412 / 625
今切
しおりを挟む
春日虎綱「今切が無ければ水軍を気にしなくても良いのでありますが……。」
浜名湖は元々淡水湖で、琵琶湖よりも京から遠い事から遠津淡海と呼ばれ、遠江の語源となったと言われています。
春日虎綱「全く海と繋がっていなかったわけではありませんでしたが、今に比べれば川の流れの向きを変える場所を使って侵入を防ぐ事が出来たのでありましたが……。」
明応の地震とそれに伴う大津波のため、砂堤が決壊。当時の交通の要衝であった橋本宿は、その後に発生した高潮の被害もあり復活を諦めるなど大きな被害を出すと同時に、浜名湖は海の水が混じり合う汽水湖に変わり、その境目に位置するのが今切の地。往来には渡し舟が必須の交通の難所でありましたが……。
私(村上義清)「海で船を操れる連中にとっては活動しやすくなったとも言えるのかな?」
一時期、知多半島から渥美半島に掛け勢力を誇った戸田氏は遠江の今の三ヶ日にも進出。その際、彼らが使ったのも汽水湖になった浜名湖の水運。ただ遠江に手を出した事により、今川に目をつけられた事が戸田氏苦難の歴史の始まりともなったのでありましたが……。
私(村上義清)「もし今川が今切を突破して浜名湖に入って来たらどうなる?」
春日虎綱「一応、浜名湖北の陸路につきましては海から離れていますので、今川の船に湖を占拠されたからと言いましても三河との連絡を断たれる事はありません。ただ1つだけ海に近い場所があります。それが気賀であります。つまり家康が今切と気賀を失う事は東は天竜川。西は浜名湖から挟み撃ちに遭うばかりでなく、三河からの供給も断たれる事になります。それもあってでありましょう。家康が気賀の民に対し厳しく当たるばかりでなく、立て籠もった者全てを亡き者にしたのは。」
私(村上義清)「二度と刃向かう事が出来ないように。」
春日虎綱「はい。ただやり過ぎた所もあります。此度のいくさで亡くなった者の身内も多いでしょうし、家康の側に付いた者の中にも不安を覚えた者も居るかと思います。」
私(村上義清)「そこに武田や今川がやって来て『免訴』の触れでも出そうものなら。」
春日虎綱「はい。気賀における徳川の支配など吹き飛んでしまいます。」
私(村上義清)「その気賀の民の中には、井伊谷の事を良くは思っていない者も居る?」
春日虎綱「はい。皆龍潭寺を通じ手厚く弔ったのではありましたが、『お前ら(井伊谷)が裏切った事が原因だからな。』『お前らが家康を道案内しなければこんな事態には陥らなかったのだからな。』と思っている者は少なからず存在します。ある意味仕方の無い事ではあります。」
浜名湖は元々淡水湖で、琵琶湖よりも京から遠い事から遠津淡海と呼ばれ、遠江の語源となったと言われています。
春日虎綱「全く海と繋がっていなかったわけではありませんでしたが、今に比べれば川の流れの向きを変える場所を使って侵入を防ぐ事が出来たのでありましたが……。」
明応の地震とそれに伴う大津波のため、砂堤が決壊。当時の交通の要衝であった橋本宿は、その後に発生した高潮の被害もあり復活を諦めるなど大きな被害を出すと同時に、浜名湖は海の水が混じり合う汽水湖に変わり、その境目に位置するのが今切の地。往来には渡し舟が必須の交通の難所でありましたが……。
私(村上義清)「海で船を操れる連中にとっては活動しやすくなったとも言えるのかな?」
一時期、知多半島から渥美半島に掛け勢力を誇った戸田氏は遠江の今の三ヶ日にも進出。その際、彼らが使ったのも汽水湖になった浜名湖の水運。ただ遠江に手を出した事により、今川に目をつけられた事が戸田氏苦難の歴史の始まりともなったのでありましたが……。
私(村上義清)「もし今川が今切を突破して浜名湖に入って来たらどうなる?」
春日虎綱「一応、浜名湖北の陸路につきましては海から離れていますので、今川の船に湖を占拠されたからと言いましても三河との連絡を断たれる事はありません。ただ1つだけ海に近い場所があります。それが気賀であります。つまり家康が今切と気賀を失う事は東は天竜川。西は浜名湖から挟み撃ちに遭うばかりでなく、三河からの供給も断たれる事になります。それもあってでありましょう。家康が気賀の民に対し厳しく当たるばかりでなく、立て籠もった者全てを亡き者にしたのは。」
私(村上義清)「二度と刃向かう事が出来ないように。」
春日虎綱「はい。ただやり過ぎた所もあります。此度のいくさで亡くなった者の身内も多いでしょうし、家康の側に付いた者の中にも不安を覚えた者も居るかと思います。」
私(村上義清)「そこに武田や今川がやって来て『免訴』の触れでも出そうものなら。」
春日虎綱「はい。気賀における徳川の支配など吹き飛んでしまいます。」
私(村上義清)「その気賀の民の中には、井伊谷の事を良くは思っていない者も居る?」
春日虎綱「はい。皆龍潭寺を通じ手厚く弔ったのではありましたが、『お前ら(井伊谷)が裏切った事が原因だからな。』『お前らが家康を道案内しなければこんな事態には陥らなかったのだからな。』と思っている者は少なからず存在します。ある意味仕方の無い事ではあります。」
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた
中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■
無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。
これは、別次元から来た女神のせいだった。
その次元では日本が勝利していたのだった。
女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。
なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。
軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか?
日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。
ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。
この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。
参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。
使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。
表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。
暁のミッドウェー
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。
真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。
一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。
そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。
ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。
日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。
その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
(※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)
大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜
雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。
そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。
これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。
主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美
※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。
※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。
※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。
信濃の大空
ypaaaaaaa
歴史・時代
空母信濃、それは大和型3番艦として建造されたものの戦術の変化により空母に改装され、一度も戦わず沈んだ巨艦である。
そんな信濃がもし、マリアナ沖海戦に間に合っていたらその後はどうなっていただろう。
この小説はそんな妄想を書き綴ったものです!
前作同じく、こんなことがあったらいいなと思いながら読んでいただけると幸いです!
高天神攻略の祝宴でしこたま飲まされた武田勝頼。翌朝、事の顛末を聞いた勝頼が採った行動とは?
俣彦
ファンタジー
高天神城攻略の祝宴が開かれた翌朝。武田勝頼が採った行動により、これまで疎遠となっていた武田四天王との関係が修復。一致団結し向かった先は長篠城。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる