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46話

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森から安全だと思える所まで離れる。

「サラに連絡しますわ」

銀の魔石に指を添え。

「サラ、全員無事に森を抜けたわ」
『ご無事で何よりです』
「ただ何処に出たのかわからないの」
『魔石を叩いて下さい。こちらで見つけます』
「わかったわ。リュド、魔石を叩きたいのだけれど・・・」
「こちらを」

懐中時計を出されたわ・・・これで叩けと?下ろしてくれないのね・・・。諦めて時計の裏でコツコツと魔石を叩く。

『わかりました。15分程で騎士団の馬車が着きますからお待ち下さい』
「ありがとう。待っているわ」

魔石から指を離す。

「15分程で騎士団の馬車が来てくれるわ」
「はぁ~・・・やっと帰れるな」
「そうですわね」
「あのさ、何でまだ抱き抱えられてるんだ?」
「リュドが下ろしてくれませんの」

私とサミュエルお兄様の視線がリュドに向く。

「リュド、もう安全だぞ?」
「わかっておりますが、お嬢様のドレスが問題なので降ろせません」

ドレス?確かに鞭で思ったより切れて・・・縛った所も無いわ。でも乗馬しやすい様にパニエは履いていないけれどアンダースカートは履いていてドレス1枚では無いのよ。そんなに駄目かしら?

「あぁ、皆ジャケット着てないもんな。ベストもボロボロだし」
「そんなに破れてますの?」
「まぁ・・・胸と太もものとこなんかバッサリだぞ?リュドが腕で隠してるからわかりにくいが・・・立ったらまずくないか?」
「なっ!?」

視線を胸元に向けるとリュドの腕で隠されているけれど下着の上の方が見えていますわ! 

「あの半透明芋虫!エロ芋虫でしたのね!」

何で皆笑いますの!まぁ、笑える程気が緩んだ証拠ですわね。



*****



待っている間、半透明芋虫について話し合った。

まずは魔法。火属性は火や熱で溶けるが死んだかは不明。風魔法で切る事は可能だか再生する。土魔法の槍で刺したら分裂した。水魔法は魔物が膨らんだ。

「お兄様達はよく実験する余裕がありましたわね・・・」
「燃え広がらない様にしたらわかっただけだ」

攻撃自体は鞭のようなものだけ。防御魔法で飛ばしたり切ったり出来る。当たっても大きなダメージは無いが、体に巻きつこうとしてくるので防いだ方がいい。

移動は芋虫のごとく這っている様だが無音。移動速度不明。半透明で個体としての識別が困難でわからない。木をどうやって音も無く切り倒すかも不明。森から出てこない事を考えると、涼しい場所か薄暗い場所を好む可能性がある。

「森から出さないためか倒木が多かったな」
「そこそこ知能はあるのかしら?」
「そうかもな。集団で動くから厄介だし、森の中の方が見つけにくい」

本当にこれといって討伐方法がわからないわ。

「最初に土魔法で潰したやつ死んだと思うか?」
「どうかしら?槍で刺した時と同じく最悪分裂ですわね」
「弱点は火だけか・・・焼き続けたら死ぬかな」
「私の熱風だと溶け広がっていた様な・・・冷めたら元に戻るのかしら?」
「あの溶けたの多分触ったら溶けるぞ」
「触りましたの?」
「いや、ベストに飛んでここが溶けた」

穴の空いた所を見せられる。

え?溶けたのが降り注いでいたらドレスが穴だらけでしたの?最悪ですわ!

「あの半透明芋虫にはもう会いたくありませんわ・・・」
「まあな。おっ!馬車が来たぞ」

馬車2台と荷馬車ですわね。荷馬車から騎士や魔術師が降りてくる。1人の騎士がこちらにやって来る。

「失礼、アルトワ伯爵令嬢ですか?」
「ええ。こちらはエノー伯爵子息とその護衛。彼は私の従僕よ」
「ご無事で何よりです。お疲れの所申し訳ありませんが魔物について皆さんからお話を聞かせて下さい」
「話なら俺がする。待っている間に話し合って見解はまとまった。俺達だけで大丈夫だからリリは帰してやってくれ」
「わかりました。アルトワ伯爵令嬢はこちらの馬車へ」
「サミュエルお兄様ありがとうございます」
「気にするな。ちゃんと医師に見てもらえよ」
「お兄様達もですわ」
「わかってる。ゆっくり休め」

リュドに抱きかかえられたまま馬車に乗り込み出発する。街道を外れているからか、負担にならないようゆっくり走ってくれている様だがかなり揺れる。



*****



馬車が走り出すとほっとする。

「リュド、もう下ろしてくれても大丈夫よ?」

リュドの腕をポンポンと叩くとギュッと抱き締められる。

「危険な目に遭わせてしまい申し訳ありません。やはりアンドリュー様達と行かせるべきでした」
「残ったのは私の意思よ。それにリュドは森の中を私を抱えて走ってくれたわ。自分で走っていたら今ここに居ないもの」
「しかし・・・」

リュドに辛そうな顔をされると私まで辛くなってくるわ・・・。体の力を抜きリュドにもたれ掛かる。

「守ってくれてありがとう」
「はい・・・」

少し苦しいくらいのリュドの腕の力がとても安心する。誰も失わなくて良かった・・・。

「リュドも無事で良かった・・・傷だらけのリュドを見た時、心臓が止まりそうだったわ・・・。私がもっと上手く魔法を使えていたら・・・」

安心したからか涙が溢れて止まらない・・・。

「あの状況で十分出来ていましたよ」
「でも、もっと何か出来たはずなのに・・・」
「大丈夫ですから」

優しく髪を撫でてくれるのが心地よいのに全然涙が止まらないわ・・・。そういえば、馬車の中で抱きかかえられるのは2回目ね。

「そういえば、ティナの婚約パーティの帰りも抱き抱えていてくれたのよね?」
「お嬢様が下りてくれませんでしたので」
「私、酔うとどんな感じになるのかしら?」
「・・・・・・・・・」

ピタリとリュドの手が止まった。あら?何故黙るのかしら?

「酔って我儘を言って眠ってしまったのは聞いたわ」
「そうですね・・・・・・」
「面倒くさい酔っ払いだった?」
「いえ・・・・・・」

涙が止まったのは良いけど・・・何かしたのかしら?

「リュド、教えて?」

顔を上げてリュドを見つめた。

何故私の顔を手で隠すの?こういう時は自分の顔を隠すものじゃない?しばらくして。

「酔って甘えていましたよ。少し幼くなるのも大変可愛らしかったですね。ただ・・・あの様な扇情的なドレスであの様な顔でされて困りました。私も男だと忘れないで下さいね」

耳元でリュドの少し掠れた声で囁かれ、家に着くまで顔が上げられなかったわ・・・。



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