上 下
130 / 625

上洛

しおりを挟む
関東南部の北条氏が代替わりをした頃、関東北部にも動きが……。



私(村上義清)「(山内上杉)憲政が越後へ……。」

真田幸隆「はい。」



 関東管領山内上杉憲政が本拠地上野を離れ、後継者に指名した長尾景虎が居る越後へ逃れたのでありました。



私(村上義清)「……確か(長尾景虎の家臣である)北条高広が……。」

真田幸隆「はい。越後から上野への入口である沼田城を守り、北条氏康との間で一応の均衡が保たれております。」

私(村上義清)「ならば別に……。」

真田幸隆「どうやら越後に動きが見られたようでありまして……。」

私(村上義清)「何があったのだ。」

真田幸隆「うちの(麻織物)商人の話ですと……直江津で大掛かりな準備がされているとか……。」

私(村上義清)「人を運ぶ……。」

真田幸隆「殿が直接景虎に尋ねたほうが宜しいかもしれませんね。」

私(村上義清)「わかった。」



 しばらくして……。



私(村上義清)「わかったぞ。景虎がまた上洛するそうだ。越後を留守にするから、上野で何かあった時、景虎本人が対応することが出来ない。故に安全な越後に憲政を移した。と……。」

真田幸隆「北条(高広)は?」

私(村上義清)「引き続き沼田城を守ることになる。」

真田幸隆「……そうですか……。」

私(村上義清)「なにか企んで……。」

真田幸隆「いえいえ。ところで景虎は何故京へ。」

私(村上義清)「将軍家と朝廷が揉めているそうな……。」

真田幸隆「きっかけは。」

私(村上義清)「改元しただろ。弘治から永禄に。」

真田幸隆「はい。」

私(村上義清)「改元する時は通常、朝廷と幕府が合意して行われるのだが、今回それが無かった。と……。」

真田幸隆「将軍様が蔑ろにされた……。」

私(村上義清)「将軍が近江に逃れていたこともあるのだが、それならそれで使いを出せば済む話。比叡山越えたところに居るんだから。」



 その時、将軍義輝は近江西部の朽木谷に滞在。



真田幸隆「そうですね。」

私(村上義清)「朝廷はそれをしなかった。で、とある人物に相談を持ち掛けた。と……。その人物が誰だったかと言うと……。」



 三好長慶。



真田幸隆「よりによって、将軍様と敵対している。」

私(村上義清)「だろ。そんなことされたら将軍も黙っていないだろう。当然兵を挙げるわな。いくさが始まるわな。……でも、将軍様には力無いんだよ……。」

真田幸隆「しかも三好長慶と朝廷の関係は良好そのもの。」

私(村上義清)「最後は当初、将軍を支援していた六角氏の仲介により和睦が成立したのではあるが、条件面で有利となったのは当然、三好長慶側。」

真田幸隆「このことに不安を覚えた景虎が……。」

私(村上義清)「ほかにも尾州の織田信長や美濃の斎藤義龍も京へ向かうそうな……。」

真田幸隆「なるほど……。ところで殿は。」

私(村上義清)「俺は朝廷側(信濃守)の人間だからな……。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた

中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■ 無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。 これは、別次元から来た女神のせいだった。 その次元では日本が勝利していたのだった。 女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。 なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。 軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか? 日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。 ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。 この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。 参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。 使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。 表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

暁のミッドウェー

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。  真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。  一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。  そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。  ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。  日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。  その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。 (※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜

雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。 そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。 これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。 主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美 ※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。 ※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。 ※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。

信濃の大空

ypaaaaaaa
歴史・時代
空母信濃、それは大和型3番艦として建造されたものの戦術の変化により空母に改装され、一度も戦わず沈んだ巨艦である。 そんな信濃がもし、マリアナ沖海戦に間に合っていたらその後はどうなっていただろう。 この小説はそんな妄想を書き綴ったものです! 前作同じく、こんなことがあったらいいなと思いながら読んでいただけると幸いです!

高天神攻略の祝宴でしこたま飲まされた武田勝頼。翌朝、事の顛末を聞いた勝頼が採った行動とは?

俣彦
ファンタジー
高天神城攻略の祝宴が開かれた翌朝。武田勝頼が採った行動により、これまで疎遠となっていた武田四天王との関係が修復。一致団結し向かった先は長篠城。

処理中です...