていた武田四天王との関係が修復。一致団結し向かった先は長篠城。

処理中です...