上 下
22 / 91

田原城の攻略

しおりを挟む
戸田忠次「私の希望としましては、伊奈城か牛久保城になりますが……。」
太原雪斎「其方の家の更なる発展を考えた場合、是が非でも確保しておきたい城になりますね。」
戸田忠次「はい。」
太原雪斎「ただこれらの城は全て今川方。手出しする事は許しません。」
戸田忠次「雪斎様に案は御座いますか?」
太原雪斎「正直、今橋のようにはいかないと考えています。しかし方策はあります。それを他の城を使って紹介しましょう。」
戸田忠次「お願いします。」
太原雪斎「うちが三河を経営するにあたり、確保して置きたい城が幾つかあります。1つは西三河までの動線を確保するのに必要不可欠な今橋城と長沢城。2つ目に来るのが矢作川と乙川に西と南を守られている西三河の拠点岡崎城。そして3つ目に来るのが海の権益を確保する上で重要となる田原城であります。もし戸田様の抵抗が続きました場合、私は兵を躊躇する事無く田原に向ける所存でありました。」
戸田忠次「そのお考えは今も……。」
太原雪斎「いえ。戸田様の持つ水軍の力を侮る事は出来ません。味方にさえなっていただければそれで構いません。故に織田や水野が田原城の攻めて来ても良い様、私の攻め方を教えたいと考えています。」
戸田忠次「お願いします。」
太原雪斎「田原城の東は満潮時には海水が入り込む干潟に守られ、城の北と西は水堀。攻め込むのであれば、標高差の無い南側。これに対し城方は大小様々な曲輪を配する事により、敵の侵入に備えています。これに相違は御座いますか?」
戸田忠次「正解不正解について、ここで述べる事は差し控えさせていただきます。」
太原雪斎「これに対し私ならどう攻めるか?について話していきます。」
戸田忠次「お願いします。」
太原雪斎「主力は標高差の少ない南側から正面突破を図る事になります。しかしこれだけですと城方は南側に全ての兵と武器を投入する事が出来ます。結果、味方の被害は甚大なものとなってしまいます。我らの目的は織田、水野勢力を駆逐する事であります。田原城1つのために大切な兵を失うわけにはいきません。」
戸田忠次「はい。」
太原雪斎「そこで私はいくさとなる場を増やす事を模索します。その場所となるのが城の北に聳える蔵王山からの侵入並びに戸田様の生命線とも言えます船とその保管場所の破壊工作であります。ただ先程述べましたように攻略するのは難しい場所であります。故に私は成果を上げる事を求めてはいません。狙いは城方の兵を分散させる事。それだけであります。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

もしも織田信長が魔法を使い始めたら~現代知識とスキルを駆使して目指せ天下泰平~

有雲相三
ファンタジー
現代に生きる社会人の青年は、ひょんなことから戦国の世に転生してしまう。転生先は尾張の戦国大名の息子、吉法師。そう、後の織田信長である。 様々な死亡フラグ渦巻く戦国の世。転生した青年は、逞しく生き延び、天下泰平の世を目指そうと志を新たにするのだが…… 「あれ、なんか俺の体、光ってね?」 これは戦国という荒波にもまれながらも、新たに手に入れたスキルを使い、宗教の力で天下泰平の世を目指す一人の青年の物語である。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた

中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■ 無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。 これは、別次元から来た女神のせいだった。 その次元では日本が勝利していたのだった。 女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。 なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。 軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか? 日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。 ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。 この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。 参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。 使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。 表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

『転生した無名藩士、幕末の動乱を生き抜く~時代・技術考証や設定などは完全無視です!~』

姜維信繁
ファンタジー
佐賀藩より早く蒸気船に蒸気機関車、アームストロング砲。列強に勝つ! 人生100年時代の折り返し地点に来た企画営業部長の清水亨は、大きなプロジェクトをやり遂げて、久しぶりに長崎の実家に帰ってきた。 学生時代の仲間とどんちゃん騒ぎのあげく、急性アルコール中毒で死んでしまう。 しかし、目が覚めたら幕末の動乱期。龍馬や西郷や桂や高杉……と思いつつ。あまり幕末史でも知名度のない「薩長土肥」の『肥』のさらに隣の藩の大村藩のお話。 で、誰に転生したかと言うと、これまた誰も知らない、地元の人もおそらく知らない人の末裔として。 なーんにもしなければ、間違いなく幕末の動乱に巻き込まれ、戊辰戦争マッシグラ。それを回避して西洋列強にまけない国(藩)づくりに励む事になるのだが……。

処理中です...