Rabbit bride 2085 第4話 迫撃のブルバード

5 玉藻前

お前が身に付けている薄いボディアーマーでは、オレの穿龍脚を食い止めることはできないだろう？

オレの体重を全部爪先に乗せてやるよ。

肝臓を背骨に叩き付けられて、お前は動くこともできなくなるだろう。

そうしたら、お前を抱え上げて拐って行く。

お前の命が尽きるまで、オレはお前を愛してやるよ。

苦しそうなお前の顔が、オレの性欲を溢れさせるんだ。

ブライドはもう、オレのモノだ。

勝利を確信したオレの視界に、突然何かが映った。

動体視力の高いオレが、その動きを捉えられていないのは何故だ？

オレの意識が危険信号を鳴らしている。

オレはそいつに視線を移し.....
目の前？

視覚で認識するよりも早く、オレの身体は全力で回避行動を選んだ。

尖ったモノが、オレの眼球に触れていた。

あの瞬間に回避できていなければ、オレの目は......

いや、回避できていない。

追ってくる。

凄まじい速度でオレを追ってくる。

真っ直ぐ後ろに最速で下がるしかない。

左右に避ける暇がないほど、そいつの攻撃は素早かった。

全力で後退するオレは、そこに壁があることすら考えられなかった。

オレは練習場の壁に背中から激突していた。

アレは動きを止めた。

ここまで届かないのか？

いや、甘い期待はしない方がいい。

何者だ？

「もう少しで目玉を抉り出せたのに、避けるのだけはうまいものだ」

たまもだった。

ブライドの後ろに立ち、オレに攻撃を仕掛けてきたのは、内閣調査室の事務をしているたまもだった。

事務員？

いや、事務員だったらスカートの中から尻尾を伸ばして攻撃しないだろう。

「たまも？
お前、何者だ？」

たまもは3本の鋼の強度を持つ尾をゆらゆらさせながら答えた。

「玉藻前よ❣️」

たまもはさらに尾の数を増やした。
ゆらめく9本の尾が、攻防に秀でたモノであることは明らかだった。

「私は人間じゃないから現場に出られなくて、いつも事務作業と趣味の武器開発をしていたの。

あなたは、九尾の狐って知ってる❓　
2022年の3月に、那須の殺生石が割れたでしょう❣️

あの時から復活していたの。

この練習場なら思い切り暴れられるから、運動不足解消にあなたを誘ってみたの❣️」

オレはこいつに遊ばれていたのか？

さすがにあの尾が9本もあると...

背後の風が動いた。

意識を後方に向ける間も無く、突然現れたクロウの蹴りが入った。

重い蹴りに身体がくの字に曲がる。

どこから来た？
アイアン・クロウの奴....

態勢が崩れたオレを狙ったブライドの3連射を、咄嗟に左腕で受け止めるしか無かった。

くそっ💢
不意を突かれた。

もう左腕は使えない。

腕に突き立ったkyu-biが骨を砕いている。

たまもの尾の攻撃は容赦ない。
壁も床も穴だらけにしていく。
あの攻撃を捌くことは考えられない。

たまもの尾に隠れてクロウが接近戦を仕掛けてくると同時に、ブライドの銃弾が襲い掛かる。

これでは勝てない。

オレはポケットに入っていたコインをクロウに投げつけた。

コインはクロウに届く直前で、C4爆弾に入れ替わった。

オレはコインを使った空間移動が使える。

コインと別の何かを入れ替えることができるのだ。

「3秒だ」

クロウもたまももブライドも、その意味を理解したようだ。

2秒。

爆弾を掴んだクロウが一気に間合いを詰めて来た。

オレと自爆する覚悟があるのか？

9本の尾でブライドを守るたまも。

1秒。

クロウの手を振り払った。

C4爆弾の威力を抑えるために、クロウは爆弾を腹に抱えた。

これでクロウは終わったな。

オレはもう一つのコインを使って、別の場所へ空間移動した。

クロウの目の前に、コインが一枚落ちていた。

0秒。

オレは数百メートル離れた場所に立っていた。

さすがに核シェルター並みの強度を誇る練習場だ。

周囲に爆発音すら漏れていない。

しかし、オレの身体は満身創痍だった。

「アイアン・クロウだけでも処分できてよかった。

まさかアイツがあれほど強いとは思わなかった」

また、迎えに来るよ.....ブライド。

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登場人物紹介

⭐️玉藻前(たまものまえ)

コードネーム：なし
一人称：私
所属：内閣調査室　事務員　研究員
性別：女
身長：164cm
年齢：1000歳以上
サイボーグ比率：0%
特徴：美女、九尾の狐。2022年3月に殺生石が割れた時に復活。
特記事項：普段は美しい女性の姿。9本の尾をスカートから出して攻撃する。
銃器や弾丸、刀などの開発に従事している。
本来はミッドガルド乱の登場人物。
特技：破壊
性格：武器オタク