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第7話 浮生若夢-5
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私は、本当に馬鹿だ。全てが中途半端。昔から何も変わっていない。考えもなしに突っ走って、空回りして。
純平と別れてから、私は気がつくとこの場所に足を運んでいた。人生最大の過ちを犯してしまった、この田んぼ道。周りには街灯もなく、真っ暗な闇が広がっている。
「…………はぁ」
ため息を溢さずにはいられない。それくらい私は、私自身に呆れていた。面と向かって向き合うことに耐えきれず、逃げ出してしまった臆病者に。
純平からの告白、素直に嬉しかった。私なんかには勿体ないと思った。でも、私はそれに応えることはできない。もしあの時、私が純平に告白した時に言ってくれていたら……。
ううん、純平は悪くない。悪いのは私だ。私がこんなんだから、上手くいかないんだ。
地元に旅行なんて、止めておけばよかった。あのまま大人しくしていれば、純平も私のことなんか忘れていたかもしれないのに。わざわざ顔を見にお店まで行ってしまうなんて。
リサーチのために旅行雑誌を見ていた時、あのお店が載っていた。そこに純平が写っていたのを見てしまったのが運の尽き。
会いたい。その思いに抗うことができなかった。
顔を見れれば満足。それ以上は関わらないようにしようと思っていた。でも、純平に『覚えてる?』って言われたとき、嬉しいと感じてしまった。それはつまり、私のことを覚えていてくれたということだから。
関わってはいけないと、中途半端なことをしてはいけないと分かっていたのに。今日もまた純平と会ってしまった。
……楽しかったなあ。久しぶりに、楽しいって思った。
もし今日、純平があんなことを聞いてこなかったら、あのまま楽しく話していたのかな。
思えば、私の人生は過ちばかりだった。
あの時こうしていれば、こうしていなければ。そんな思いが渦巻いている。
生まれてきたことが間違いだったのかと思うくらい。こんなことを考えるなんて、育ててくれた両親に悪いよね。それは分かってる。だけど、だけど……。
「…………」
ふと、夜空を見上げる。夜の空は、なんで昼より高く見えるんだろう。星ひとつない悲しそうな空を見て、そんなことを思った。
私はその時、自分が泣いていることに気がついた。だけど、それを拭う気にはなれなかった。
……もし、純平が私を見つけてくれたら。その時は、もう一度向き合ってみようかな。ダメかな、そんな独りよがりな考え。ううん、そんなことないよね。
でも、純平がこの場所に来なかったら……。そうなったら、それはそれでいいのかもしれない。その方が、純平は幸せだよね。うん。そうだよね。
「あ、綺麗……」
何もなかった空に、満天の星が見えた。それは、今までで一番綺麗な景色だ。純平とこの空を見たい。
純平に、会いたいよ。
私はひとり、そんな身勝手なことを願った。どうかこの願いが、神様に届きますように。そんな思いを込めて、私は夜空に向かって手を伸ばした。
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私は、本当に馬鹿だ。全てが中途半端。昔から何も変わっていない。考えもなしに突っ走って、空回りして。
純平と別れてから、私は気がつくとこの場所に足を運んでいた。人生最大の過ちを犯してしまった、この田んぼ道。周りには街灯もなく、真っ暗な闇が広がっている。
「…………はぁ」
ため息を溢さずにはいられない。それくらい私は、私自身に呆れていた。面と向かって向き合うことに耐えきれず、逃げ出してしまった臆病者に。
純平からの告白、素直に嬉しかった。私なんかには勿体ないと思った。でも、私はそれに応えることはできない。もしあの時、私が純平に告白した時に言ってくれていたら……。
ううん、純平は悪くない。悪いのは私だ。私がこんなんだから、上手くいかないんだ。
地元に旅行なんて、止めておけばよかった。あのまま大人しくしていれば、純平も私のことなんか忘れていたかもしれないのに。わざわざ顔を見にお店まで行ってしまうなんて。
リサーチのために旅行雑誌を見ていた時、あのお店が載っていた。そこに純平が写っていたのを見てしまったのが運の尽き。
会いたい。その思いに抗うことができなかった。
顔を見れれば満足。それ以上は関わらないようにしようと思っていた。でも、純平に『覚えてる?』って言われたとき、嬉しいと感じてしまった。それはつまり、私のことを覚えていてくれたということだから。
関わってはいけないと、中途半端なことをしてはいけないと分かっていたのに。今日もまた純平と会ってしまった。
……楽しかったなあ。久しぶりに、楽しいって思った。
もし今日、純平があんなことを聞いてこなかったら、あのまま楽しく話していたのかな。
思えば、私の人生は過ちばかりだった。
あの時こうしていれば、こうしていなければ。そんな思いが渦巻いている。
生まれてきたことが間違いだったのかと思うくらい。こんなことを考えるなんて、育ててくれた両親に悪いよね。それは分かってる。だけど、だけど……。
「…………」
ふと、夜空を見上げる。夜の空は、なんで昼より高く見えるんだろう。星ひとつない悲しそうな空を見て、そんなことを思った。
私はその時、自分が泣いていることに気がついた。だけど、それを拭う気にはなれなかった。
……もし、純平が私を見つけてくれたら。その時は、もう一度向き合ってみようかな。ダメかな、そんな独りよがりな考え。ううん、そんなことないよね。
でも、純平がこの場所に来なかったら……。そうなったら、それはそれでいいのかもしれない。その方が、純平は幸せだよね。うん。そうだよね。
「あ、綺麗……」
何もなかった空に、満天の星が見えた。それは、今までで一番綺麗な景色だ。純平とこの空を見たい。
純平に、会いたいよ。
私はひとり、そんな身勝手なことを願った。どうかこの願いが、神様に届きますように。そんな思いを込めて、私は夜空に向かって手を伸ばした。
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