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想像以上

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春日虎綱「駿河の国人の氏真に対する失望は家康の想像を遥かに超えるものでありました。氏真に対する失望は家康も同じでありました。もし信長が攻め込んで来た場合、氏真は頼みにはならない事を実際に体験していますので。故に彼は独立の道を。それも暖簾分けでは無く、自立してやって行く事が出来るよう勢力の拡大を目指して来ました。その煽りを家康の侵攻方向にあたりました三河と遠江の国人は選択を迫られ、氏真から離れた者も多数出ました。これも生き残るためでありますので、ある意味仕方の無い事であります。

 しかし駿河。それも駿府並びに同盟関係にある北条武田に囲まれた駿東郡は異なります。自らの権益を拡げようと考えていれば別でありますが、彼らにとって大事なのは『今のまま』でありました。これまで通り氏真に忠節を尽くす事が駿河の国人に求められる技能でありました。ですので家康は此度の義信侵攻に際し、駿河の国人衆並びに今川重臣層による戦わずしての寝返りは意外でありました。抵抗らしい抵抗を見せる事も無く、わずか1日で駿河は義信の物になってしまいました。

 武田側に被害はありませんし、今川側も同様であります。異なるのはただ1つ。その全てを義信が活用する事が出来る状況になった事であります。家康が最も回避したいと考えていたものであります。これらの資源を義信は何処に向けるでしょうか?義信がもし甲斐の民に使ってくれれば問題にはなりません。甲斐の治水事業が成果を挙げるには、多額の人と物。それを支える予算に膨大な年月を要する事になるからであります。しかしその選択肢を採用する可能性は限り無く0であります。今はその時ではありません。

 今、義信は将軍様より悲痛な叫びが届いています。

『憎き信長を討ち果たせ!!』

と……。これまで義信は実行に移す事は出来ませんでした。国力の問題もありましたし、地理的な問題もありました。しかし目途がつきました。豊かな駿河を手に入れる事が出来たからであります。この資源を以てすれば、天竜川を押し渡る事が出来ます。全ての資源を投入する事が出来ます。家康の背後には強力な織田信長が居ます。しかし今、彼は苦境に立たされています。家康に助けを出す事は出来ません。家康は単独で義信と戦わなければなりません。家康が最も恐れていた事態が近づきつつありました。ありましたが、そこでこちらも家康の想像を超える事態が駿河の東部で発生しました。」
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