今川義元から無慈悲な要求をされた戸田康光。よくよく聞いてみると悪い話では無い。ならばこれを活かし、少しだけ歴史を動かして見せます。

訃報

　松平広忠死去。岡崎城内は主を失い動揺が広がる中、この時を待っていた人物が……。

太原雪斎「ご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げます。」
阿部定吉「これは太原様。」
太原雪斎「時間がありません。すぐにいくさの支度を。」
阿部定吉「えっ！葬儀もまだ……。」
太原雪斎「時間がありません。松平様の無念を晴らすのが先であります。」
阿部定吉「……。」
太原雪斎「御前様。」
真喜姫「……はい。」
太原雪斎「しばしお待ち下され。そして１つお願いがあります。」

　太原雪斎は岡崎城に乗り込むと同時に松平家臣に対し出陣を指示。目標は松平広忠の本貫地である安祥城。
　まず岡崎城の南にある上和田城を朝比奈泰能と岡部元信が接収し矢作川東岸を制圧。岡崎の松平家臣を先陣に矢作川を渡り、先に調略を終えていた上野城城主酒井忠尚が呼応。両者は合力。安祥城北東に位置する山崎城を攻略し、酒井は安祥城の西。松平広忠の家臣は北にそれぞれ布陣。
　これを見た岡崎の太原雪斎と上和田の朝比奈、岡部も渡河。朝比奈、岡部隊は安祥城の南を進み。桜井と福釜に居る松平一族の城を攻撃し服属。降伏した松平一族を刈谷へ向かわせ安祥との連絡路を遮断。朝比奈、岡部は安祥城の南に布陣。岡崎城を出た太原雪斎は安祥城の東に本陣を構え、安祥城を包囲。

太原雪斎「信秀は病と聞く。こちらに兵を回す事は出来ぬ。ならば無理に攻めず、相手が降伏するのを待てば良い。」
と持久戦を選択。しかしこの決定に納得する事が出来なかった人物が。その名は……本多忠高。本田忠高の父は、先の安祥城を巡る戦いにおいて松平広忠を助けるべくしんがりを買って出て討ち死にした本多忠豊。その忠豊を亡き者にした人物が安祥城城主織田信広。その仇を目の前にしての持久戦に我慢出来なかった本多忠高が城攻めを決行。これに松平広忠の家臣も巻き込まれ戦闘開始。
　織田信広目掛け遮二無二城を目指した本多忠高の活躍により郭の奪取に成功する松平隊。勢いそのまま本丸に迫ったその時。城からの狙撃により本多忠高は討ち死に。本丸手前で狼狽する松平隊。これを見て反撃に転ずる織田信広。包囲に綻びが生じた事を確認した太原雪斎は撤退を指示。

　暫くして二連木城……。

戸田康光「真喜から便りが届いた。松平広忠が亡くなった。と。」
戸田宣光「……残念でなりません。」
戸田康光「太原様より箝口令が敷かれていたため報告が遅くなってしまった。とある。」
戸田宣光「何故そのような事を？」
戸田康光「三河の国衆に知られるのは安祥を片付けてから。三河から織田を追い出してからしたかったのであろう。」
戸田宣光「岡崎はどうなっています？」
戸田康光「実質今川に占拠されている。当主が死ぬとこうなる。同じ轍を踏んではならぬ。」