上 下
296 / 625

一人勝ち

しおりを挟む
飯富虎昌帰国の途に就く。



真田幸隆「残念。生きてましたか……。」

私(村上義清)「客人の刀は預かるように。」

真田幸隆「忘れて居なければ以後気をつけます。」

私(村上義清)「横(の部屋)で聞いていたんだろ?」

真田幸隆「はい。確かに私が飯富虎昌の立場でありましても、今の現状を面白くは思わないんでしょう。」



 攻める今川義元と攻め込まれ苦境に陥った北条氏康双方を武田晴信が仲介する形で成立した三者の同盟関係。その後、武田晴信と今川義元が斃れる中、順調に勢力を伸ばし続ける北条氏康。



私(村上義清)「北条の一人勝ちだからな……。」

真田幸隆「うちを狙うつもりはないと言っていましたね。」

私(村上義清)「本音は違うと思うがな。今の同盟関係の中で攻め込むことが出来るのはうちだけであり、俺は晴信を討った謂わば仇でもある。そして何より武田は諏訪と信濃南部を統治した経験がある。(武田家中の)世論誘導感謝する。」

真田幸隆「ありがとうございます。」

私(村上義清)「そうなると(今川領の)駿河か。」

真田幸隆「おそらくそうなるかと。そうで無ければ氏真が輝虎と通じていることを報せにわざわざここまで来ないでしょう。」

私(村上義清)「うちと輝虎との関係にヒビを入れようとしている?」

真田幸隆「ゼロでは無いでしょう。ただ武田家中に何か動きがあると見たほうが良いでしょう。今川との絡みもありますので(三河を管轄している)虎綱とも話をしましょう。」



 武節城。



春日虎綱「今の私が影響しているかもしれませんね。」

私(村上義清)「と言うと?」

春日虎綱「私は亡き晴信の奥近習の出。もっと言えば身内に土地を奪われた無産市民の出。そんな私が今、信濃南部から奥三河。更には東美濃を統括する立場に出世しています。今、武田家中には私のような亡き晴信の近習であり、かつ私よりも地盤のしっかりした者たちが武田家当主義信を支えています。仕事に不満は無いと思います。きちんと評価もされていると思います。ただそんな彼らが不満を覚えていることが1つあります。それは報酬です。殿が武田晴信を斃して以降、武田の領土は甲斐一国と信濃の佐久に固定されています。これらの地域内における家臣への配分は既に終わっています。つまりどれだけ頑張っても収入を増やすことは出来ません。仮にそれを行おうとした場合、領内の誰かを放逐するか、直轄領を減らすかしなければなりません。当然ながらそのようなことは出来ません。しかし褒美を与えなければならない家臣は増えています。どこか新たな土地を捻出しなければならないと飯富様は考えているかもしれません。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた

中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■ 無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。 これは、別次元から来た女神のせいだった。 その次元では日本が勝利していたのだった。 女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。 なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。 軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか? 日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。 ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。 この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。 参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。 使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。 表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜

雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。 そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。 これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。 主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美 ※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。 ※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。 ※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。

暁のミッドウェー

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。  真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。  一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。  そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。  ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。  日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。  その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。 (※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

信濃の大空

ypaaaaaaa
歴史・時代
空母信濃、それは大和型3番艦として建造されたものの戦術の変化により空母に改装され、一度も戦わず沈んだ巨艦である。 そんな信濃がもし、マリアナ沖海戦に間に合っていたらその後はどうなっていただろう。 この小説はそんな妄想を書き綴ったものです! 前作同じく、こんなことがあったらいいなと思いながら読んでいただけると幸いです!

高天神攻略の祝宴でしこたま飲まされた武田勝頼。翌朝、事の顛末を聞いた勝頼が採った行動とは?

俣彦
ファンタジー
高天神城攻略の祝宴が開かれた翌朝。武田勝頼が採った行動により、これまで疎遠となっていた武田四天王との関係が修復。一致団結し向かった先は長篠城。

処理中です...