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端から端まで

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尼ヶ淵。



真田幸隆「殿。如何なされました。浮かない顔をされて。」

私(村上義清)「……疲れているんだけど。」

真田幸隆「どうされましたか。」

私(村上義清)「(諏訪)頼重の子がこっちに来ただろう。」

真田幸隆「はい。」

私(村上義清)「普段は俺の本拠(葛尾城)に居るだろう。」

真田幸隆「存じ上げております。」

私(村上義清)「ここに来る前、ほぼ廃嫡の扱いにされていたと聞いていたから教育が施されていたかどうか心配していたのだけれども。」

真田幸隆「その辺りは、問題ありませんでしたね。」

私(村上義清)「それで諏訪に関する儀式をお願いしているんだけど。」

真田幸隆「良かったじゃないですか。」

私(村上義清)「……その都度。送り迎えをしないといけないんだよね……。」

真田幸隆「確かに。」

私(村上義清)「……諏訪の行事がこんなに多いとは正直思っていなかった。」

真田幸隆「まあまあ。」

私(村上義清)「加えて言えば、葛尾と諏訪までの距離が遠い……。端から端だぜ。そこまで苦労しているのに、諏訪の衆は頼重の子が葛尾に帰って行く姿を恨めしそうに眺めている……。」

真田幸隆「でしたらここ(尼ヶ淵)を本拠にされましたら。」

私(村上義清)「落城よりも酷い状態になっているここにか。」

真田幸隆「立地条件は文句なしかと。」

私(村上義清)「確かに領内の中央部に位置し、街道にも沿ってはいるのだが。……ここの弱点がわかってしまっているし……。」

真田幸隆「鬼門はいつも北東にあり。」

私(村上義清)「……おまえのとこ(真田郷)じゃねえか。……とりあえずは復興が第一。」

真田幸隆「町割りをそのまま防御に活用しようかと。」

私(村上義清)「防御もなにも煙硝使ったら跡形もなくなるぞ。」

真田幸隆「そうならないようにするための町割りです。こんな機会ありませんから。」

私(村上義清)「……国分寺まで網羅出来て初めて機能する場所だからな……。」

真田幸隆「ところで。」

私(村上義清)「どうした。」

真田幸隆「先程のいくさのあと、何故佐久を放棄されたのでありますか。」

私(村上義清)「和議の話があった段階でこちらが占拠していなかったからが1つ。もう1つは、晴信の子の後見人である飯富虎昌が佐久の内山を治めていたから。」

真田幸隆「捕虜と言う札を持っていながら。」

私(村上義清)「捕虜は基本帰す予定であった。そうなると甲斐で彼らを養っていかなければならなくなる。そこに飯富の知行地(佐久内山)をも奪ってしまうとなると、減封となるものが増える。その原因を作ったこちらへの反発が増すことになる。武田は強い。今、戦うべき相手ではない。あと挙げるとするならば……。」
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