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65話

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今夜はリュドとの婚約パーティよ。

完成したドレスを私はまだ見ていないの。

ヘアメイクが終わりやっとドレスが見られる・・・と思ったら目隠しのリボンを巻かれたわ。何故かしら?

ドレスを着せられ、ロンググローブにパリュールをつけられる。ヒールまで履いたのだけれど・・・。

「お嬢様、よくお似合いですわ」
「目隠しは取っては駄目なの?」
「リュドヴィック様が来るまでお待ち下さい」

しばらく待っているとリュドが部屋に迎えに来た。

「リリ。よく似合ってる・・・妖精のように可愛らしいですよ」
「ありがとう。目隠しを取っても良いかしら?」
「目隠しって・・・そそられるものがあるな・・・」
「そそられる・・・?」

サラの咳払いの後リボンが外され、リュドにエスコートをされて鏡の前に立つ。

ベースは落ち着いたピンクのドレス。ボディ部分はライトブラウンと金糸の刺繍が施され、スカートはライトブラウンのシフォンが重ねられ金糸の刺繍とキラキラした石が縫い付けられている。シフォンの下からピンクが透けてピンクブラウンの優しい印象。

ウエストはピンクのベルベットのリボンで締められ、パリュールは金細工にルビーで全体的に可愛らしい感じだわ。

リュドは光沢のあるブラウンに同じ様な刺繍が施され、アスコットタイを止めるピンとカフスはルビーだ。

「とても素敵ね。リュドの色を纏えて嬉しいわ」
「気に入って貰えましたか?」
「もちろんよ」

リュドから見たら私は可愛い感じなのかしら?

「ふふ、少し照れるわ」
「そういう顔は他の男には見せないで下さいね」

ドレスが皺にならない様に軽く抱き締められる。少しメイクを直され、お客様のお出迎えに向かう。



*****



お父様が挨拶をして、2人でダンスを踊り婚約の挨拶に回る。皆からお祝いの言葉を頂き実感が湧くわね。

デザートの所には皆が揃っていた。

「リリ、お疲れ様」
「ティナ、ありがとう」
「でも2人の婚約が早すぎてビックリしたよね」

アンドリュー様の言葉にリュドと苦笑いする。

「そうですね。旦那様が兄に打診して4日後には正式に結ばれたのは少し驚きました」
「リュドのお家からはその日の内にお返事を頂いたものね」
「ええ。婚約の書類は目を通しましたが、リリアンヌ様を悲しませたら殺す的な内容以外は・・・幾つか確認されただけで決まりましたから」

あら?私が読んだ書類には家同士の事とか一般的な内容だったはずよ?

サミュエルお兄様が溜息をつく。

「羨ましいな。俺達は3ヶ月かかった・・・」
「ふふ、サミュエルの見た目から遊んでいそうだと、父がなかなか許可を出さなくて困ったわ」
「俺は一途なんだ!」
「お兄様はいつからカティ様が好きだったの・・・」

私も全然気づかなかったから不思議だわ。

「ふふ、では3人でお茶をした時にでも。こんなに可愛い妹達とお茶が出来るのなら、もっと早く決めれば良かったわ」
「私も頼りになるお姉様が出来て嬉しいですわ」
「リリ様もリュド様との事に悩んだらいつでも相談に乗るわね」
「ぜひお願いしたいです・・・カティお姉様」
「頬を染めるリリ様が可愛いわぁ」

だって恋愛偏差値マイナスだもの、相談できる方は欲しいわ。



*****



翌日はお茶会。

昨夜しっかりマッサージをされたから体が軽いわ。

今日はアイボリーにライトブラウンの刺繍が蔓のように全体に施され、そこにブルーとイエローの濃淡の花が咲き誇るアフタヌーンドレスを着せられる。

ハーフアップに髪を纏められ金細工にアクアマリンとサファイアの髪飾りにピアス、ネックレスをつけられ手袋に指を通す。靴を履き替えくるりと回る。

「春らしいドレスね」
「昨夜も今日も自分の色とは・・・愛されておりますね」

そうだわ。昨夜はリュドと私の髪色だったけれど、ライトブラウンにブルーはどちらもリュドの色だわ・・・そしてイエローとブルーは私の・・・。

照れているとリュドが迎えに来た。

「リリ、今日も可愛らしいですね」
「素敵なドレスをありがとう」

リュドはライトブラウンに襟やベスト等はアイボリーで同じ様な刺繍が小花で施され、アクアマリンとサファイアのピンとカフスをつけている。

エスコートをされお客様を迎え、各テーブルを挨拶をして回る。最後にティナ達のテーブルに戻り、やっとゆっくり出来るわ。

「2人は今日もお揃いなのね」
「少し照れるけれど・・・リュド様が贈ってくれたの」

ティナとお喋りを楽しんでいる隣では。

「リュド様は意外と独占欲が強いのねぇ」
「リリが可愛いもので、しっかり牽制をしておかないと」
「あらあら。でもリリ様にはそのくらいが丁度良いわね」
「何だかリュドとカトリーヌ様って似てるよね・・・」
「どっちも本性を隠すのが上手いからな・・・」

何となく黒い笑顔で笑い合う2人を、サミュエルとアンドリューは呆れた目で見ていた。

来客を見送りサロンでリュドの隣に座り、もたれ掛かると腰を抱き寄せられる。

「疲れましたか?」
「少しだけ。でもリュド様のご家族にも喜んでもらえたもの」

リュドはお義母様に似ているの。お兄様達はお義父様に似て精悍な感じ。お兄様のご夫人達もとても優しくて素敵なご家族よ。

お義母様からは「リュドヴィックが何かしたら直ぐに教えて頂戴?しっかりお仕置をするから」と言われたわ。そんな日が来るのかしら?

でも何故かお義父様が震えていて不思議だったのよね。

「結婚はしないと思われていましたから」
「リュド様は独身主義だったかしら?」
「そういう訳ではないのですが・・・仕事が好きで。どうしても仕事が優先になってしまいますからね」

リュドには恋人が居たのかしら?お父様から調査書を渡されたけれど、結局読まなかったから知らないのよね・・・何となく嫌だわ・・・。

「頬を膨らませてどうかしましたか?」
「リュド様に恋人が居たのかと・・・」
「まぁ、8年長く生きていますからね。調査書は読まれたんですよね?」
「読んでいないわ・・・」

何故驚くのかしら?8年の差は大きいもの仕方ないとわかっているもの・・・。それに・・・嫉妬して何をするかわからない自分が怖いもの・・・。

「それは、信用して頂けたと思っても?」
「知るならリュド様から聞きたいもの・・・」
「リリの知りたい事には何でも答えますよ。でも・・・ヤキモチを妬かれるのも可愛いですね」

額に口付けをされる。

「真っ赤だね・・・くくっ」
「だって恥ずかしいもの・・・」

婚約してから額や頬に口付けられる事も増えたけれど、全然慣れないの・・・ヤキモチなんてどこかに行ってしまったわ。



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