上 下
325 / 625

先行投資

しおりを挟む
 自前の領土も無ければ兵も居ない。あるのは暗殺された元将軍足利義輝の弟以外の何者でも無い足利義秋。そんな彼が発揮することの出来る力。それは……。



春日虎綱「全国各地で今まさに紛争中にある勢力への和解を仲介することであります。」

私(村上義清)「しかし義秋は将軍では無い上に、義秋排除に乗り出している側が畿内では主流派となっているぞ。」

春日虎綱「だから効力を発揮するのであります。」

私(村上義清)「何故?」

真田幸隆「もし義秋が将軍となった時に得ることの出来る見返りがそれだけ大きいからだろう?」

春日虎綱「はい。」

真田幸隆「要は今、お隣さん同士でやっているしょうもない諍いは止めて、そこで使っている労力を(足利義秋の)権力掌握に回してくれ。将軍に就任した暁には今、畿内を牛耳っている連中の権益を貢献に応じ分配する。そのほうが利益が大きいでしょう。そうすれば今の切迫した状況。隣の権益を奪うために血を流すような愚かな状況に陥ることも無いでしょう。ですから私(足利義秋)の仲介を受け入れて、天下の掌握に手を貸して下さい。」

私(村上義清)「でもそのためには三好といくさをしなければならないと言う事だろう?」

真田幸隆「まぁそうなりますね。」

私(村上義清)「それだけ大きないくさになると言う事だろう?」

春日虎綱「ですので、義秋様は各地の有力な勢力に手紙を送ったのでありましょう。」

私(村上義清)「それに信長が乗って来たと言う事は……。」

春日虎綱「はい。尾張の織田と美濃の斎藤並びに近江国内の浅井、六角の争いの仲介に成功したと言う事であります。ただ残念ながら関東の調停は不調に終わった模様であります。」

真田幸隆「まぁあそこは無理でしょう。」

私(村上義清)「俺のところには来なかったけど?」

春日虎綱「北信濃で輝虎に助けてもらっている輩に用は無いと言う事でありましょう。」

私(村上義清)「今まさに義秋を助けようとしている信長を完膚なきまでに叩きのめした私ですよ……。」

春日虎綱「世間では『四郎の手柄』として認識されております。それが義信様の焦りを誘っているのかもしれませんが。」

私(村上義清)「四郎は私の家臣……。」

春日虎綱「家臣であることは否定しません。ただ彼は高遠家を背負う当主の顔も併せ持っております。ですから義秋様も迷ったと思われます。養子に出された先の南信濃で『家を大きくして当たり前。現状維持は衰退でしかない。』の冷たい風当たりの中、あそこまで勢力を拡大することに成功した四郎に手紙を出すことを。」

私(村上義清)「もしかして?」

春日虎綱「残念ながら四郎のところには届いておりません。何やら厄介な奴がのさばって来る臭いを義秋様が嗅ぎ取られたのかもしれませんね。」

私(村上義清)「(正式に家督を譲って国清を活躍させるか……。)」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた

中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■ 無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。 これは、別次元から来た女神のせいだった。 その次元では日本が勝利していたのだった。 女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。 なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。 軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか? 日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。 ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。 この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。 参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。 使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。 表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜

雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。 そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。 これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。 主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美 ※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。 ※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。 ※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。

暁のミッドウェー

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。  真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。  一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。  そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。  ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。  日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。  その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。 (※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

信濃の大空

ypaaaaaaa
歴史・時代
空母信濃、それは大和型3番艦として建造されたものの戦術の変化により空母に改装され、一度も戦わず沈んだ巨艦である。 そんな信濃がもし、マリアナ沖海戦に間に合っていたらその後はどうなっていただろう。 この小説はそんな妄想を書き綴ったものです! 前作同じく、こんなことがあったらいいなと思いながら読んでいただけると幸いです!

高天神攻略の祝宴でしこたま飲まされた武田勝頼。翌朝、事の顛末を聞いた勝頼が採った行動とは?

俣彦
ファンタジー
高天神城攻略の祝宴が開かれた翌朝。武田勝頼が採った行動により、これまで疎遠となっていた武田四天王との関係が修復。一致団結し向かった先は長篠城。

処理中です...