上 下
69 / 625

越後が揉めています

しおりを挟む
私(村上義清)「『千曲川を下れ』と言う事か。」

真田幸隆「はい。」



 村上義清は千曲川を少し下った高梨氏や井上氏らと対立を続けるも、武田晴信による侵攻に対抗すべく和睦を結んでいたのでありました。



真田幸隆「先のいくさに勝利を修めたことにより南から押し寄せる武田の脅威は当面の間ありません。加えて東西は同盟関係にある山内上杉に小笠原。」

私(村上義清)「……そう言うことになるか……。でもそうなると越後との絡みが出て来るな……。」



 高梨・井上両氏は越後国境近くに勢力を張っていることもあり、越後守護である上杉氏や同守護代長尾氏との関係が強く、その時々の情勢を利用しての勢力争いが繰り広げられていたのでありました。



真田幸隆「その越後が今。揉めています。」

私(村上義清)「あそこの守護。男の子が居なかったよな。」

真田幸隆「守護上杉定実には男の子が無く、陸奥の大名で定実の甥にあたる伊達稙宗の息子を養子に迎えようとするも同じく息子の晴宗の反対に遭い頓挫。未だ跡取り定まらずの状況にあります。」

私(村上義清)「そうなって来ると守護代の長尾氏が……。」

真田幸隆「ただその長尾氏につきましても威勢を張っていました為景亡き後、跡を継いだ晴景が穏健な政策をとったこと。……と言えば聞こえが良いのでありますが、父為景程の力は無く越後国内は群雄割拠の様相。」

私(村上義清)「越後も信濃同様国が大きいからな……。」

真田幸隆「その晴景には弟がおりまして……。跡継ぎ以外の男子は寺に入る慣習に倣いその子も同様の道を歩むことになったのでありましたが、晴景だけでは治めることは難しい。となり還俗し、元服。名を景虎とし栃尾城に入りましたところ連戦連勝。越後中部と北部を掌握。そうなって来ますと……。」

私(村上義清)「『弟こそが越後の守護代にふさわしい。』との声が巻き起こることになる。」

真田幸隆「はい。今越後では晴景を推すもの。景虎を推すものとに分かれています。」

私(村上義清)「守護はどう見ている。」

真田幸隆「『実績から鑑みれば……。』と言ったところのようであります。」

私(村上義清)「高梨と井上はどう見ている。」

真田幸隆「高梨は景虎擁立に動いています。井上は守護と近い関係にありますので。」

私(村上義清)「その混乱を利用するとなると晴景のほうに付くことになるのだけれども……。」

真田幸隆「如何せん。旗色は悪うございます。もっともうちは直接越後と接しているわけではありませんので、敢えて火中の栗を拾いに行く必要もないでしょう。それよりも……。」

私(村上義清)「奴ら(高梨、井上)の視線が北を見ている隙を狙うか……。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた

中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■ 無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。 これは、別次元から来た女神のせいだった。 その次元では日本が勝利していたのだった。 女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。 なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。 軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか? 日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。 ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。 この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。 参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。 使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。 表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜

雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。 そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。 これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。 主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美 ※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。 ※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。 ※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。

暁のミッドウェー

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。  真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。  一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。  そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。  ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。  日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。  その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。 (※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)

信濃の大空

ypaaaaaaa
歴史・時代
空母信濃、それは大和型3番艦として建造されたものの戦術の変化により空母に改装され、一度も戦わず沈んだ巨艦である。 そんな信濃がもし、マリアナ沖海戦に間に合っていたらその後はどうなっていただろう。 この小説はそんな妄想を書き綴ったものです! 前作同じく、こんなことがあったらいいなと思いながら読んでいただけると幸いです!

高天神攻略の祝宴でしこたま飲まされた武田勝頼。翌朝、事の顛末を聞いた勝頼が採った行動とは?

俣彦
ファンタジー
高天神城攻略の祝宴が開かれた翌朝。武田勝頼が採った行動により、これまで疎遠となっていた武田四天王との関係が修復。一致団結し向かった先は長篠城。

処理中です...